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会長…!!交流会出たいです…
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なぜ、桜花の特権がなくなったのか。
それは、慎吾が城田に、ラットの際に出るフェロモンを抑える対策を考えてくれると言われた、少し前のこと―――。
その日生徒会では交流会について話し合いが行われていた。
会議室にはずらりと役員が座って朝倉会長を見ていた。
それを受けて会長が厳かに会議の開始を告げる。
「みな、今日の議題は恒例の桜花学園との交流会の開催についてだ。
そろそろ動く前に、一通り確認しておきたい。」
俺は会長に命じられた肩もみという補助業務を 会長の背後霊となって こなしながら会議に参加していた。
大切なことなのでもう一度言おう。俺は会議に参加していた!
「もうわかっているとは思うが、ドレスコードはいつものとおり・・・」
「ドレスコード?」
聞きなれない言葉に、俺は肩をもみながらポロリとこぼしてしまった。
「なんだ小山田。ドレスコードをしらないのか?」
会議の途中なのに中断して振りかえる会長。
会議に集中しなさい。とはいえ聞かれたのでおれも答えた。
「男なのにドレス・・・パーティーで女装の出し物でもするんすか?」
「馬鹿だな、小山田。ドレスコードというのは…まあ実物を見るのが早い。ほらこれだ。」
そういって、資料ファイルの中から写真を出してきた。
おれは絶句した。
そこに、映画でしか見たことが無いような社交界が映っていた。
ドレスアップした美しい女性と線の細い美少年が、王子様のような美貌の青年と並んで映っている。
よく見たら、髪の毛をセットして、蝶ネクタイとタキシード姿の朝倉会長の姿だった。
次の写真も、次の写真も。
みんなすべからくタキシード。
「会長、この服・・・」
「これがドレスコードに沿った服装だ。略式の、準正装だな。小山田もそうしろよ。」
「おれ、こんな服持ってませんよ。」
「なに。そうか。なら制服でもいいだろう。」
「ちょ、みんな黒いタキシードに俺だけ白い制服でネクタイじゃ浮くじゃないですか・・・」
「じゃあ蝶ネクタイをするか?」
ふと、写真の端っこに写った給仕係の制服が目に入った。
白いスーツに蝶ネクタイ・・・あ。これ絶対おれもスタッフだと思われてカラになった飲み物とか渡されるパターンの奴だ。
Ωの子から、俺のこと出席者だと認識してもらえなくて、スルーされる自分の姿が目に浮かぶ。
おれは・・・おれは・・・
「おれ、交流会には出れません。白い制服じゃ・・・出れません!」
「小山田…心配するな、制服ならドレスコードに適っているはずだ。」
「いや、そういうんじゃなくて!ドレスコードとかじゃなくて!」
「なんだ、制服じゃ嫌なのか。」
「嫌です!制服じゃいやです!」
「・・・、そうか、泣くほどか。仕方がない、俺が行っているテーラーに・・・」
そこに、冷たく響く声が差し込まれた。
「会長。いいかげん話が進まないのは困ります。」
そしてさらに言い募る。
「小山田の服については後ほど皆で話し合いましょう。俺がいつも仕立てているところもお勧めなので。」
2年会計の先輩の発言で、会長の話の軌道は修正された。…ような、されてないような。
「ああ、そうだな。まったく。小山田は困った奴だ。」
いや、会長が勝手に話を膨らませたんでしょうが。
「では、会費についてだが、これも例年通りと・・・」
おれは肩もみを再開しながら後ろから会長が手にしている資料を見ていた。
思わず手が止まった。
「小山田、手が止まってるぞ。」
「ごっ、ごっ、ごごごごまんえん・・・」
「なんだ小山田。会費がどうかしたか?」
「だって、五万円!え、ほんとうに!?」
