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第17話 掌握
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VIPルームの重厚な扉が閉ざされた空間には、濃厚な情事の余韻と、甘ったるい香りが充満していた。
「……はぁ、はぁ……。凄い……貴方、本当に人間なの?」
裏社交界の女王、姫川玲子は、乱れたドレスを胸元で押さえながら、俺の腕の中で虚ろな瞳を潤ませていた。
あの傲慢だった眼差しは完全に溶け落ち、今は飼い主に媚びる愛玩動物のような色を浮かべている。
「人間だよ。……ただし、ちょっとばかり改造された特注品だがな」
俺はサイドテーブルの煙草に火をつけ、紫煙を吐き出した。
全身の細胞が歓喜している。彼女のような「上級国民」を屈服させるたびに、俺の中の力が底上げされていく感覚だ。
パチンコで言えば、連チャン中にさらに高設定の演出が出たような全能感。
「……玲子。アンタ、俺が欲しいか?」
「欲しい……! お金ならいくらでも出すわ。私の資産、人脈……全部使っていい。だから、私を捨てないで」
彼女は俺の胸に縋り付いた。
俺のフェロモンは、単なる催淫剤じゃない。相手の脳髄に「依存」を植え付ける猛毒だ。一度味わえば、彼女のようなプライドの高い女ほど、その落差で深く堕ちていく。
その時、控えめなノックと共にマリアが入室してきた。
彼女は俺たちの痴態を見ても眉一つ動かさず、手元のタブレットを読み上げた。
「お楽しみのところ失礼。……オークションの結果が出たわ」
「いくらついた?」
「3億円。……そして、落札者はここにいる姫川玲子様よ」
マリアが冷ややかに告げると、玲子は恍惚とした表情で頷いた。
「ええ、そうよ。……誰にも渡さない。貴方は私のものよ」
俺は思わず笑い声を上げた。
自分自身で自分を競り落とさせる。これ以上の滑稽な喜劇はない。
だが、これで俺は強力なスポンサーを手に入れたことになる。
「聞いたか、マリア。俺はもう『商品』じゃねえ。……この女の『飼い主』だ」
俺は玲子の顎を強引に持ち上げ、その唇を親指でなぞった。
「さて、玲子。3億の代金とは別に、もう一つ払ってもらいたいものがある」
「何でも言って……。貴方の望みなら……」
「情報だ。……『評議会』の爺さんたちが、血眼になって探している『オリジナルのデータ』。……その保管場所を知ってるな?」
玲子の体がビクリと震えた。
彼女はIT長者の未亡人。亡き夫は、この組織のシステム構築に関わっていたはずだ。小鳩のUSBに残されていた断片的なログが、そう告げていた。
「そ、それは……知ってしまったら、貴方も消されるわ」
「俺はもう消されかけてるんだよ。……言え。言わなきゃ、もう二度と俺の種はやらない」
俺が冷たく突き放そうとすると、彼女は半狂乱になって俺の腰にしがみついた。
「嫌ッ! 言うわ、全部言う! ……だから行かないで!」
彼女は震える声で、ある場所の名前を口にした。
「……『箱舟(アーク)』。……東京湾の地下深くに建設された、巨大なデータサーバー。そこに、組織の全ての機密と……『不老不死』研究のオリジナルデータが眠っているわ」
「東京湾の地下だと……?」
「夫が生前、隠していたバックドアがあるの。……私なら、そこを開けられる」
ビンゴだ。
俺はマリアと視線を交わした。彼女の瞳にも、獲物を狙う狩人の光が宿っている。
「決まりね、俊弘さん。……次のステージは、その『箱舟』よ」
「ああ。……組織の心臓部を乗っ取ってやる」
俺は玲子の髪を優しく撫で、褒美代わりのキスを落とした。
「いい子だ、玲子。……これからも俺のために、金と情報を垂れ流し続けろよ」
「はい……ご主人様……」
かつてのトップ女優は、涙を流して歓喜した。
金、権力、そして情報。
底辺パチンカスだった俺の手の中に、今、この国を揺るがすカードが次々と集まってきている。
