【生存確率0%】S級ダンジョンのボス部屋で、唯一表示された「生存ルート」が『ボス(美少女)にプロポーズすること』だった件。

ひふみ黒

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第15話 ミラノ風ドリアは革命の味がする

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「――これより、『ダンジョン攻略祝勝会』を開催する!」

放課後。
俺たちは駅前のファミリーレストラン『サイゼリヤ』にいた。
メンバーは変わらず、俺、ルナ、アリシア、そしてヴォルフガング皇子だ。

「ここが……日本の貴族が通う社交場か……」

皇子が震える手でメニューを開く。
彼は緊張していた。
無理もない。俺が「世界一うまいイタリアンがある」と連れてきたからだ。

「安い……! この『ミラノ風ドリア』、たったの300円だと!? 帝国の宮廷料理人が作るグラタンでも金貨一枚はするぞ!?」

「値段じゃない。味で勝負しているんだ」

俺は適当なことを言って、ドリンクバーへ向かった。
内心はヒヤヒヤだ。
財布の中身が寂しいからここにしただけだ。もし彼らの舌に合わなかったら、「不敬罪」で俺の首が飛ぶかもしれない。

「お待たせしましたー」

店員が料理を運んでくる。
熱々のドリア。半熟卵の乗ったハンバーグ。辛味チキン。
テーブルの上は茶色いご馳走で埋め尽くされた。

「……いただきます」

皇子が恐る恐るドリアを口に運ぶ。
アリシアも、上品にスプーンを入れる。
ルナは既に手づかみでチキンを齧っている。

パクり。

カッッッ!!!

皇子と聖女が同時に目を見開いた。

「「――美味(うま)ァァァァァァァァイッ!!!」」

店内に絶叫が響く。他のお客さんがビクッとなる。

「な、なんだこの濃厚なホワイトソースは! 焦げたチーズの香ばしさと、ターメリックライスの絶妙なハーモニー!」

「信じられません……! この価格で、このクオリティ……! 日本の食文化は、魔法技術より進んでいるのではなくて!?」

二人は猛烈な勢いで食べ始めた。
どうやら異世界(ファンタジー)の住人にとって、ファミレスの味は革命的だったらしい。
よかった。これで生存確率は確保された。

   ◇ ◇ ◇

食後のコーヒータイム。
ヴォルフガング皇子が、ふと真剣な表情でカップを置いた。

「……相川。礼を言う。こんな素晴らしい店に招待してくれて」

「気に入ったなら何よりだ」

「ああ。……だが、私がここに来たのは、ただ飯を食うためではない」

皇子の瞳が鋭くなる。
空気がピリついた。
彼は周囲を警戒するように声を潜め、爆弾発言を投下した。

「――単刀直入に言おう。我がガレリア帝国は、一ヶ月以内に日本へ宣戦布告する」

「ぶふっ!?」

俺はドリンクバーのメロンソーダを噴き出した。
なんだって?

「父上……皇帝陛下は本気だ。貴様という『規格外の戦力』が日本に現れたことで、危機感を抱いている。『相川カズトが完全に日本政府の制御下に入る前に、国ごと叩き潰す』とな」

おいおい。
俺のせいで戦争が起きるのかよ。
俺はただ、生き残るために変な選択肢を選んできただけなのに。

「私は……戦争には反対だ。これ以上、無益な血を流したくない。だが、父上の決定は絶対だ。逆らえば処刑される」

皇子は悔しげに拳を握りしめた。

「相川カズトよ。貴様ほどの男なら、この状況を打破する『策』を持っているのではないか? ……教えてくれ。私はどうすればいい?」

彼が俺を真っ直ぐに見つめる。
重い。
国の運命を、ファミレスでFランクの俺に委ねないでほしい。

「ダーリン、面倒ね。皇帝を消してきましょうか?」

ルナが物騒な提案をする。
ダメだ。それだと日本が悪者になって、世界中から攻撃される。

俺はスキルを発動した。
戦争を回避し、かつ俺が巻き込まれない平和的なルートは!?

【A:「俺に任せろ」と皇帝を説得しに行く】
→ 生存確率:0.00%(皇帝の親衛隊に囲まれて蜂の巣)

【B:「亡命しろ」と勧める】
→ 生存確率:5.00%(皇子が国を捨てて俺の家に居候し、生活費で破産)

【C:財布に入っていた『ドリンクバーの割引券(期限切れ)』を皇子に渡し、「……古いやり方は、もう通用しない。新しい時代(おかわり)を自分で注げ」と告げる】
→ 生存確率:100.00%

……は?
割引券?
しかも期限切れだぞ?
こんなゴミを渡して、何になるんだ?
だが、選択肢の輝きは「これが正解(100%)」だと主張している。

俺は震える手で財布を開き、クシャクシャになった割引券を取り出した。

「……ヴォルフ」

俺はあえて、愛称で呼んだ。

「これをやるよ」

俺はテーブルの上に、期限切れの割引券を滑らせた。

「な……これは……?」

皇子が紙切れを手に取る。
そこには『ドリンクバー 50円引き ※有効期限:2025年まで』と書かれている。

「……期限が、切れているな」

「ああ。そうだ」

俺はニヤリと笑った(ひきつった)。
そして、指定されたセリフを吐いた。

「……古いやり方は、もう通用しないってことさ。誰かに注いでもらうのを待つな。新しい時代(おかわり)は……自分自身の手で注ぎに行くもんだろ?」

シン……。
店内BGMのジャズだけが流れる。

皇子は紙切れを凝視したまま、固まっていた。
1秒、2秒、3秒。

そして。

「……っ、く……くくっ……! あーっはっはっは!!」

突然、皇子が狂ったように高笑いを始めた。
やばい、怒らせたか? ゴミを渡されてブチ切れたか?

「そうか……そういうことか!!」

皇子はバッと顔を上げた。
その瞳には、今まで見たこともないような「野心」の炎が宿っていた。

「『期限切れ』……つまり、現皇帝(父上)の時代は終わったということか! そして『自分で注ぎに行け』……これ即ち、『座して待つのではなく、自らの手で玉座を奪い取れ』というメッセージ!!」

「え?」

「貴様は私に……『クーデター(革命)』を起こせと示唆しているのだな!!」

違います。
ただドリンクバーの話をしました。

「凄い……凄すぎるぞ、相川カズト! たった一枚の紙切れで、私の迷いを断ち切り、国家の行く末まで示して見せるとは!」

皇子は立ち上がり、俺の手をガッチリと握りしめた。

「決めたぞ! 私は帰国し、父上を討つ! そして私が新皇帝となり、日本と恒久的な平和条約を結ぶ!」

【ヴォルフガングが『覚醒』しました】
【歴史改変シナリオ『帝国の革命』が開始されました】

うわあ。
なんか大事(おおごと)になった。

「ありがとう、『盟友(とも)』よ! この恩は、国を挙げて必ず返す!」

皇子は感極まった様子で、割引券を胸ポケットに大事にしまった。
まるで聖遺物(レリック)か何かのように。

「……相川くん。貴方は、国をも動かすフィクサーなのですね……」

アリシアもまた、尊敬の眼差しで俺を見ている。
違う。俺はただ、財布のゴミを処分したかっただけなんだ。

「ふふっ、ダーリンったら。世界征服も時間の問題ね♡」

ルナが楽しそうに笑う。
こうして、ファミレスの一角で、帝国の歴史が変わる決定的な瞬間が生まれてしまった。

俺が望んでいるのは「平穏な生活」だけなのに、なぜか周りが俺を「世界の覇者」にしようと全力で背中を押してくる。
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