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第16話 100円の最強兵器
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深夜の成田空港。
プライベートジェットの駐機場。
俺たちは、革命のために帰国するヴォルフガング皇子を見送りに来ていた。
「……世話になったな、相川。貴様のおかげで、私は『王』になる覚悟が決まった」
皇子が夜風に金髪をなびかせ、固い握手を求めてくる。
俺は眠い目をこすりながら手を握り返した。
「ああ、元気でな。たまには連絡しろよ」
「ふっ……皇帝になった暁には、真っ先に貴様を国賓として招待しよう」
感動の別れ。
……で、終わればよかったのだが。
そう簡単にいかないのが、この物語(人生)だ。
ヒュンッ!
闇夜を切り裂き、数本の短剣が飛来した。
「――ッ!?」
皇子が反応し、剣で弾き飛ばす。
カキンッ!
「誰だ! 姿を見せろ!」
アスファルトの影から、黒ずくめの集団が湧き出るように現れた。
その数、およそ50人。
全員が不気味な仮面をつけ、殺気を消している。
「……『影の騎士団(シャドウ・ナイツ)』か。父上の親衛隊だな」
皇子が苦々しく呟く。
帝国最強の暗殺部隊だ。
彼らは無言のまま、包囲網を狭めてくる。
「ヴォルフガング様。反逆の意思ありと見なし、処刑いたします」
隊長らしき男が、冷徹に告げる。
マズい。ここには一般人のスタッフもいる。戦闘になれば大惨事だ。
ルナが「全員、ミンチにする?」とウキウキしているが、空港を破壊したら俺が損害賠償で死ぬ。
スキル発動!
この包囲網を、犠牲者ゼロで、かつ一瞬で解散させるルートは!?
【A:皇子と共闘する】
→ 生存確率:5.00%(流れ弾に当たって死亡)
【B:ルナにブレスを吐かせる】
→ 生存確率:1.00%(成田空港が消滅し、国際指名手配)
【C:ポケットに入っている『猫じゃらし用レーザーポインター(100均)』を取り出し、隊長の額に赤い点を当てて、「……動くと、空から降ってくるぞ?」と空を指差す】
→ 生存確率:100.00%
……は?
レーザーポインター?
ああ、これか。昨日、ダイソーで買ったやつだ。ルナが猫みたいに光を追いかけるか試そうと思って持っていた。
こんな玩具で、最強の騎士団が退くのか?
だが、選択肢は絶対だ。
俺はポケットから、ペン型のレーザーポインターを取り出した。
そして、スイッチオン。
ピピッ。
隊長の額のど真ん中に、鮮やかな赤い光の点が灯る。
「……ん?」
隊長が動きを止めた。
俺は夜空を指差し、低い声で告げた。
「……動くなよ。照準(ロック)は済んでいる」
「な……ッ!?」
隊長が空を見上げる。
もちろん、そこにはただの夜空しかない。
だが、彼らの目には「絶望」が見えていたらしい。
(こ、この赤い光……魔力反応がない!? いや、高度すぎて感知できないのか!? これは、衛星軌道上に展開された『戦略級攻撃魔法』のターゲット・ビーコン……!!)
隊長の顔色が仮面の下で蒼白になる。
(バカな……! この男、最初から我々を監視していたのか!? 指先一つで、衛星からの極大魔法(サテライト・キャノン)を我々の頭上に落とすと脅しているのか!?)
「……動くと、降ってくるぞ?」
俺はダメ押しで、赤い点を彼の眉間でチラチラと動かした。
「いつでも撃てるぞ」というアピールだ。
実際は手が震えているだけだが。
隊長の額から、滝のような冷や汗が流れ落ちる。
彼は知っている。相川カズトという男が、常識外の力(勘違い)を持っていることを。
「……そ、総員……撤退ッ!!!」
隊長が悲鳴に近い声で叫んだ。
「ターゲット変更! 作戦中止だ! ここにいては全員『蒸発』するぞ!!」
ザッッッ!!
