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第33話 侵食
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「シャアアアアッ!!」
腐肉と粘液にまみれた『失敗作』の群れが、酸の飛沫を撒き散らしながら殺到する。
シオンが展開した光の障壁に、溶解液が触れるたびにジュワジュワと嫌な音が響き、白煙が上がる。
「父上、数が減りません! この施設の地下全てが『保管庫』だったようです。数万……いや、数十万体はいます!」
シオンが指を振るい、念動力で数十体をまとめて壁に叩きつけるが、彼女らは痛みを感じないのか、骨が折れたまま這いずり寄ってくる。
「……気持ちの悪い連中だ。客へのサービス精神がなってねえな」
俺はイヴを抱えたまま、襲いかかる失敗作の頭部を蹴り飛ばした。
グチャリ。
手応えはある。だが、飛び散った体液が俺の頬を掠め、チリリと焼けるような痛みが走った。
イヴの再生能力を持つ俺でさえ、治癒が追いつかないほどの猛毒。
「俊弘……やめて……殺さないで……」
腕の中でイヴが震えている。
目の前の怪物が、自分と同じ顔の成れの果てだと理解し、心が折れかけているのだ。
「イヴ、目を開けろ」
俺はイヴの顎を強く掴み、無理やり前を向かせた。
「こいつらは『お前』じゃない。……ただの肉塊だ。
だがな、腐っても『女』の器をしてやがる」
俺はニヤリと笑うと、シオンに向かって叫んだ。
「シオン! 障壁を解け!」
「父上!? 正気ですか!? 酸を浴びたら……」
「いいからやれ! ……俺の『毒』と、こいつらの『酸』。どっちが濃いか勝負だ!」
シオンが渋々障壁を解除した瞬間、怪物の波が俺たちを飲み込もうと雪崩れ込んだ。
俺は逃げない。
一番近くにいた個体の、ドロドロに溶けた首根っこを素手で鷲掴みにした。
「……あ、ガ……ァ……?」
怪物が動きを止める。
俺の手から、皮膚を通して、爆発的な量の「フェロモン」と「支配のエネルギー」を直接流し込んだのだ。
「食えよ。……腹一杯になるまでな」
ドクンッ!!
怪物の体が大きく痙攣し、濁った瞳が見開かれる。
俺のエネルギーは、彼女の腐った細胞を強制的に活性化させ、書き換えていく。
脳みそなんていらない。子宮――あるいはその代わりとなる器官に、直接命令を叩き込む。
『ひ、あ……ぁあ……ご主人、さま……』
怪物の口から、ノイズ混じりの言葉が漏れた。
殺意が消え、絶対的な服従の色が浮かぶ。
「感染(うつ)せ。……俺の支配を、お前ら全員で共有しろ!」
俺はその個体を敵の群れの中に放り投げた。
すると、どうだ。
俺の因子を受けた個体が、隣の個体に噛みつき、そのまた隣の個体へと、まるでウイルスパンデミックのように「服従」が伝染していく。
「ガァ……あ……マ、王……さま……」
「従ウ……ワタシタチ……従ウ……」
数秒前まで俺たちを食い殺そうとしていた何万という怪物の群れが、次々とその場に膝をつき、平伏していく。
酸の海が、忠誠の海へと変わった。
「……信じられない。父上の因子は、腐敗したDNAさえも修復・支配するというのですか」
シオンが呆れたように、しかし誇らしげに呟く。
イヴもまた、その光景を見て震えを止めた。
醜悪な怪物たちが、俺の前ではただの愛玩動物のように媚びている。その事実は、彼女の恐怖を「優越感」へと変えるのに十分だった。
「……そうね。彼女たちは失敗作。でも、貴方の手にかかれば、使い道のある『駒』になる」
イヴの瞳に光が戻る。
「シオン、ハッキング完了したか?」
「ええ。この騒ぎの間に、メインサーバーから『創造主』の本拠地の座標を抜きました。
……奴らの母星は、木星の裏側に隠された人工惑星『ティル・ナ・ノーグ』です」
「決まりだな」
ズゴゴゴゴ……ッ!!
遺跡の自爆カウントダウンが進み、天井が崩れ始めた。
「道を開けろ! 雑魚ども!」
俺が号令をかけると、平伏していた怪物の群れが、自らの体を盾にして崩落する瓦礫を受け止め、一本の道を作り出した。
俺たちはその肉の絨毯を踏みしめ、悠々と出口へと向かう。
背後で爆炎が上がり、月面の遺跡が消滅していく。
だが、俺の手には確かな「当たり」のチケット――敵本拠地の座標があった。
上陸艇に戻り、『アーク・ロイヤル』へと帰還した俺は、すぐに全艦へ通達を出した。
「聞いたな、野郎ども! 次は木星だ!
