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第34話 神域
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木星。
太陽系最大のガス惑星が、圧倒的な質量と重力で『アーク・ロイヤル』の行く手を阻むように渦巻いている。
その「大赤斑」と呼ばれる嵐の目。地球がまるごと数個入るほどの巨大な渦の中心に、それはあった。
「……見えませんね。光学センサー、反応なし」
ブリッジでマリアが首を傾げる。
だが、司令席に座るシオンは、指揮棒のように指を振った。
「目に見えるものが全てではありませんよ。……位相空間迷彩、解除(クリア)」
シオンが空間の座標を書き換える。
すると、木星の嵐が不自然に歪み、その中心から、真珠のような光沢を放つ巨大な人工天体が姿を現した。
直径、数千キロ。
月ほどの大きさがある完全球体の要塞。
表面は幾何学模様の装甲板に覆われ、無数の光が都市の灯りのように瞬いている。
「これが……人工惑星『ティル・ナ・ノーグ』。創造主たちの本拠地か」
俺は息を呑んだ。
地球の文明レベルを遥かに超えている。
まさに「神の国」だ。
『……警告。未確認艦艇に告ぐ』
突如、艦内に脳を揺さぶるようなテレパシー通信が割り込んできた。
モニターが強制的に切り替わり、純白のローブを纏った人型のエイリアンたちが映し出される。
顔立ちは美しいが、肌は透き通るように青白く、背中には触手のような器官が後光のように揺らめいている。
『ここは高貴なる「管理種族」の聖域である。
下等な猿どもが土足で踏み入ってよい場所ではない。……直ちに立ち去れ』
「猿で悪かったな。……俺たちは、お前らが捨てた『ゴミ』を拾いに来た回収業者だよ」
俺がマイクに向かって啖呵を切ると、中央にいるリーダー格のエイリアンが、不快そうに眉をひそめた。
『……E-001(イヴ)。そこにいるのか?』
エイリアンの視線が、俺の隣に立つイヴに向けられた。
『不出来な失敗作が、猿と交尾し、あまつさえ我々に牙を剥くとは……。
嘆かわしい。やはり、あの時に処分しておくべきだった』
エイリアンが何かのスイッチに手をかけた。
『強制帰還コード、送信。……戻れ、人形。お前の主人は我々だ』
キィィィィィン!!
「あッ……!? ぐ、ぁあ……ッ!!」
イヴが悲鳴を上げ、その場に膝をついた。
彼女の全身が青白く発光し、痙攣を始める。
遺伝子レベルに組み込まれた「絶対服従」のプログラムが起動したのだ。
「イヴ!」
「マ、ママ……!?」
シオンが駆け寄るが、イヴの瞳から光が消え、虚ろな機械のような色に変わり始めていた。
『……システム掌握。個体E-001、自律行動を停止。
猿を殺せ』
創造主の命令と共に、イヴがゆらりと立ち上がった。
その手には、莫大なエネルギーが収束し、俺に向けて構えられる。
「……ふざけやがって」
俺は動じなかった。
イヴの銃口が俺の眉間を捉える。
だが、俺はゆっくりと彼女に歩み寄り、その冷たい頬に手を添えた。
「おい、イヴ。……誰の許可を得て浮気してんだ?」
俺は彼女の唇を強引に奪った。
濃厚なキス。
創造主の電子信号など比にならない、俺の熱く、汚く、強烈な「本能のデータ」を流し込む。
上書き保存だ。一万年前の古いプログラムなんて、俺の最新のウイルス(愛)で塗り潰してやる。
「ん……んんッ……!?」
イヴの体がビクンと跳ねた。
青白い光が、毒々しい赤色に浸食されていく。
「思い出せ。……お前の子宮は、誰のものだ?」
「あ……ぁ……ッ! わ、私は……っ!
私は……俊弘の……『雌』ッ!!」
ドォォォォォン!!
イヴの全身から紅蓮のオーラが噴き出し、創造主のコントロールを粉砕した。
彼女は俺にしなだれかかり、荒い息を吐きながら、モニターの創造主たちを睨みつけた。
「……よくも、私の夫に銃を向けさせたわね。
絶対に許さない。……全員、ミンチにしてやるわッ!」
画面の向こうで、創造主たちが驚愕に目を見開いているのが分かった。
『馬鹿な……! マスターコードが拒絶されただと!?
あの猿は、一体何をした!?』
「教育だよ」
俺はニヤリと笑い、シオンに合図を送った。
「シオン、主砲充填!
あの偉そうな『神の国』に、風穴を開けてやれ!」
「御意。……『ラグナロク・キャノン』、発射!」
戦艦『アーク・ロイヤル』の艦首が展開し、恒星の輝きにも似た極太のビームが放たれた。
光の奔流は木星の闇を切り裂き、人工惑星のバリアへと突き刺さる。
ズガガガガガガッ!!
「戦争だ、エイリアンども!