「ここ毎年、この金額だが。どうかしたのか?」
「高い・・・」
「高い?」
「あの、交流会って合コンですよね。高校生の!なんで五万もするんすか!!」
「それは、パーティーの食事、ケータリング、給仕係、楽団・・・いろいろあるからな。」
「・・・無理です!絶対無理!高すぎる!こんなの払えっこない!!」
「そうか、じゃあそれも俺が出してやるから心配するな。」
「会長、小山田が泣いてます。」
「どうした小山田。」
「どうもこうもないっすよ。
交流会出られると思ったのに・・・
Ωと番えなくたって、会えるだけでいいって思ってたのに…
そんなささやかな夢もかなわないなんて・・うう・・・
交流会に・・・出たい・・・出たいです・・・!」
「小山田泣くな。お前も出ればいいじゃないか。・・・タキシードは後で皆でどこで買うか決めればいい。会費も俺がはらってやるから。」
「いえ、小山田の分なので、それはすべて俺が面倒見ます。」
「桐生。いや、しかし・・・」
「・・・いっす。」
「なんだ。小山田聞こえない。はっきり言え。」
「やめてくださいよ。もういいっす…。
なんなんすか、簡単に代わりに払うとか。
脛かじりなのは俺と一緒じゃないっすか…。
親の金を粗末にしちゃだめっすよ。」
「小山田…そんなことが気になるのか。まあ親の金じゃないんだが。
俺たちの金が嫌なら、生徒会活動費で買ってやるから。これなら正当な…」
「施しを受けるくらいなら潔く俺あきらめるっす。
可愛いΩとか俺全然興味ないっすから。ないっすからぁ!!」
俺は生徒会室から走って逃げだした。
うしろから仕事に厳しいインテリ眼鏡の庄司が「あっ、こら小山田!もどれ!仕事を途中でほったらかしにする奴があるか!!」
っていう声が聞こえたけど、俺はとんずらした。
それから わりとすぐにクソ医者のところで定期検査を受けたときに交流会の話をして。
次の生徒会役員会議に参加したら、いつの間にか議題が「桜花学園との茶会の開催について」になっていたのだった。
それは、慎吾が城田に、ラットの際に出るフェロモンを抑える対策を考えてくれると言われた、少し前のこと―――。
その日生徒会では交流会について話し合いが行われていた。
会議室にはずらりと役員が座って朝倉会長を見ていた。
それを受けて会長が厳かに会議の開始を告げる。
「みな、今日の議題は恒例の桜花学園との交流会の開催についてだ。
そろそろ動く前に、一通り確認しておきたい。」
俺は会長に命じられた肩もみという補助業務を 会長の背後霊となって こなしながら会議に参加していた。
大切なことなのでもう一度言おう。俺は会議に参加していた!
「もうわかっているとは思うが、ドレスコードはいつものとおり・・・」
「ドレスコード?」
聞きなれない言葉に、俺は肩をもみながらポロリとこぼしてしまった。
「なんだ小山田。ドレスコードをしらないのか?」
会議の途中なのに中断して振りかえる会長。
会議に集中しなさい。とはいえ聞かれたのでおれも答えた。
「男なのにドレス・・・パーティーで女装の出し物でもするんすか?」
「馬鹿だな、小山田。ドレスコードというのは…まあ実物を見るのが早い。ほらこれだ。」
そういって、資料ファイルの中から写真を出してきた。
おれは絶句した。
そこに、映画でしか見たことが無いような社交界が映っていた。
ドレスアップした美しい女性と線の細い美少年が、王子様のような美貌の青年と並んで映っている。
よく見たら、髪の毛をセットして、蝶ネクタイとタキシード姿の朝倉会長の姿だった。
次の写真も、次の写真も。
みんなすべからくタキシード。
「会長、この服・・・」
「これがドレスコードに沿った服装だ。略式の、準正装だな。小山田もそうしろよ。」
「おれ、こんな服持ってませんよ。」
「なに。そうか。なら制服でもいいだろう。」
