【R18】子宮の奴隷

葉山 乃愛

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第10話 暗渠

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ダクトの中は、血と錆の臭いが充満していた。
俺は狭い通気口を、小鳩の白衣を体に巻きつけて這い進んだ。膝が擦りむけ、爪が割れる。だが、痛みは感じない。脳裏に焼き付いているのは、あの鮮烈な赤と、小鳩の冷たい骸(むくろ)だけだ。

『ユダ』

握りしめたUSBメモリが、熱を持った鉛のように重い。
ユダ。裏切り者。小鳩は誰に裏切られた? いや、もしかすると彼女自身が組織を裏切ろうとしていたのか? だから消された。そして俺は、その罪を被るためのスケープゴート。
だが、腑に落ちないことがある。あの完璧主義者の小鳩が、なぜあんな簡単に殺された? 彼女ほどの用心深さがあれば、刺客の侵入くらい気づけたはずだ。除非(もしかすると)、彼女は「招き入れた」相手に殺されたのか。

ズドン、という重い音が背後で響く。追手がダクトの入り口を爆破したらしい。
俺は焦燥に駆られ、足元の格子を蹴破った。

ドサッ。
落下した先は、腐敗臭の漂う広大な地下空間だった。
無数のパイプが張り巡らされ、汚水が流れる音が反響している。施設の最下層、廃棄物処理エリアだ。

「……あら。今日は大きなゴミが落ちてくる日だったかしら」

闇の奥から、ハスキーな女の声がした。
俺は反射的に身構え、ポケットのナイフ(小鳩の部屋から持ち出したものだ)を構えた。
カツ、カツと、作業靴の音が近づいてくる。
現れたのは、ツナギを着崩し、口元に煙草をくわえた女だった。ボサボサの黒髪に、気だるげな三白眼。手には大型のモンキーレンチをぶら下げている。

「誰だ」

「質問するのはこっちの台詞よ、侵入者(ネズミ)さん。……いや、その顔。手配書にあった『408番』ね」

女は俺の顔を見ても動じることなく、紫煙を吐き出した。

「通報するならしてみろ。その前に喉を掻き切る」

「怖い怖い。……でも、あんたバカね。ここは既に封鎖されてる。上の連中は、あんたを生け捕りにする気なんてないわ。ここで『事故死』として処理して、焼却炉行きよ」

女はレンチを肩に担ぎ、俺の股間あたりに視線を落とした。

「もったいない話よねぇ。噂じゃ、あんたの種、一発で高級外車が買えるんでしょ?」

「……何が言いたい」

「取引しない?」

女はニヤリと笑い、一歩近づいてきた。
作業着の胸元が大きく開いており、オイルの汚れにまみれた谷間が覗く。小鳩のような清潔なエロさとは違う、ドブ川のような頽廃的な色気がそこにはあった。

「アタシの名前はミサ。ここの清掃員(スイーパー)。……ここから外へ抜ける『裏ルート』を知ってるのは、アタシとネズミくらいなもんよ」

「……対価は?」

「とぼけないでよ。あんたが持ってる『それ』よ」

ミサは俺の股間に、レンチの先端を押し当てた。冷たい金属の感触に、思わず体が強張る。

「アタシね、借金があるの。あんたを突き出すより、あんたの種を個人的に売った方が儲かるってわけ。……それに、ちょっと興味があってね」

彼女はレンチを捨てると、汚れた軍手を外した。ザラついた手が、俺のズボンの上からまさぐり始める。

「小鳩主任を狂わせた麻薬みたいな精子……。本当かどうか、アタシが確かめてあげる」

「ここでかよ……追手が来てるんだぞ」

「ここなら音は漏れないし、カメラもない。……それに、あんた今、興奮してるでしょ? 死の恐怖と、逃走のストレス。それが一番のスパイスなんでしょ?」

ミサは俺の反応を楽しむように、ズボンのファスナーを下ろした。
逃亡の緊張感の中で、俺のモノは痛いほどに勃ち上がっていた。小鳩との行為で植え付けられた「射精への渇望」が、この薄汚い場所で再点火する。

「うわ、凄い……。こんな場所でビンビンじゃない」

ミサが俺のモノを取り出し、無精髭の生えた頬を擦り寄せた。
生温かい舌が、先端の鈴口を這う。

「っ……!」

「へえ……匂いからして違うわね。濃厚で、脳にくる匂い。……いただきまーす」

彼女は躊躇なく、俺のモノを口に含んだ。
小鳩の繊細な舌使いとは違う、下品で貪欲なバキューム。喉の奥まで突き入れられ、強く吸い上げられる感覚に、俺の膝が震える。

「んむ、んっ、じゅるっ……!」

汚水処理場の轟音に混じって、水音と卑猥な吸引音が響く。
ミサは俺の太ももを掴み、自身の股間に押し付けながら、一心不乱に頭を前後させた。彼女自身もまた、俺のフェロモンに当てられたように呼吸を荒くし、作業着の上から自身の秘部をまさぐっているのが見えた。

「はっ、んぐ……! だ、出しなさいよ……! アタシの口の中に、その高いやつを!」

彼女の命令と共に、俺の中で暴発寸前のエネルギーが臨界点を超えた。
小鳩を殺された怒り、組織への憎悪、そして目の前の女への暴力的な情欲。全てが混ざり合い、俺は彼女の喉奥に白濁した弾丸を撃ち放った。

「ごふっ、んんーーッ!!」

ミサは白目を剥きながらも、一滴も逃すまいと喉を鳴らして飲み込んだ。
ビクン、ビクンと痙攣する俺のモノから、最後の一滴まで搾り取ると、彼女は口の端から白い液体を垂らしながら、恍惚の表情で笑った。

「はぁ……はぁ……。これ、マジでヤバい……。頭、痺れる……」

彼女はふらつきながら立ち上がると、俺の胸にポケットから取り出した何かを押し付けた。
古ぼけたカードキーだ。

「……約束通り、裏口のキーよ。第三区画の配管を通れば、街の下水道に出られる」

「あんたはどうする」

「アタシはもう少しここに残って、余韻を楽しむわ。……それに、この精子の味、『上』には報告しないでおいてあげる。これはアタシだけのシノギにするから」

ミサは壁にもたれかかり、自身の股間に手を這わせながら、俺に退室を促した。

俺は身支度を整え、配管の闇へと消えた。
だが、俺は気づいていた。
ミサが俺のモノを咥えている時、彼女の首筋に、小鳩と同じ――いや、もっと古い「バーコードの刺青」があったことを。
彼女はただの清掃員じゃない。この施設の「廃棄」された元・検体か、あるいは……。

謎は深まるばかりだ。だが今は、この下水道を抜けて、地上へ出るしかない。
握りしめたUSBメモリの中で、小鳩が残した『ユダ』の真実が、静かに目覚めの時を待っていた。
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