【生存確率0%】S級ダンジョンのボス部屋で、唯一表示された「生存ルート」が『ボス(美少女)にプロポーズすること』だった件。

ひふみ黒

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第17話 進路希望調査は世界地図で

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「えー、それでは相川くんの『三者面談』を始めます……」

放課後の教室。
担任の教師が、ガチガチに震えながら言った。
無理もない。
俺の保護者席に座っているのは、母親でも父親でもない。

「ダーリンの将来を決める大事な会議と聞いて」

黒いドレスを着た絶世の美少女、ルナだ。
彼女は「保護者」というより「支配者」の風格で腕を組んでいる。

「ルナ、静かにな。あくまで学校の行事だから」

「わかってるわ。担任が変なことを言ったら、校舎ごと消せばいいんでしょ?」

「違う。絶対ダメだ」

担任が涙目でハンカチを取り出す。
胃が痛い。早く終わらせて帰りたい。

「え、えーっと……相川くんの提出した『進路希望調査票』ですが……」

担任が震える手で紙を広げる。
そこには、俺が真剣に考えた将来の夢が書いてある。

**【 第一志望:地方公務員(安定した生活) 】**

これだ。
ダンジョンも魔王も関係ない、平和で安定した人生。
これこそが俺の望みだ。

しかし、担任は紙を見た瞬間、ヒッと息を呑んだ。

「こ、公務員……! つまり、『国家(公)を務める(支配する)』ということか……!?」

「え?」

「『地方』というのは謙遜で、実質的には『地球全土』を指しているんだな!? くっ……ついに相川くんは、裏社会のフィクサーから表舞台の『王』になると宣言したのか……!」

なんでだよ。
市役所の窓口業務とかをイメージしてるんだよ。

「あら、いいじゃないダーリン。世界征服、手伝ってあげるわよ?」

ルナが嬉しそうに身を乗り出す。
話がややこしくなる。否定しなければ。

その時。
教室のドアがノックもなく開かれた。

「失礼する!」

入ってきたのは、黒いスーツのSPたち。
そして、その後ろから現れた白人の老紳士。
どこかで見たことがある顔だと思ったら、現役の『アメリカ合衆国大統領』だった。

「……え?」

俺も担任も固まった。
大統領は俺の前に歩み寄ると、重々しく口を開いた。

「Mister アイカワ。緊急の案件で飛んできた」

彼は一枚の衛星写真を取り出した。
そこには、昨夜の成田空港が写っている。
そして、空港の上空には『巨大な赤いエネルギー反応』が観測されていた。

「昨夜、君が空港で使用した『戦略兵器(レーザーポインター)』についてだ。……ペンタゴンはパニックになっている。『日本が衛星軌道上から神の雷(トール・ハンマー)を落とそうとしている』とな」

大統領が汗を拭う。

「単刀直入に聞こう。君は、その力を我々アメリカに向けるつもりはあるかね?」

教室が静まり返る。
担任が白目を剥いて気絶した。
ただの進路相談が、核兵器サミットに変わってしまった。
ダイソーの猫じゃらし用ポインターが、ペンタゴンを動かしたらしい。

スキル発動!
この誤解を解き、かつ戦争を回避するルートは!?

【A:「ただのオモチャです」と実物を見せる】
→ 生存確率:10.00%(「そんな小型デバイスで衛星を操作しているのか!?」と逆に技術力を恐れられ、CIAに拉致される)

【B:「アメリカは好きですよ」と媚びる】
→ 生存確率:5.00%(「嘘だ、目が笑っていない」と警戒され、先制攻撃を受ける)

【C:進路調査票の『公務員』の文字を指差しながら、「……俺は忙しいんだ。自分の『進路(未来)』を考えるので手一杯でね」と呆れたように告げる】
→ 生存確率:100.00%

俺はため息をつき、机の上の調査票を指でトントンと叩いた。

「……ミスター・プレジデント。見ての通りだ」

俺は気だるげに言った。

「俺は今、自分の『進路』について考えている。……他所の国のことなんて、構っている暇はないんだよ」

大統領が調査票を覗き込む。
そこに書かれた『公務員(国家の支配者)』の文字。
彼はハッと息を呑んだ。

(な、なんと……! 彼はアメリカへの攻撃など眼中にないというのか! すでに彼の視線は、国境を超えた『地球規模の統治』に向けられている……!)

(我々が「撃たないでくれ」と懇願しに来たこと自体が、彼にとっては「小事」に過ぎないのだ……!)

「……失礼しました、Mister アイカワ」

大統領は深く帽子を取り、頭を下げた。

「貴方の器の大きさを侮っていたようだ。……我々は撤退する。貴方が『新世界秩序』を構築するその日まで、我々は静観させてもらおう」

「ああ、出口はあっちだ」

俺がシッシッと手を振ると、大統領とSPたちは逃げるように去っていった。
気絶した担任だけが残された。

「……ふぅ。やっと静かになった」

俺は椅子に深くもたれかかった。
ただ「公務員になりたい」と言っただけで、なぜかアメリカとの不可侵条約が結ばれてしまった。

「さすがダーリン♡ アメリカ大統領すらパシリ扱いなんて」

ルナがうっとりした瞳で俺を見つめる。

「ねえ、就職祝いに『ホワイトハウス』もらってこようか?」
「いらない。絶対にいらない」

こうして俺の三者面談は、「地球の覇者になる」という誤った結論で幕を閉じた。
俺が望む「安定した生活」は、光の速さで遠ざかっている気がする。
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