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婚約者は先手必勝されました

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「エル…そろそろ起きて。別荘に着くわよ?」

「んあっ?」
夕方になり優しく揺り起こされる私。
すると口元をハンカチで拭かれた。

「全く大口開けて!ご令嬢がヨダレ垂らしてどうすんの!」

「きゃっ!し、失礼しましたっ!!」
と赤くなる。失態ですわ。

「キャンキャン」
と尻尾振って喜ぶレックスも笑ってるようですわ。

ようやく湖近くの林の中の別荘に辿り着いた。
馬車を降りると従者達は荷物を運び、扉を開けると使用人達が並んで頭を下げている。

「ようこそ、ケヴィン様、ご婚約者様。ご滞在中は何でもお申し付けください。私はここの責任者のディーター・モーダーソンです」
と責任者の方が言われる。

「ありがとう。モーダーソン。滞在中はゆっくりさせてもらう」

「キャンキャン」
とレックスも吠えた。

「おやおや、可愛い子犬様ですね」
モーダーソンさんが犬を見て微笑む。

「レックスと言う。とても賢く懐こい犬だ」

「ほおお!よしよし!私も犬好きですよ!子供の頃飼っており、死んだ時なんか1週間寝込みました。そう、こんな白犬で…」
と泣き出したのでケヴィン様は目が死んで

「いや、勝手に重ねるな」
と突っ込んでいた。

「今日はケヴィン様とエルメントルート様は寝室はご一緒でしょうか?ならば人払いをさせますが」
と言われて

「「え!?」」
とハモった。しまったわ。
そういう目で見られているんだわ!!
そりゃそうですわね!お父様達にもこの間のことは知られていますし、私達一応ラブラブな設定でした!

「あ…あ…ああ、どうする?エル?長旅で疲れたろう?今日は1人で眠るかい?」

「は、はい!そうですわね!!ケヴィン様。まだ来たばかりですしゆっくりしたいですわ、ほほほ」
と相槌を打つ。

「てことで、今日はゆっくり休むから食事が済んだらお風呂だけ用意してくれ」
とケヴィン様が言う。

「判りました。ではお荷物はこちらがお運びします。お部屋まで案内しましょう」
とゲスト用のお部屋に通された。

「はあ…」
とベッドに寛ぐ。盗賊やらから守ってくださったケヴィン様はカッコ良かった…。と1日を振り返る。意外と強いのは驚くけど。そう言えば旅に出ようとしてたんだからこっそり練習していたのかもしれない。きっとそうだわ。と思うと納得した。

そこでコンコンとノックされてケヴィン様の従者のアーベル様が顔を出した。何かしら?この方結構顔がいい。女ったらしそうだけど。
ケヴィン様は最近雇ったイケメンで観賞用で側に置いてると言っていた。そりゃイケメンですものね。ケヴィン様の方が私はカッコいいと思いますけど。女子はイケメンに弱いのです。

「エルメントルート様…御寛ぎ中失礼致します」

「何か御用かしら?」

「実は…ケヴィン様のことで少しご相談がありまして…寝る前で良いのですが少し私の相談を聞いて欲しいのです…よろしいでしょうか?ケヴィン様や他の方にはご内密で」
と言われて一体何なのか?
まさか!従者との禁断の恋!?の相談とか??

確かに絵になりますわ!

「相談だけでしたら…」
と深夜会う約束をしておく。


夕食はシェフが腕を震いとても美味しく頂きました。ケヴィン様は死んだ目で食べていましたけど、レックスも吠えないしきちんと食べた。

「明日は湖を散策してみようかエル。レックスも連れて。この辺りは空気が良い。昔何度か来たことはあるんだよ」
と言う。使用人がいるからケヴィン様はきちんと男性言葉を使い分ける。

「確かボートもあるよ……まぁ昔私は落っこちてびしょ濡れになった記憶があるけどね」
と死んだ目をする。
それなら何故ボートに誘うのよ。

食事を済ませて

「じゃあゆっくり睡眠とってね」
と微笑まれドキリとしますが内緒です。

「はい、お休みなさい」
私は部屋に入り軽く湯浴みをして…また普通の服を着て夜中まで待った。

別荘が寝静まった頃私はゆっくり動いて、部屋の扉を開いた。音を立てないように蝋燭を持ちそろりと廊下を進むと後ろからいきなり何者かの手で口を塞がれて驚く!!

もがもがっ!!

すると足をペロリと舐められてビクッとする。
ゆっくり振り向くとなんとそこに死んだ目!!
ぎゃあああ!

と叫ぶこともできず、ズルズルと引きづられて行く。

そしてバタンと私の部屋に入った。

「ケヴィン様!?」
私の口を塞いだ手が離れて死んだ目の婚約者様がレックスと一緒にいました。

「何処に行こうとしていたの?エル?真夜中よ?」

「わ、私はええと?散歩?」
死んだ目がジッと見る。
そしてため息をつき、

「何言われたか知らないけどアーベルのとこよね?」

「なっ!何故それを!!?」

「ああ、やはりね。想像つくわよ。あんた行ったら危なかったわよ?襲われてたかもね」

「はあ?相談があるから来てくれって…ケヴィン様のことで内密にと…もしやアーベル様がケヴィン様に禁断の想いをと…」

「ばっかじゃないの?そんなわけないでしょうが!こんな夜更けに女を自分の部屋に呼ぶなんて!騙されてんじゃないわよ!アーベルはね、ラウラのスパイね!アーベルはラウラの言うことならなんでも聞くそれこそ犬よ?最近雇った奴を私が信用するわけないでしょ?罠ね」