「ちょ、みんな黒いタキシードに俺だけ白い制服でネクタイじゃ浮くじゃないですか・・・」
「じゃあ蝶ネクタイをするか?」
ふと、写真の端っこに写った給仕係の制服が目に入った。
白いスーツに蝶ネクタイ・・・あ。これ絶対おれもスタッフだと思われてカラになった飲み物とか渡されるパターンの奴だ。
Ωの子から、俺のこと出席者だと認識してもらえなくて、スルーされる自分の姿が目に浮かぶ。
おれは・・・おれは・・・
「おれ、交流会には出れません。白い制服じゃ・・・出れません!」
「小山田…心配するな、制服ならドレスコードに適っているはずだ。」
「いや、そういうんじゃなくて!ドレスコードとかじゃなくて!」
「なんだ、制服じゃ嫌なのか。」
「嫌です!制服じゃいやです!」
「・・・、そうか、泣くほどか。仕方がない、俺が行っているテーラーに・・・」
そこに、冷たく響く声が差し込まれた。
「会長。いいかげん話が進まないのは困ります。」
そしてさらに言い募る。
「小山田の服については後ほど皆で話し合いましょう。俺がいつも仕立てているところもお勧めなので。」
2年会計の先輩の発言で、会長の話の軌道は修正された。…ような、されてないような。
「ああ、そうだな。まったく。小山田は困った奴だ。」
いや、会長が勝手に話を膨らませたんでしょうが。
「では、会費についてだが、これも例年通りと・・・」
おれは肩もみを再開しながら後ろから会長が手にしている資料を見ていた。
思わず手が止まった。
「小山田、手が止まってるぞ。」
「ごっ、ごっ、ごごごごまんえん・・・」
「なんだ小山田。会費がどうかしたか?」
「だって、五万円!え、ほんとうに!?」
「ここ毎年、この金額だが。どうかしたのか?」
「高い・・・」
「高い?」
「あの、交流会って合コンですよね。高校生の!なんで五万もするんすか!!」
「それは、パーティーの食事、ケータリング、給仕係、楽団・・・いろいろあるからな。」
「・・・無理です!絶対無理!高すぎる!こんなの払えっこない!!」
「そうか、じゃあそれも俺が出してやるから心配するな。」
「会長、小山田が泣いてます。」
「どうした小山田。」
「どうもこうもないっすよ。
交流会出られると思ったのに・・・
Ωと番えなくたって、会えるだけでいいって思ってたのに…
そんなささやかな夢もかなわないなんて・・うう・・・
交流会に・・・出たい・・・出たいです・・・!」
「小山田泣くな。お前も出ればいいじゃないか。・・・タキシードは後で皆でどこで買うか決めればいい。会費も俺がはらってやるから。」
「いえ、小山田の分なので、それはすべて俺が面倒見ます。」
「桐生。いや、しかし・・・」
「・・・いっす。」
「なんだ。小山田聞こえない。はっきり言え。」
「やめてくださいよ。もういいっす…。
なんなんすか、簡単に代わりに払うとか。
脛かじりなのは俺と一緒じゃないっすか…。
親の金を粗末にしちゃだめっすよ。」
「小山田…そんなことが気になるのか。まあ親の金じゃないんだが。
俺たちの金が嫌なら、生徒会活動費で買ってやるから。これなら正当な…」
「施しを受けるくらいなら潔く俺あきらめるっす。
可愛いΩとか俺全然興味ないっすから。ないっすからぁ!!」
俺は生徒会室から走って逃げだした。
うしろから仕事に厳しいインテリ眼鏡の庄司が「あっ、こら小山田!もどれ!仕事を途中でほったらかしにする奴があるか!!」
っていう声が聞こえたけど、俺はとんずらした。
それから わりとすぐにクソ医者のところで定期検査を受けたときに交流会の話をして。
次の生徒会役員会議に参加したら、いつの間にか議題が「桜花学園との茶会の開催について」になっていたのだった。
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