元アイドルは現役アイドルに愛される

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3. 償い

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あれから数年、テレビの中では海里さんが笑っていた。グループが解散してすぐはネット上で大きく荒れ、メディアへの復帰は難しいと思われていたが、今の彼は、誰もが知る「実力派俳優」だ。数年前、僕がグループを去った後、解散という絶望の淵から彼は自力で這い上がった。
ほかのメンバーもそうだ。バラエティ番組で見せる彼らの軽妙な語り口は、今や茶の間の顔として定着し人気タレントとなった。
彼らはもう、僕がいなくても、僕が壊した「5人の居場所」がなくても、立派に自分の足で立っている。
しかし颯真さんだけは芸能界に姿を現さなくなった。それだけが気がかりだったが、自分にできることなんてないと分かっていた。
「……よかった。本当によかった」
乾いた唇から漏れた声は、自分でも驚くほど掠れていた。
けれど、彼らの成功を喜べば喜ぶほど、僕の心には冷たい鉛のような罪悪感が沈殿していく。彼らが今浴びている称賛の光が強ければ強いほど、その陰に隠された「解散」という痛みが、すべて僕という存在に集約されていく気がする。
僕さえ、あの時もっと強ければ。
僕さえ、あの日メンバーを信じて、誹謗中傷から目を逸らしていれば。
今頃、この画面に映る彼らの隣には、僕も、そしてあと二人の仲間も並んでいたはずだった。
ガタガタと震える手で、ミネラルウォーターのボトルを掴む。
鏡に映る自分の姿は、あまりにも無惨だった。
かつて「エース」と呼ばれ、最年少ながらにグループを牽引していた面影はどこにもない。数年の月日は、僕の頬を削り、鎖骨を浮き立たせ、手首を折れそうなほど細く変えてしまった。 
毎日、スマホを開くのが怖かった。
数年経った今でも、検索窓に自分の名前を入れれば、過去の亡霊たちが僕を刺し殺しにやってくる。
『奏多さえいなければ、あのグループは今頃……』
そんな言葉を見るたびに、胃の奥が焼けつくように痛む。
食事を摂ろうとしても、一口運ぶごとに「自分だけが栄養を摂って生き延びる資格があるのか」という問いが頭を離れず、結局は喉が拒絶反応を起こして吐き出してしまうのだ。
「……あ」
打ち合わせで書き上げた楽譜に、一滴、涙が落ちて滲んだ。
アイドルたちのキラキラした瞳に耐えられず、マスクとメガネで顔を隠し、呼吸を殺して生きている。 『奏多』という名前は捨て、今はKという名前で活動している。
彼らは俳優として、タレントとして新しい夢を叶えた。
けれど僕は、あの日、照明器具の下敷きになった瞬間に止まった時間の中から、今も抜け出せずにいる。 
この痩せ細った体も、消えない罪悪感も、僕が背負い続けなければならない罰なのだ。
彼らが美しく輝けば輝くほど、僕はより深い闇へと沈んでいく。
それが、仲間たちの夢を壊し、独りよがりに逃げ出した僕にできる、唯一の償いのような気がしていた。
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