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第18話 昭和の技術(叩いて直す)が国を救う
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「……あー、クソッ。映らなくなった」
日曜日の昼下がり。
俺は自宅のテレビの前で悪戦苦闘していた。
リモコンが効かないのだ。
電池切れか? 接触不良か?
俺はイライラしながら、リモコンをパンパンと手のひらに叩きつけていた。
「ダーリン、その黒い棒いじめてるの? 壊して新しいの買う?」
「いや、これはコツがあるんだよ。昔からの知恵だ」
その時。
テーブルの上のスマホが震えた。
表示名は『皇帝(予定)ヴォルフ』。
嫌な予感がする。出たくない。
だが、無視すると生存確率が下がる気がして、俺はしぶしぶ通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
『――カズトかッ!! 緊急事態だ!!』
ヴォルフガングの絶叫が鼓膜を突き破る。
背後から、怒号と金属音が聞こえる。どうやら戦場の真っ只中らしい。
『今、帝都の広場で父上(皇帝)と対峙している! 貴様から貰った「衛星指揮杖(レーザーポインター)」で父上を威嚇し、降伏を迫ったのだが……!』
「うん」
『光が出ないのだッ!!!』
やっぱりか。
俺は天を仰いだ。
あれテスト用電池だったからな。寿命だ。
『振っても叩いても反応しない! 父上が「ハッタリか!」と気づき始めている! 親衛隊が突撃してくるぞ! どうすればいい! チャージ方法は!? 呪文は!?』
皇子がパニックになっている。
このままでは彼は処刑され、革命は失敗。
その後、皇帝は怒りの矛先を「黒幕」である俺に向け、日本へ総攻撃を仕掛けてくるだろう。
俺の平穏が終わる。
スキル発動!
この遠距離トラブルを解決し、ヴォルフを勝利させるルートは!?
【A:「電池切れだ。ドンマイ」と切る】
→ 生存確率:0.00%(皇子死亡。帝国軍が日本へ侵攻開始)
【B:「コンビニで単4電池を買え」と指示する】
→ 生存確率:5.00%(「戦場にコンビニはない!」と絶望され、敗北)
【C:リモコンを直す感覚で、「……接触不良だ。斜め45度の角度で、思いっきり叩け」とアドバイスする】
→ 生存確率:100.00%
これだ。
昭和のオヤジの知恵、「叩けば直る」。
精密機器には御法度だが、100均のポインターならワンチャンある。
「……ヴォルフ、落ち着け」
俺はリモコンをいじりながら、冷静に(面倒くさそうに)告げた。
「エネルギーが詰まっているだけだ。……先端を斜め45度にして、手のひらに思いっきり叩きつけろ。それで『道』が開く」
『た、叩く……だと!? そんな乱暴なことで、衛星との接続が回復するのか!?』
「いいからやれ。気合を込めろ」
『わ、わかった! 信じるぞ、盟友よ!』
通話の向こうで、ヴォルフが息を吸い込む音がした。
『うおおおおおおッ! 起動せよ、神の雷ッ!!』
バシィィィィィンッ!!!
凄まじい打撃音が響いた。
次の瞬間。
『――つ、点いたぁぁぁぁぁッ!!!』
奇跡が起きた。
衝撃で電池の接触が回復し、レーザーが復活したらしい。
『見ろ父上! これが天の光だ!』
『ひ、ひいぃッ! 私の眉間に赤い光が! や、やめろ! 撃つな!』
皇帝の情けない悲鳴が聞こえる。
『ヴォルフよ! お前の勝ちだ! 譲位する! だからその「衛星砲」のトリガーから指を離してくれぇぇぇッ!』
『……父上、賢明な判断です』
ワァァァァァァッ!!!
万歳三唱。革命達成の歓声。
『やったぞカズト! 貴様の助言通り、「衝撃」を与えたことでリミッターが解除され、出力が最大になったようだ! 父上が腰を抜かしている!』
「おー、よかったな」
俺は棒読みで答えた。
実はこっちのテレビのリモコンも、叩いたら直ったところだ。
『この勝利は貴様のおかげだ! この「叩いて起動する」動作……これこそが、衛星への「攻撃承認コード」だったのだな!?』
違います。
ただの接触不良です。
『よし、直ちに戴冠式を行う! 新皇帝としての最初の勅命は、「日本との恒久平和条約」と「相川カズトへの国家予算レベルの謝礼」だ! 待っていろ!』
プツン。
通話が切れた。
俺はスマホを置き、深くため息をついた。
電池切れのオモチャを叩いただけで、一国の皇帝が入れ替わってしまった。
「ダーリン、テレビ直った?」
ルナがポテチを食べながら聞く。
「ああ、直ったよ。ついでに世界平和も守られたみたいだ」
「ふーん。よくわかんないけど、凄いのね」
テレビ画面には、ニュース速報が流れていた。
『【速報】ガレリア帝国で政変。新皇帝ヴォルフガング氏、日本との友好を宣言』
画面の中で、ヴォルフガング新皇帝が、あのレーザーポインターを王笏(おうしゃく)のように掲げ、民衆に手を振っている。
その光景を見ながら、俺は思った。
(……予備の電池、送ってやった方がいいかな)
こうして、帝国の脅威は去った。
だが、俺の「名声」は国境を超え、今や世界レベルで「アンタッチャブルな存在」として定着しつつあった。
日曜日の昼下がり。
俺は自宅のテレビの前で悪戦苦闘していた。
リモコンが効かないのだ。
電池切れか? 接触不良か?