喧嘩を売ってきたエイリアンに、地球流の『お礼参り』を教えてやる!」
エンジンが唸りを上げ、巨大戦艦が加速する。
目指すは太陽系最大の惑星。
そこには、神を気取る傲慢な創造主たちが待っている。
「震えて待ってろよ、店長さん。……閉店セールにしてやるからな」
俺の闘志は、宇宙空間の冷たさすら焼き尽くすほどに燃え上がっていた。
腐肉と粘液にまみれた『失敗作』の群れが、酸の飛沫を撒き散らしながら殺到する。
シオンが展開した光の障壁に、溶解液が触れるたびにジュワジュワと嫌な音が響き、白煙が上がる。
「父上、数が減りません! この施設の地下全てが『保管庫』だったようです。数万……いや、数十万体はいます!」
シオンが指を振るい、念動力で数十体をまとめて壁に叩きつけるが、彼女らは痛みを感じないのか、骨が折れたまま這いずり寄ってくる。
「……気持ちの悪い連中だ。客へのサービス精神がなってねえな」
俺はイヴを抱えたまま、襲いかかる失敗作の頭部を蹴り飛ばした。
グチャリ。
手応えはある。だが、飛び散った体液が俺の頬を掠め、チリリと焼けるような痛みが走った。
イヴの再生能力を持つ俺でさえ、治癒が追いつかないほどの猛毒。
「俊弘……やめて……殺さないで……」
腕の中でイヴが震えている。
目の前の怪物が、自分と同じ顔の成れの果てだと理解し、心が折れかけているのだ。
「イヴ、目を開けろ」
俺はイヴの顎を強く掴み、無理やり前を向かせた。
「こいつらは『お前』じゃない。……ただの肉塊だ。
だがな、腐っても『女』の器をしてやがる」
俺はニヤリと笑うと、シオンに向かって叫んだ。
「シオン! 障壁を解け!」
「父上!? 正気ですか!? 酸を浴びたら……」
「いいからやれ! ……俺の『毒』と、こいつらの『酸』。どっちが濃いか勝負だ!」
シオンが渋々障壁を解除した瞬間、怪物の波が俺たちを飲み込もうと雪崩れ込んだ。
俺は逃げない。
一番近くにいた個体の、ドロドロに溶けた首根っこを素手で鷲掴みにした。
「……あ、ガ……ァ……?」
怪物が動きを止める。
俺の手から、皮膚を通して、爆発的な量の「フェロモン」と「支配のエネルギー」を直接流し込んだのだ。
「食えよ。……腹一杯になるまでな」
ドクンッ!!
怪物の体が大きく痙攣し、濁った瞳が見開かれる。
俺のエネルギーは、彼女の腐った細胞を強制的に活性化させ、書き換えていく。
脳みそなんていらない。子宮――あるいはその代わりとなる器官に、直接命令を叩き込む。
『ひ、あ……ぁあ……ご主人、さま……』
怪物の口から、ノイズ混じりの言葉が漏れた。
殺意が消え、絶対的な服従の色が浮かぶ。
「感染(うつ)せ。……俺の支配を、お前ら全員で共有しろ!」
俺はその個体を敵の群れの中に放り投げた。
すると、どうだ。
俺の因子を受けた個体が、隣の個体に噛みつき、そのまた隣の個体へと、まるでウイルスパンデミックのように「服従」が伝染していく。
「ガァ……あ……マ、王……さま……」
「従ウ……ワタシタチ……従ウ……」
数秒前まで俺たちを食い殺そうとしていた何万という怪物の群れが、次々とその場に膝をつき、平伏していく。
酸の海が、忠誠の海へと変わった。
「……信じられない。父上の因子は、腐敗したDNAさえも修復・支配するというのですか」
シオンが呆れたように、しかし誇らしげに呟く。
イヴもまた、その光景を見て震えを止めた。
醜悪な怪物たちが、俺の前ではただの愛玩動物のように媚びている。その事実は、彼女の恐怖を「優越感」へと変えるのに十分だった。
「……そうね。彼女たちは失敗作。でも、貴方の手にかかれば、使い道のある『駒』になる」
イヴの瞳に光が戻る。
「シオン、ハッキング完了したか?」
「ええ。この騒ぎの間に、メインサーバーから『創造主』の本拠地の座標を抜きました。
……奴らの母星は、木星の裏側に隠された人工惑星『ティル・ナ・ノーグ』です」
「決まりだな」
ズゴゴゴゴ……ッ!!
遺跡の自爆カウントダウンが進み、天井が崩れ始めた。
「道を開けろ! 雑魚ども!」
俺が号令をかけると、平伏していた怪物の群れが、自らの体を盾にして崩落する瓦礫を受け止め、一本の道を作り出した。
俺たちはその肉の絨毯を踏みしめ、悠々と出口へと向かう。
背後で爆炎が上がり、月面の遺跡が消滅していく。
だが、俺の手には確かな「当たり」のチケット――敵本拠地の座標があった。
上陸艇に戻り、『アーク・ロイヤル』へと帰還した俺は、すぐに全艦へ通達を出した。
「聞いたな、野郎ども! 次は木星だ!
喧嘩を売ってきたエイリアンに、地球流の『お礼参り』を教えてやる!」
エンジンが唸りを上げ、巨大戦艦が加速する。
目指すは太陽系最大の惑星。
そこには、神を気取る傲慢な創造主たちが待っている。
「震えて待ってろよ、店長さん。……閉店セールにしてやるからな」
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