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冷徹で隙のないエリート上司が、二人きりの空間で見せる「絶対に隠しきれない独占欲」
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「……どうして、俺を頼らない」
玄関の扉を開けた瞬間、低く、どこか怒りを孕んだ声が降ってきた。
私、澪は、ずぶ濡れになったスーツの裾を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
目の前に立っているのは、私の直属の上司であり、一ヶ月前からひょんなことで同居をすることになった氷室部長だ。
社内では「氷の魔王」と恐れられるほど冷徹で、仕事に対して一切の妥協を許さない完璧な人。
今日も彼は、自宅だというのにシワ一つないシャツ姿で、ひどく険しい顔をして私を見下ろしていた。
「す、すみません……急な通り雨で、傘を持っていなくて」
「駅に着いた時点で連絡しろと言ったはずだ。
迎えに行くと言った俺の言葉は、お前の中ではそんなに軽いものだったのか?」
「ちがっ……!
ただ、部長は今日も遅くまでオンライン会議が入っていたはずですし、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかないと思って……」
言い訳を重ねる私の言葉を遮るように、彼は大きなため息をついた。
そして、無言のまま私の腕を掴み、強引にリビングへと引き入れた。
「迷惑かどうかは、俺が決めることだ」
洗面所から大判のバスタオルを持ってくると、彼は私の頭からそれをすっぽりと被せた。
冷え切っていた身体に、ふわりと柔軟剤の甘い香りが広がる。
それは、彼と同じ香りだった。
「あの、自分で拭きます……っ」
「じっとしていろ」
有無を言わせない低い声。
いつもなら絶対に触れることのない距離で、彼の手がタオルの上から私の髪をわしゃわしゃと拭き始める。
不器用だけれど、どこか壊れ物を扱うような優しい手つき。
彼の長い指が、タオルの隙間から私の冷たい頬や首筋に触れる。
そのたびに、彼特有の体温が伝わってきて、私の心臓はドクン、ドクンと大きな音を立て始めた。
「……お前は、本当に危なっかしい。
少し目を離せば、すぐに一人で無茶をする」
「そんなこと……」
「ある。今日だって、俺がどれほど心配したか分かっているのか」
タオルが外され、視界が晴れた瞬間、息を呑んだ。
至近距離にあった彼の瞳は、いつもの冷静なものではなかった。
余裕がなく、焦燥に駆られ、そして……痛いほどの熱を帯びていたのだ。
「氷室、部長……?」
「……会社では、上司と部下だ。それは分かっている。
だが、このドアの内側でまで、俺を遠ざけようとするな」
彼が一歩踏み出し、私が後ずさる。
そのまま背中がソファの背もたれにぶつかり、逃げ場を失った。
彼が両手を私の顔の横につき、完全に私を閉じ込める。
男の人の、広く逞しい胸板が目の前にある。
彼から漂う微かなシトラスの香水と、体温の匂いが混ざり合い、頭がクラクラした。
「お前は、俺がどんな思いでこの一ヶ月、お前と一つ屋根の下で過ごしてきたか知らないだろう」
「え……」
「風呂上がりの無防備な姿を見るたび。
俺の作った飯を美味しそうに食べる顔を見るたび。
……何度、理性が吹き飛びそうになったか」
彼の大きな手が、私の濡れた前髪をそっと払い、そのまま頬を包み込んだ。
親指が、私の唇の端をなぞる。
背筋にゾクゾクとするような甘い痺れが走り、足の力が抜けそうになる。
「……部長、顔が、近いです……っ」
「離れるつもりはない。
お前が俺を頼らないと言うのなら、頼らざるを得ないように、俺が縛り付けるしかない」
彼の顔がさらに近づき、鼻先が触れ合う。
吐息が混ざり合う距離。
社内で見せる冷徹な上司の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにはただ、一人の男としての重すぎるほどの執着が剥き出しになっていた。
「……澪。
俺はもう、物分かりのいい上司を演じるつもりはない」
「ひっ……」
「お前のその生意気な口も、俺を見て揺れるその瞳も。
今日からは全部、俺の好きにさせてもらう」
その言葉とともに、彼の唇が私の唇を塞いだ。
それは、優しくて、でも絶対に逃がさないという強い意志を持った、熱い口づけだった。
息をする隙すら与えられないほどの深いそれに、私の頭の中は真っ白になる。
「んっ……ぁ……っ」
微かな声が漏れると、彼は満足そうに目を細め、さらに深く私を甘い檻の中へと引きずり込んでいく。
窓の外で降り続く雨音すら聞こえなくなるほど、私は彼の体温と、狂おしいほどの溺愛に全身を溶かされていったのだった。
玄関の扉を開けた瞬間、低く、どこか怒りを孕んだ声が降ってきた。
私、澪は、ずぶ濡れになったスーツの裾を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
目の前に立っているのは、私の直属の上司であり、一ヶ月前からひょんなことで同居をすることになった氷室部長だ。
社内では「氷の魔王」と恐れられるほど冷徹で、仕事に対して一切の妥協を許さない完璧な人。
今日も彼は、自宅だというのにシワ一つないシャツ姿で、ひどく険しい顔をして私を見下ろしていた。
「す、すみません……急な通り雨で、傘を持っていなくて」
「駅に着いた時点で連絡しろと言ったはずだ。
迎えに行くと言った俺の言葉は、お前の中ではそんなに軽いものだったのか?」
「ちがっ……!