俺はイライラしながら、リモコンをパンパンと手のひらに叩きつけていた。
「ダーリン、その黒い棒いじめてるの? 壊して新しいの買う?」
「いや、これはコツがあるんだよ。昔からの知恵だ」
その時。
テーブルの上のスマホが震えた。
表示名は『皇帝(予定)ヴォルフ』。
嫌な予感がする。出たくない。
だが、無視すると生存確率が下がる気がして、俺はしぶしぶ通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
『――カズトかッ!! 緊急事態だ!!』
ヴォルフガングの絶叫が鼓膜を突き破る。
背後から、怒号と金属音が聞こえる。どうやら戦場の真っ只中らしい。
『今、帝都の広場で父上(皇帝)と対峙している! 貴様から貰った「衛星指揮杖(レーザーポインター)」で父上を威嚇し、降伏を迫ったのだが……!』
「うん」
『光が出ないのだッ!!!』
やっぱりか。
俺は天を仰いだ。
あれテスト用電池だったからな。寿命だ。
『振っても叩いても反応しない! 父上が「ハッタリか!」と気づき始めている! 親衛隊が突撃してくるぞ! どうすればいい! チャージ方法は!? 呪文は!?』
皇子がパニックになっている。
このままでは彼は処刑され、革命は失敗。
その後、皇帝は怒りの矛先を「黒幕」である俺に向け、日本へ総攻撃を仕掛けてくるだろう。
俺の平穏が終わる。
スキル発動!
この遠距離トラブルを解決し、ヴォルフを勝利させるルートは!?
【A:「電池切れだ。ドンマイ」と切る】
→ 生存確率:0.00%(皇子死亡。帝国軍が日本へ侵攻開始)
【B:「コンビニで単4電池を買え」と指示する】
→ 生存確率:5.00%(「戦場にコンビニはない!」と絶望され、敗北)
【C:リモコンを直す感覚で、「……接触不良だ。斜め45度の角度で、思いっきり叩け」とアドバイスする】
→ 生存確率:100.00%
これだ。
昭和のオヤジの知恵、「叩けば直る」。
精密機器には御法度だが、100均のポインターならワンチャンある。
「……ヴォルフ、落ち着け」
俺はリモコンをいじりながら、冷静に(面倒くさそうに)告げた。
「エネルギーが詰まっているだけだ。……先端を斜め45度にして、手のひらに思いっきり叩きつけろ。それで『道』が開く」
『た、叩く……だと!? そんな乱暴なことで、衛星との接続が回復するのか!?』
「いいからやれ。気合を込めろ」
『わ、わかった! 信じるぞ、盟友よ!』
通話の向こうで、ヴォルフが息を吸い込む音がした。
『うおおおおおおッ! 起動せよ、神の雷ッ!!』
バシィィィィィンッ!!!
凄まじい打撃音が響いた。
次の瞬間。
『――つ、点いたぁぁぁぁぁッ!!!』
奇跡が起きた。
衝撃で電池の接触が回復し、レーザーが復活したらしい。
『見ろ父上! これが天の光だ!』
『ひ、ひいぃッ! 私の眉間に赤い光が! や、やめろ! 撃つな!』
皇帝の情けない悲鳴が聞こえる。
『ヴォルフよ! お前の勝ちだ! 譲位する! だからその「衛星砲」のトリガーから指を離してくれぇぇぇッ!』
『……父上、賢明な判断です』
ワァァァァァァッ!!!
万歳三唱。革命達成の歓声。
『やったぞカズト! 貴様の助言通り、「衝撃」を与えたことでリミッターが解除され、出力が最大になったようだ! 父上が腰を抜かしている!』
「おー、よかったな」
俺は棒読みで答えた。
実はこっちのテレビのリモコンも、叩いたら直ったところだ。
『この勝利は貴様のおかげだ! この「叩いて起動する」動作……これこそが、衛星への「攻撃承認コード」だったのだな!?』
違います。
ただの接触不良です。
『よし、直ちに戴冠式を行う! 新皇帝としての最初の勅命は、「日本との恒久平和条約」と「相川カズトへの国家予算レベルの謝礼」だ! 待っていろ!』
プツン。
通話が切れた。
俺はスマホを置き、深くため息をついた。
電池切れのオモチャを叩いただけで、一国の皇帝が入れ替わってしまった。
「ダーリン、テレビ直った?」
ルナがポテチを食べながら聞く。
「ああ、直ったよ。ついでに世界平和も守られたみたいだ」
「ふーん。よくわかんないけど、凄いのね」
テレビ画面には、ニュース速報が流れていた。
『【速報】ガレリア帝国で政変。新皇帝ヴォルフガング氏、日本との友好を宣言』
画面の中で、ヴォルフガング新皇帝が、あのレーザーポインターを王笏(おうしゃく)のように掲げ、民衆に手を振っている。
その光景を見ながら、俺は思った。
(……予備の電池、送ってやった方がいいかな)
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