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婚約者と夜会に出れますがやっぱり死んだ目をしています

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ファインハルス侯爵家の馬車が私を迎えに来ました。ケヴィン様は正装して物凄いかっこ良くなっていました!黒髪を纏めている髪紐は私の瞳の色の緑でした。さりげない気遣い!!
ですがやっぱり死んだ目でした。

「エル…迎えに来ました。ヘルトル公爵様…では夜会へ行ってまいります」
とお父様にきっちり挨拶はした。演技ですけどねー?馬車に乗り込むと途端に口調は変わった。

「うっへーホラーツ様顔ちょっと怖くない?緊張する。いや、うちの父様のが怖いか」
私は早速お腹の薬を出した。

「どうぞ、ケヴィン様…お腹大変になる前に」
ケヴィン様は薬を見ると

「あ…ありがとう…エルはいい子だね。今日さ、エルの好きな人見つかるといいね」

「でも毎回私みたいなのに声掛ける人いないのですよ?モテないの判るでしょう?あ、ドレスありがとうございますわ」

「とても似合っているわ。やはり私の見立て通り」
そんなことを言われると照れる。一応婚約者様は女友達感覚で言っているのだしね。

「でも…会場が近づくたびに鬱になるわ…。もうすぐ人いっぱいいるとこに行くし。はあ、これいつ帰れるわけ?」

「とりあえず私の友人達に挨拶とか、後は婚約者として紹介して挨拶周りやそれからダンスですわね…ダンスできます?」

「まぁ一応ね…引き籠っていたけど家庭教師はいたのよ。全員いやらしい目で私狙ってたけどほんとダンスの勉強嫌だった!わざと変なボディタッチされるし、ラウラも踊りたいとか言い出すからこっちは必死で逃げたわ」
あらあの美少女義妹とケヴィン様がダンスとかお似合いすぎ。想像すると。今日の私より。

会場に着くとザワザワと皆さんが注目している。それはそうでしょう。ついに私の婚約者様が現れたのですから!!ケヴィン様のイケメンにご令嬢達やらマダム達も釘付けでございますわ。
一応エスコートして貰っている私ですが全員ケヴィン様に視線集中ですわね。

「エル様!!ついに婚約者様とお越しになられたのね!?良かったですわね?あ、私はベアトリクス・クラインと申します。クラインが伯爵令嬢ですの!エル様とは仲良くさせていただいてますの!」
と友達のベアトリクスが頰を林檎のように染めてケヴィン様を見る。相変わらずケヴィン様は死んだ目つきだ。

「どうも…エルがいつもお世話になっております。夜会に出席出来なくてすみません。いつもタイミング悪く調子が悪くなりまして」
と友達に普通に挨拶する。それからも女性にたくさん声をかけられたり、貴族に挨拶して回ったりした。途中からあまり話さなくなったのを察した私は手を強めに握ると強めに握り返された!

トイレの合図であった!コソコソと会場を脱出し廊下に出るとケヴィン様は

「あーっ、もうヤバイほんとっ!きっつ!あの空間きっつ!!」

「もうすぐダンスの時間ですからその前に行けて良かったですわ…」

「でも踊ってる最中も出そうになったらどうしよう…ほんと緊張するとすぐねお腹痛くなるし。まぁ薬飲んだからだいぶマシだけどね」

「とにかく周りを気にせず私だけを見ていればいいんですわ!なんなら変な顔しますし」

「ああ、そしたらエルが恥をかくから変顔はやめといた方がいいわ。まぁエルしか見ないけどね」
と言うから勘違いしそうになる。
緊張を解す為に私を見るのである。

「エルいい男いた?さっき色々回ったけど」

「はぁ、別にいませんでした」
横にはいい男がいるんで、他の男が霞むとか言えませんけど。

「ちっ…やっぱり男ってやつはあれねー?女の顔と胸しか見てないわよね。ほんと最低」
と死んだ目で舌打ちしながら言う。
それは何か判りますわ。私胸も無いですから。

「エルだって可愛くしてきてるのにドレスのことしか褒めない人多かったわよね。失礼すぎる」
と言うのでまた勘違いしそうになりますわ。

「はぁ、まあ仕方ありませんわ。ドレスは可愛いですから」

「そんなことないわよ…自信がないだけだから!あ…トイレ行ってくる!!」
とダダーっと行ってしまい私はポツンと待っていると

「おや、どこのご令嬢かな?こんな所で寂しそうに。相手がいないのか?なんなら空き部屋でいいことしようか?」
といきなりにやけた男性が私の肩を馴れ馴れしく抱き寄せる!

