元アイドルは現役アイドルに愛される

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11.選べない

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結局、海里たちの「奏多を一人にしないため」という大義名分に押し切られる形で、期間限定ユニットの結成が決まった。事務所を跨いでのユニット結成というのは前代未聞のことだったがなんとかそこはクリアしたのだが…。
問題はその先にあった。

「奏多の歌声は、繊細で透明感があるんだ。ここはあえてバックを抑えて、奏多のソロから始めるべきだ」

レコーディングスタジオの調整室で、颯真が真剣な表情で譜面を指差す。対するリオも、一歩も引かずに食い下がった。

「それじゃ守りに入りすぎです! 奏多さんの復帰一発目ですよ? 華やかに、僕と奏多さんのダブルセンターでガツンと始めるのが今のトレンドです」

「トレンドなんて関係ない。俺は奏多の『声』そのものを届けたいんだ」

「それ、ただ颯真さんが奏多さんを独り占めしたいだけじゃないですか?」

二人の視線がバチバチと火花を散らす。レコーディングのディレクションを任されているはずのスタッフたちは、元グループメンバーの颯真と、現役アイドルのリオの気圧され、遠巻きに見守るしかない。

肝心の奏多は、防音ガラスの向こう側でヘッドホンを首にかけ、板挟みになっていた。

「……あの、二人とも。僕はパートが少なくても全然いいんだけど……」

マイク越しに控えめに声をかけるが、二人の耳には届かない。

「センターは奏多だよ。これは譲れない。そしてその隣で支えるのは、経験のある俺が適任だと思う」
「支えるんじゃなくて、一緒に走るんです! 奏多さんの隣は、若さと勢いがある僕の方がバランスがいいに決まってます!」
「……もう、勝手にしてよ」

奏多は深い溜息をつき、防音室の椅子に沈み込んだ。
かつて照明器具の下敷きになり、誰にも必要とされていないと絶望していた自分が嘘のようだ。

「奏多! 今のどっちがいいと思う!?」

不意に二人が同時にガラス越しにこちらを指差した。

「えっ、僕!?」
「俺の、奏多の声を最大限に生かすバラード案か」
「僕の、最高にキラキラしたダンスナンバー案か」

期待に満ちた四つの瞳が奏多を射抜く。
かつてエースと呼ばれた頃とは違う意味で、奏多の心臓は激しく波打っていた。

「……どっちも、選べないよ」

消え入りそうな声で答えた奏多だったが、この奇妙なユニットが、止まっていた彼の運命を猛烈な勢いで加速させていることだけは確かだった。
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