【R18】子宮の奴隷

葉山 乃愛

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第16話 競売

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「馬子にも衣装、とはこのことね」

マリアは鏡の前に立つ俺を見て、冷ややかな称賛を口にした。
仕立ての良い漆黒のタキシード。首元には蝶ネクタイ。髪は整えられ、昨日の薄汚れた逃亡者の面影はどこにもない。
だが、その洗練された外見とは裏腹に、俺の体からは抑制しきれない「雄」の匂いが立ち昇っていた。

「……息苦しいぜ。俺にはジャージの方がお似合いだ」

「我慢なさい。今夜は貴方の『お披露目会』なの。……商品が安っぽく見えては困るわ」

マリアは俺の胸ポケットに、真紅のチーフを挿した。
彼女もまた、背中が大きく開いたイブニングドレスを纏い、氷の彫刻のような美しさを放っている。

「行くわよ。……会場の『マダム』たちが、貴方の到着を首を長くして待っているわ」

俺たちが向かったのは、都内某所にある会員制クラブの地下ホールだった。
シャンデリアが煌めき、クラシック音楽が流れる会場には、テレビで見かける政治家や大企業の社長、そしてその妻たちが談笑している。
表向きはチャリティーオークション。だが、ここで取引されるのが「慈善」などではないことは、会場に漂う腐った欲望の臭いで分かった。

「……見て。あそこにいるのが、今夜のメインターゲットよ」

マリアが目線で示した先に、一人の女性がいた。
年齢は30代半ば。透き通るような肌に、傲慢さを隠そうともしない強い瞳。周囲の男たちを顎で使っている。

「姫川玲子。……元トップ女優で、現在はIT長者の未亡人。この社交界の『裏の女王』とも呼ばれているわ」

「へえ。……高そうな女だ」

「彼女が貴方を気に入れば、この界隈での貴方の評価額は跳ね上がる。……落とせる?」

「愚問だな。……俺は今、確変中だぜ?」

俺はシャンパングラスを片手に、姫川玲子の方へと歩き出した。
彼女の取り巻きたちが、俺を不審そうに見る。だが、俺が近づくにつれて、彼らの表情が変わった。
鼻をひくつかせ、困惑し、そして陶酔する。
俺のフェロモンが、彼らの本能を直接殴りつけているのだ。

「……あら? 見かけない顔ね」

姫川が俺に気づき、グラスを揺らしながら振り返った。
その目は、値踏みするように俺の全身を舐め回している。

「初めまして、美しい女王様。……今夜のメインディッシュを務めさせていただきます、俊弘です」

「メインディッシュ? ……ふふ、面白い冗談ね。貴方のような野良犬が、私のテーブルに乗れると思って?」

彼女は嘲笑った。だが、その声は微かに震えていた。
距離はあと1メートル。俺の匂いは、既に彼女の鼻腔を侵略しているはずだ。

「野良犬だからこそ、噛みつく味は格別ですよ」

俺はあえて礼儀作法を無視し、彼女の腰に手を回した。
周囲が息を呑む。女王への不敬。
だが、姫川は俺を突き飛ばさなかった。いや、できなかったのだ。

「っ……! な、何この匂い……」

「感じますか? ……貴方のその高いプライドの奥にある、雌としての本能が」

俺は彼女の耳元で囁き、首筋に鼻先を擦り寄せた。
高級な香水の香りの下から、彼女自身の甘く熟れた匂いが滲み出している。

「あ……んっ……」

姫川のグラスが手から滑り落ち、カーペットの上に音もなく転がった。
彼女の膝が震え、俺の胸に崩れ落ちる。
冷徹な女王の仮面が剥がれ落ち、そこには快楽に飢えた一人の女の顔があった。

「部屋を用意させましょうか? ……それとも、ここで皆に見せつけながら『味見』しますか?」

「……連れて行って。……早く、私を……」

彼女は俺のジャケットを強く握りしめ、懇願した。
俺は遠くで見ていたマリアにウインクを投げ、姫川を抱きかかえるようにして会場の奥へと消えた。

その直後、オークションの開始を告げるベルが鳴り響いた。

『さあ、皆様お待たせいたしました! 本日の目玉商品、奇跡の遺伝子を持つ「種馬」の独占交配権……スタート価格は1億円からです!』

司会者の高らかな声が聞こえる。
別室のベッドに姫川を押し倒しながら、俺はほくそ笑んだ。
1億? 安いな。
この女を堕とせば、俺の価値はそんな端金じゃ収まらなくなる。

「さあ、女王様。……俺という毒を、骨の髄まで味わいな」

俺は彼女のドレスを引き裂き、その白い肢体に俺の証を刻み込み始めた。
この夜、俺は「商品」から、この社交界を支配する「捕食者」へと成り上がったのだ。
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