黒ずくめの集団が、蜘蛛の子を散らすように一瞬で闇へと消えていった。
あまりの速さに、残像が見えるほどだ。
シン……。
静まり返る駐機場。
「……す、すげぇ……」
皇子がポカンと口を開けて俺を見ている。
「相川……貴様、今度は『星』すらも支配下に置いたというのか……?」
「え? いや、これはただの……」
俺が言いかけると、皇子は俺の手からレーザーポインターをむしり取った。
「くれ! この『衛星指揮杖(サテライト・ロッド)』を私にくれ!」
「いや、100円だぞ?」
「国の予算が尽きても構わん! これさえあれば、父上の軍勢など恐るるに足らん!」
皇子は涙目だった。
どうやら、これを向ければ敵が勝手に逃げ出す「最強のハッタリ・アイテム」として使う気らしい。
まあ、いいか。あげるよ。
「……感謝する、我が盟友よ!」
皇子はレーザーポインターを宝物のように掲げ、ジェット機に乗り込んだ。
エンジンが轟音を上げる。
「待っていろ! 必ず良き報告を持って帰ってくる!」
ジェット機が離陸し、夜空へと消えていく。
その機影を見送りながら、俺は深い深いため息をついた。
「……行ったか」
「ふふ、面白かったわね。ダーリン」
ルナが俺の腕に絡みつき、夜空を見上げる。
「あの飛行機、途中で落ちなきゃいいけど」
「不吉なことを言うな」
「だって、ダーリンがあげたあの光る棒……電池切れそうだったわよ?」
「……あ」
そういえば、テスト用電池のままだった。
革命の最中に電池が切れたら、皇子はどうなるんだろう。
「あれ? 光が出ない! 待ってくれ、電池交換を!」とか言って斬られる未来が見える。
「……頑張れ、ヴォルフ」
俺は遠くの空に祈った。
こうして、日本の裏番長による「武器供与(100均)」が完了し、遠い異国で革命の火蓋が切って落とされたのだった。
プライベートジェットの駐機場。
俺たちは、革命のために帰国するヴォルフガング皇子を見送りに来ていた。
「……世話になったな、相川。貴様のおかげで、私は『王』になる覚悟が決まった」
皇子が夜風に金髪をなびかせ、固い握手を求めてくる。
俺は眠い目をこすりながら手を握り返した。
「ああ、元気でな。たまには連絡しろよ」
「ふっ……皇帝になった暁には、真っ先に貴様を国賓として招待しよう」
感動の別れ。
……で、終わればよかったのだが。
そう簡単にいかないのが、この物語(人生)だ。
ヒュンッ!
闇夜を切り裂き、数本の短剣が飛来した。
「――ッ!?」
皇子が反応し、剣で弾き飛ばす。
カキンッ!
「誰だ! 姿を見せろ!」
アスファルトの影から、黒ずくめの集団が湧き出るように現れた。
その数、およそ50人。
全員が不気味な仮面をつけ、殺気を消している。
「……『影の騎士団(シャドウ・ナイツ)』か。父上の親衛隊だな」
皇子が苦々しく呟く。
帝国最強の暗殺部隊だ。
彼らは無言のまま、包囲網を狭めてくる。
「ヴォルフガング様。反逆の意思ありと見なし、処刑いたします」
隊長らしき男が、冷徹に告げる。
マズい。ここには一般人のスタッフもいる。戦闘になれば大惨事だ。
ルナが「全員、ミンチにする?」とウキウキしているが、空港を破壊したら俺が損害賠償で死ぬ。
スキル発動!
この包囲網を、犠牲者ゼロで、かつ一瞬で解散させるルートは!?