どっちが宇宙の支配者に相応しいか、とことん殺り合おうじゃねえか!」
神域の扉がこじ開けられた。
人類史上初、そして最後の、星間戦争の火蓋が切って落とされた。
太陽系最大のガス惑星が、圧倒的な質量と重力で『アーク・ロイヤル』の行く手を阻むように渦巻いている。
その「大赤斑」と呼ばれる嵐の目。地球がまるごと数個入るほどの巨大な渦の中心に、それはあった。
「……見えませんね。光学センサー、反応なし」
ブリッジでマリアが首を傾げる。
だが、司令席に座るシオンは、指揮棒のように指を振った。
「目に見えるものが全てではありませんよ。……位相空間迷彩、解除(クリア)」
シオンが空間の座標を書き換える。
すると、木星の嵐が不自然に歪み、その中心から、真珠のような光沢を放つ巨大な人工天体が姿を現した。
直径、数千キロ。
月ほどの大きさがある完全球体の要塞。
表面は幾何学模様の装甲板に覆われ、無数の光が都市の灯りのように瞬いている。
「これが……人工惑星『ティル・ナ・ノーグ』。創造主たちの本拠地か」
俺は息を呑んだ。
地球の文明レベルを遥かに超えている。
まさに「神の国」だ。
『……警告。未確認艦艇に告ぐ』
突如、艦内に脳を揺さぶるようなテレパシー通信が割り込んできた。
モニターが強制的に切り替わり、純白のローブを纏った人型のエイリアンたちが映し出される。
顔立ちは美しいが、肌は透き通るように青白く、背中には触手のような器官が後光のように揺らめいている。
『ここは高貴なる「管理種族」の聖域である。
下等な猿どもが土足で踏み入ってよい場所ではない。……直ちに立ち去れ』
「猿で悪かったな。……俺たちは、お前らが捨てた『ゴミ』を拾いに来た回収業者だよ」
俺がマイクに向かって啖呵を切ると、中央にいるリーダー格のエイリアンが、不快そうに眉をひそめた。
『……E-001(イヴ)。そこにいるのか?』
エイリアンの視線が、俺の隣に立つイヴに向けられた。
『不出来な失敗作が、猿と交尾し、あまつさえ我々に牙を剥くとは……。
嘆かわしい。やはり、あの時に処分しておくべきだった』
エイリアンが何かのスイッチに手をかけた。
『強制帰還コード、送信。……戻れ、人形。お前の主人は我々だ』
キィィィィィン!!
「あッ……!? ぐ、ぁあ……ッ!!」
イヴが悲鳴を上げ、その場に膝をついた。
彼女の全身が青白く発光し、痙攣を始める。
遺伝子レベルに組み込まれた「絶対服従」のプログラムが起動したのだ。
「イヴ!」
「マ、ママ……!?」
シオンが駆け寄るが、イヴの瞳から光が消え、虚ろな機械のような色に変わり始めていた。
『……システム掌握。個体E-001、自律行動を停止。
猿を殺せ』
創造主の命令と共に、イヴがゆらりと立ち上がった。
その手には、莫大なエネルギーが収束し、俺に向けて構えられる。
「……ふざけやがって」
俺は動じなかった。
イヴの銃口が俺の眉間を捉える。
だが、俺はゆっくりと彼女に歩み寄り、その冷たい頬に手を添えた。
「おい、イヴ。……誰の許可を得て浮気してんだ?」
俺は彼女の唇を強引に奪った。
濃厚なキス。
創造主の電子信号など比にならない、俺の熱く、汚く、強烈な「本能のデータ」を流し込む。
上書き保存だ。一万年前の古いプログラムなんて、俺の最新のウイルス(愛)で塗り潰してやる。
「ん……んんッ……!?」
イヴの体がビクンと跳ねた。
青白い光が、毒々しい赤色に浸食されていく。
「思い出せ。……お前の子宮は、誰のものだ?」
「あ……ぁ……ッ! わ、私は……っ!
私は……俊弘の……『雌』ッ!!」
ドォォォォォン!!
イヴの全身から紅蓮のオーラが噴き出し、創造主のコントロールを粉砕した。
彼女は俺にしなだれかかり、荒い息を吐きながら、モニターの創造主たちを睨みつけた。
「……よくも、私の夫に銃を向けさせたわね。
絶対に許さない。……全員、ミンチにしてやるわッ!」
画面の向こうで、創造主たちが驚愕に目を見開いているのが分かった。
『馬鹿な……! マスターコードが拒絶されただと!?
あの猿は、一体何をした!?』
「教育だよ」
俺はニヤリと笑い、シオンに合図を送った。
「シオン、主砲充填!
あの偉そうな『神の国』に、風穴を開けてやれ!」
「御意。……『ラグナロク・キャノン』、発射!」
戦艦『アーク・ロイヤル』の艦首が展開し、恒星の輝きにも似た極太のビームが放たれた。
光の奔流は木星の闇を切り裂き、人工惑星のバリアへと突き刺さる。
ズガガガガガガッ!!
「戦争だ、エイリアンども!
どっちが宇宙の支配者に相応しいか、とことん殺り合おうじゃねえか!」
神域の扉がこじ開けられた。
人類史上初、そして最後の、星間戦争の火蓋が切って落とされた。
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