元アイドルは現役アイドルに愛される

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2. 抜け殻

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「辞めます」という言葉一つで全てを投げ出した後も、ネットの海には僕を刺し殺そうとする言葉が漂い続けていた。
グループが解散したというニュースが流れてからは、その牙はさらに鋭さを増した。
『奏多が逃げたせいでグループが壊れた』
『結局、自分だけ助かれば良かったんだな』
『あいつさえ戻ってこなければ、今も4人で続いていたのに』
スマホを開くたびに、心臓を直接掴まれるような衝撃が走る。通知を切っても、暗い画面に映る自分の顔を見るだけで、見えない誰かの嘲笑が聞こえてくるようだった。 
次第に僕は、外に出ることも、食事を喉に通すこともできなくなっていった。
鏡の中に立つ男は、かつて「エース」と呼ばれ、スポットライトを浴びていた頃の面影など微塵もなかった。頬はこけ、鎖骨が浮き上がり、肌は死人のように青白くに沈んでいる。 
「……僕のせいだ」
その思いが、毒のように全身に回っていく。
自分が動けなくなったせいで、自分が復帰しようとしたせいで、自分が中途半端に夢を諦めきれなかったせいで。
かつて僕を「最年少のエース」として可愛がってくれた兄さんたちの居場所を、僕が奪ってしまった。 
颯真さんの「俺はもう奏多とは一緒に活動できない」という言葉が、呪文のように頭の中で反復される。
大好きだったお兄さんにさえ拒絶された自分に、生きている価値なんてあるんだろうか。 
時折、喉の奥からせり上がってくる空腹感すら、今の僕には贅沢で罪深いものに感じられた。
僕がこうして呼吸をしている間も、メンバーの誰かはどこかで絶望しているかもしれない。そう思うと、水を飲むことさえ自分への許しのように思えて怖かった。
服のサイズは二回りも小さくなり、手首は折れそうなほど細くなった。
それでも、誹謗中傷という名の刃は止まることなく僕を削り続けていく。
マスクとメガネで顔を隠さなければ外を歩けない今の僕は、もはや「奏多」という人間ではなく、ただの抜け殻だった。 
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