「ええーっ…何で私なんか…」

「決まってんでしょ。ラウラはアーベルを使い、エルと浮気させて私とエルの婚約を破棄する気で自分が私の妻の座になり、さらにアーベルを愛人として囲い、エルはその辺に捨てられるというとこでしょう」

「その辺って…」

「私の媚薬が上手くいかなかったから今度はエルを狙ったわけよ」

「まぁ…確かにそれでは私アーベル様に犯されていたのですね…良かった行かなくて」

「あんた危機感がないわね?ほんとに女性?」

「モテたことがないので…」
と言うと死んだ目になる。

「アーベルにいやらしいことされた方がいいなら今からでも行ってもいいのよ?」

「行きませんよ…例え顔が良くともいきなりそんなことする節操なしなんてそれに…私一応これ持ってましたから」
と私はスカートを上げたのでケヴィン様が照れて顔を逸らした。

「なっ、何してんのあんた!!」
と慌てて目を瞑る。
私は机にコトリとナイフを置いた。

「あら…何それナイフ?」

「まぁ一応護身用に」
というとますます死んだ目を濁らせた。

「ばっかじゃないの?女がそんなの振り回してもアーベルに敵うわけないでしょ?」

「ええ?一応振り回せばなんとか…」

「なんないわよっ!!」
と盛大に突っ込まれた。

「全く…エルみたいなお嬢様なんて男は簡単にねじ伏せられるわよ…スタンガンがこの世界にあるならまだいいけど…」

「スタンガン?」

「身体痺れさす武器みたいなやつ」

「まぁ…」

「…………そうね、面白いからちょっと私アーベルのところに行って代わりにぶっ飛ばして来ようかしら?エルも来る?後で見てるだけでいいわよ」

「まぁ楽しそうな…でも顔を殴るのは勿体ないような…」

「確かに…イケメンだもんね…んじゃボディにしとくわね」
とニヤリと死んだ目が笑う。

そして2人で廊下を歩き私を後方の見えない位置に追いやりケヴィン様はノックをするとガチャと扉が開いて中からアーベル様が出てケヴィン様を見て固まる。

「はぁいアーベルくん」
と声をかけつつ、固まってる一瞬でケヴィン様の足がアーベル様の足にかかりアーベル様はブワリと簡単に横に倒されすぐ様上にケヴィン様が乗りあげアーベル様の襟を持ちケヴィン様は両腕を交差して締め上げた!

その間数秒の出来事だ。

「並十字絞!」
となんか死んだ目で叫んだ。ジュウドウかしら??

「グギッ…ウグッ…」
アーベル様は首が締まり苦しそうに土色になってく。ようやくケヴィン様は襟を離すと
ゴホゴホ苦しそうに息をする。

「さて…まだやるかな?アーベル?」

「な…何のこ…」
するとケヴィン様はいつもの死んだ目を少し険しくして

バシンと顔をぶっ叩いた!
さっきボディにするとか言ってたのにー!!

「ラウラに担がれたんだろう?アーベル…君達のことはお見通しだよ?しかし私の婚約者にまで手を出そうとするなんてね」

「ケヴィン様……僕は…ラウラ様の為ならどんなことでも…」

「はあ?ラウラの為なら好きでもない女に手を出しても構わないと?何だそれは?不誠実だね?君は女遊びで慣れてその顔に自信があるようだけど顔面変形するくらい殴ったらもう自信もなくなるだろうか?」
と死んだ目で言われたアーベル様は

「ひっ!お、お許しを!!ケヴィン様!!」
と平謝りした。
ケヴィン様はグイっとアーベル様の顎を持ち

「ラウラが好きなら私が協力しよう…ラウラの子供が欲しいんだろう?私は応援しよう」
と死んだ目で笑う。

「えっ!?あ、あの…でも僕身分が…」

「好きなら身分関係なく愛してそれでもダメなら…ラウラを連れて逃げるといい!そうしよう!」

「でっでも!ラウラ様はケヴィン様のことを!!」
と顔を歪めるアーベル様だったが一層死んだ目を歪めてケヴィン様は小瓶を取り出した。

「これあげるよアーベル。強力な媚薬だよ。マンドラゴラが入ってる」
それはっ!まさか!!あのっ!?
と私はこっそり見ていて青ざめる。ケヴィン様は悪魔のように囁いた。

「これをラウラの紅茶に混ぜるんだ。大丈夫。例え媚薬でもラウラを手に入れてしまえばもう君のものだよ…メッロメッロにしてやれよ?男だろ?」
とポンポン背中を慰めている。

「ケヴィン様はラウラ様を好きではないんですか?ラウラ様はケヴィン様がエルメントルート様は悪女で騙されていると仰って…」
何かしらそれ?あることないこと…。

「やだな?それは勘違いだからね?私は本心からエルを愛してるからね…」
と聞いていてドキリとする。演技のくせに!

「そ、そうなのですか!?何故あのような普通で地味な方を…ケヴィン様のような方が…」

「アーベル…もう一度絞められたいかな?」
と死んだ目で言うので

「ひっ!!もももも申し訳ありません!!ありがたくそれを使わせていただきます!!」
とアーベル様を完全に手中に収めてケヴィン様は勝利した。

後で聞いたら

「私…やられたら倍返しするタイプ」
と死んだ目でほくそ笑んだ。
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