俺はタキシードの襟を正し、立ち上がった。
夜はまだ長い。
確変のファンファーレは、止まるどころか、さらに激しく鳴り響いている。
「……はぁ、はぁ……。凄い……貴方、本当に人間なの?」
裏社交界の女王、姫川玲子は、乱れたドレスを胸元で押さえながら、俺の腕の中で虚ろな瞳を潤ませていた。
あの傲慢だった眼差しは完全に溶け落ち、今は飼い主に媚びる愛玩動物のような色を浮かべている。
「人間だよ。……ただし、ちょっとばかり改造された特注品だがな」
俺はサイドテーブルの煙草に火をつけ、紫煙を吐き出した。
全身の細胞が歓喜している。彼女のような「上級国民」を屈服させるたびに、俺の中の力が底上げされていく感覚だ。
パチンコで言えば、連チャン中にさらに高設定の演出が出たような全能感。
「……玲子。アンタ、俺が欲しいか?」
「欲しい……! お金ならいくらでも出すわ。私の資産、人脈……全部使っていい。だから、私を捨てないで」
彼女は俺の胸に縋り付いた。
俺のフェロモンは、単なる催淫剤じゃない。相手の脳髄に「依存」を植え付ける猛毒だ。一度味わえば、彼女のようなプライドの高い女ほど、その落差で深く堕ちていく。
その時、控えめなノックと共にマリアが入室してきた。
彼女は俺たちの痴態を見ても眉一つ動かさず、手元のタブレットを読み上げた。
「お楽しみのところ失礼。……オークションの結果が出たわ」
「いくらついた?」
「3億円。……そして、落札者はここにいる姫川玲子様よ」
マリアが冷ややかに告げると、玲子は恍惚とした表情で頷いた。
「ええ、そうよ。……誰にも渡さない。貴方は私のものよ」
俺は思わず笑い声を上げた。
自分自身で自分を競り落とさせる。これ以上の滑稽な喜劇はない。
だが、これで俺は強力なスポンサーを手に入れたことになる。
「聞いたか、マリア。俺はもう『商品』じゃねえ。……この女の『飼い主』だ」
俺は玲子の顎を強引に持ち上げ、その唇を親指でなぞった。
「さて、玲子。3億の代金とは別に、もう一つ払ってもらいたいものがある」
「何でも言って……。貴方の望みなら……」
「情報だ。……『評議会』の爺さんたちが、血眼になって探している『オリジナルのデータ』。……その保管場所を知ってるな?」
玲子の体がビクリと震えた。
彼女はIT長者の未亡人。亡き夫は、この組織のシステム構築に関わっていたはずだ。小鳩のUSBに残されていた断片的なログが、そう告げていた。
「そ、それは……知ってしまったら、貴方も消されるわ」
「俺はもう消されかけてるんだよ。……言え。言わなきゃ、もう二度と俺の種はやらない」
俺が冷たく突き放そうとすると、彼女は半狂乱になって俺の腰にしがみついた。
「嫌ッ! 言うわ、全部言う! ……だから行かないで!」
彼女は震える声で、ある場所の名前を口にした。
「……『箱舟(アーク)』。……東京湾の地下深くに建設された、巨大なデータサーバー。そこに、組織の全ての機密と……『不老不死』研究のオリジナルデータが眠っているわ」
「東京湾の地下だと……?」
「夫が生前、隠していたバックドアがあるの。……私なら、そこを開けられる」
ビンゴだ。
俺はマリアと視線を交わした。彼女の瞳にも、獲物を狙う狩人の光が宿っている。
「決まりね、俊弘さん。……次のステージは、その『箱舟』よ」
「ああ。……組織の心臓部を乗っ取ってやる」
俺は玲子の髪を優しく撫で、褒美代わりのキスを落とした。
「いい子だ、玲子。……これからも俺のために、金と情報を垂れ流し続けろよ」
「はい……ご主人様……」
かつてのトップ女優は、涙を流して歓喜した。
金、権力、そして情報。
底辺パチンカスだった俺の手の中に、今、この国を揺るがすカードが次々と集まってきている。
俺はタキシードの襟を正し、立ち上がった。
夜はまだ長い。
確変のファンファーレは、止まるどころか、さらに激しく鳴り響いている。
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