「誰ですの?私は婚約者様を待っていますの!!」

「こんなとこで?どこにいんの?嘘つかなくていいって!会場に飽きてんだろ?行こうぜほら!」
と痛いくらいに引っ張られてどこかに連れて行こうとする!
やだ!やだ!やだ!怖い!!

「ねぇちょっと人の婚約者どこ連れてく気?」
トイレから戻ってきたケヴィン様が男に声を掛けてそして…

「何だよ?いい所なのに邪魔すんなよ?あんたがこいつの婚約者なわけねぇだろ?」
と私の顔を見て鼻で笑った。明らかに不釣り合いと言われているようですわ。事実ですがね。

ケヴィン様はため息をつくと
男が私を掴んでいる手を力で振り解かせるとスルッと男の襟を掴んでブワリと流れるように投げ飛ばした!!男は背中を打ち付けた。

え?何が起こったの??

「う…うぐっ!!痛え…」

「そりゃ痛いだろうね、投げたんだから。まだやる?」
とケヴィン様は構えた!
やだ!不覚にもカッコいいではありませんか!!やるではないですか!!
目は死んでいますが。

「ちっ!そんな地味な女もくれないのかよ!この女ったらしが!!」
と捨て台詞を吐いて男は逃げていった。

「何あれだっさ!!エル大丈夫?」

「はぁ、まあ…お陰様で無事です。強いですねケヴィン様…」

「まぁ…前世でちょっと柔道やってたし…痴漢対策にね…」
ジュウドウ…ふーん。

「痴漢撃退に護身術覚えた方がいいわよエル。ああいうの女なら見境なしに来るから」

「そうですわね…今度勉強してみますわ」
と会場に戻ると音楽が始まりダンスの時間だ。
ケヴィン様は形式に乗っ取り私とダンスを踊る。皆が私達を見ていた。主にケヴィン様の優雅なダンスを。

流石にケヴィン様は私しか見ていないこの状況。照れる!!真っ直ぐ見つめられるけど目は死んでるけど、その目に私が写っていて…。
急に恥ずかしくなる。

ケヴィン様は女友達とダンスをしているだけだ。恋愛感情などありません。

「…緊張してるよエル。私より。皆見てるからね、ああ、こういう時婚約者は笑った方がいいね」
と言うとケヴィン様は微笑まれた。
だが目は笑っていない死んでいる!
口元が綺麗に笑ってる。悪魔的だわ。

「きゃあああ素敵!!」
という令嬢達の声が聞こえた。

「あはは…早く曲終わらないかな」
ケヴィン様は相変わらず死んだ目でダンスを踊っていた。手はガシリと大きく私を掴む。
くっついたり離れたりくるくる回りようやく曲が終わる。
令嬢達は次は私とという目で順番待ちをしているようだがケヴィン様は死んだ目つきで令嬢達の視線を嫌そうに見ると私の手を引き会場を後にした。

主催者の使用人に

「気分が悪くなったのでこれで帰ります」
と早々に私と馬車に乗り込んだ。

随分早いお帰りだ。
馬車に乗ると一気にダラリと寛ぎ

「ああ、やっぱり夜会つまんない。出たくないいい」
とボヤいた。

「そうだ、エル…もし好きな男がいなかったら誰か私達の子供として養子を迎えましょう。そうしたらエルも子供産むなんて痛いことしなくてすむわよ?まぁ好きな男ができたら別なんだけどね?」
と言う。

「はあ、確かにその方がいいかもしれませんね。子供産む痛みって女の人にしか解りませんと言いますしね」

「ね?鼻から西瓜出すってよく言われてるけどね」

「スイカ?」
よく解らないけど養子を取ることになるのかしら?後継は必要ですものね…。私はため息を吐きそうになった。何故って?

私どうやらケヴィン様が気になるようですので。
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