【A:皇子と共闘する】
→ 生存確率:5.00%(流れ弾に当たって死亡)
【B:ルナにブレスを吐かせる】
→ 生存確率:1.00%(成田空港が消滅し、国際指名手配)
【C:ポケットに入っている『猫じゃらし用レーザーポインター(100均)』を取り出し、隊長の額に赤い点を当てて、「……動くと、空から降ってくるぞ?」と空を指差す】
→ 生存確率:100.00%
……は?
レーザーポインター?
ああ、これか。昨日、ダイソーで買ったやつだ。ルナが猫みたいに光を追いかけるか試そうと思って持っていた。
こんな玩具で、最強の騎士団が退くのか?
だが、選択肢は絶対だ。
俺はポケットから、ペン型のレーザーポインターを取り出した。
そして、スイッチオン。
ピピッ。
隊長の額のど真ん中に、鮮やかな赤い光の点が灯る。
「……ん?」
隊長が動きを止めた。
俺は夜空を指差し、低い声で告げた。
「……動くなよ。照準(ロック)は済んでいる」
「な……ッ!?」
隊長が空を見上げる。
もちろん、そこにはただの夜空しかない。
だが、彼らの目には「絶望」が見えていたらしい。
(こ、この赤い光……魔力反応がない!? いや、高度すぎて感知できないのか!? これは、衛星軌道上に展開された『戦略級攻撃魔法』のターゲット・ビーコン……!!)
隊長の顔色が仮面の下で蒼白になる。
(バカな……! この男、最初から我々を監視していたのか!? 指先一つで、衛星からの極大魔法(サテライト・キャノン)を我々の頭上に落とすと脅しているのか!?)
「……動くと、降ってくるぞ?」
俺はダメ押しで、赤い点を彼の眉間でチラチラと動かした。
「いつでも撃てるぞ」というアピールだ。
実際は手が震えているだけだが。
隊長の額から、滝のような冷や汗が流れ落ちる。
彼は知っている。相川カズトという男が、常識外の力(勘違い)を持っていることを。
「……そ、総員……撤退ッ!!!」
隊長が悲鳴に近い声で叫んだ。
「ターゲット変更! 作戦中止だ! ここにいては全員『蒸発』するぞ!!」
ザッッッ!!
黒ずくめの集団が、蜘蛛の子を散らすように一瞬で闇へと消えていった。
あまりの速さに、残像が見えるほどだ。
シン……。
静まり返る駐機場。
「……す、すげぇ……」
皇子がポカンと口を開けて俺を見ている。
「相川……貴様、今度は『星』すらも支配下に置いたというのか……?」
「え? いや、これはただの……」
俺が言いかけると、皇子は俺の手からレーザーポインターをむしり取った。
「くれ! この『衛星指揮杖(サテライト・ロッド)』を私にくれ!」
「いや、100円だぞ?」
「国の予算が尽きても構わん! これさえあれば、父上の軍勢など恐るるに足らん!」
皇子は涙目だった。
どうやら、これを向ければ敵が勝手に逃げ出す「最強のハッタリ・アイテム」として使う気らしい。
まあ、いいか。あげるよ。
「……感謝する、我が盟友よ!」
皇子はレーザーポインターを宝物のように掲げ、ジェット機に乗り込んだ。
エンジンが轟音を上げる。
「待っていろ! 必ず良き報告を持って帰ってくる!」
ジェット機が離陸し、夜空へと消えていく。
その機影を見送りながら、俺は深い深いため息をついた。
「……行ったか」
「ふふ、面白かったわね。ダーリン」
ルナが俺の腕に絡みつき、夜空を見上げる。
「あの飛行機、途中で落ちなきゃいいけど」
「不吉なことを言うな」
「だって、ダーリンがあげたあの光る棒……電池切れそうだったわよ?」
「……あ」
そういえば、テスト用電池のままだった。
革命の最中に電池が切れたら、皇子はどうなるんだろう。
「あれ? 光が出ない! 待ってくれ、電池交換を!」とか言って斬られる未来が見える。
「……頑張れ、ヴォルフ」
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