ただ、部長は今日も遅くまでオンライン会議が入っていたはずですし、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかないと思って……」
言い訳を重ねる私の言葉を遮るように、彼は大きなため息をついた。
そして、無言のまま私の腕を掴み、強引にリビングへと引き入れた。
「迷惑かどうかは、俺が決めることだ」
洗面所から大判のバスタオルを持ってくると、彼は私の頭からそれをすっぽりと被せた。
冷え切っていた身体に、ふわりと柔軟剤の甘い香りが広がる。
それは、彼と同じ香りだった。
「あの、自分で拭きます……っ」
「じっとしていろ」
有無を言わせない低い声。
いつもなら絶対に触れることのない距離で、彼の手がタオルの上から私の髪をわしゃわしゃと拭き始める。
不器用だけれど、どこか壊れ物を扱うような優しい手つき。
彼の長い指が、タオルの隙間から私の冷たい頬や首筋に触れる。
そのたびに、彼特有の体温が伝わってきて、私の心臓はドクン、ドクンと大きな音を立て始めた。
「……お前は、本当に危なっかしい。
少し目を離せば、すぐに一人で無茶をする」
「そんなこと……」
「ある。今日だって、俺がどれほど心配したか分かっているのか」
タオルが外され、視界が晴れた瞬間、息を呑んだ。
至近距離にあった彼の瞳は、いつもの冷静なものではなかった。
余裕がなく、焦燥に駆られ、そして……痛いほどの熱を帯びていたのだ。
「氷室、部長……?」
「……会社では、上司と部下だ。それは分かっている。
だが、このドアの内側でまで、俺を遠ざけようとするな」
彼が一歩踏み出し、私が後ずさる。
そのまま背中がソファの背もたれにぶつかり、逃げ場を失った。
彼が両手を私の顔の横につき、完全に私を閉じ込める。
男の人の、広く逞しい胸板が目の前にある。
彼から漂う微かなシトラスの香水と、体温の匂いが混ざり合い、頭がクラクラした。
「お前は、俺がどんな思いでこの一ヶ月、お前と一つ屋根の下で過ごしてきたか知らないだろう」
「え……」
「風呂上がりの無防備な姿を見るたび。
俺の作った飯を美味しそうに食べる顔を見るたび。
……何度、理性が吹き飛びそうになったか」
彼の大きな手が、私の濡れた前髪をそっと払い、そのまま頬を包み込んだ。
親指が、私の唇の端をなぞる。
背筋にゾクゾクとするような甘い痺れが走り、足の力が抜けそうになる。
「……部長、顔が、近いです……っ」
「離れるつもりはない。
お前が俺を頼らないと言うのなら、頼らざるを得ないように、俺が縛り付けるしかない」
彼の顔がさらに近づき、鼻先が触れ合う。
吐息が混ざり合う距離。
社内で見せる冷徹な上司の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにはただ、一人の男としての重すぎるほどの執着が剥き出しになっていた。
「……澪。
俺はもう、物分かりのいい上司を演じるつもりはない」
「ひっ……」
「お前のその生意気な口も、俺を見て揺れるその瞳も。
今日からは全部、俺の好きにさせてもらう」
その言葉とともに、彼の唇が私の唇を塞いだ。
それは、優しくて、でも絶対に逃がさないという強い意志を持った、熱い口づけだった。
息をする隙すら与えられないほどの深いそれに、私の頭の中は真っ白になる。
「んっ……ぁ……っ」
微かな声が漏れると、彼は満足そうに目を細め、さらに深く私を甘い檻の中へと引きずり込んでいく。
窓の外で降り続く雨音すら聞こえなくなるほど、私は彼の体温と、狂おしいほどの溺愛に全身を溶かされていったのだった。
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