鬼畜皇子と建国の魔女

Adria

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第一部

24.一進一退※

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 ルキウスの話を聞いて思った事は、それがキッカケだとしても、それだけで今のルキウスの冷酷さや残虐さを作るには、まだ何か足らぬような気もした。


 恐らく、その後も何度もその座や命を脅かされ、どんどん人間不信へと陥っていたのだろう。憶測に過ぎぬが……。
 マルクスは人に恵まれていた方だと思う。だが、ルキウスは違う。人に対しての運がなさ過ぎる。不運で片付けられる域を超えている。それも、この国が腐敗しているからなのだろうか……。



 私は以前、皇帝の記憶を読んだ事を思い出していた。あの時は焼印の在り処を知りたくて、限定的な記憶しか読めていなかった為に、知り得なかったが……そのような事を正す事も出来ぬ無能だったとは思わなかった。



 上に立つ者が無能だという事は、それだけで罪な事だ。


 あの時、分かっていたらどうしただろうか……あまりの胸糞の悪さに眠っている皇帝の胸に剣を突き立てたのだろうか……。
 いや、どうだろうな……。変な正義感を持っても良い事はない。だからと言って意に沿わぬからと言って殺しては、ルキウスと同じになってしまう。



 この国の腐敗をマルクスやルチアは嘆いているのだろうか……。



 はぁ。……聞いてしまった以上、放っておけないと思う私は愚かで甘いのだろうな。
 変な正義感など持っても良いことなどない……甘さなど捨ててしまえば良いのに……。




 何度も酷い目に遭いながらも、マルクスと同じ顔が苦しんでいるのを放っておけない私は、救いようのない愚か者だ。




「痛っ!」



 ぼんやり考え事をしていたら、突如首筋に痛みが走って、己を組み敷いているルキウスを見上げると、ルキウスが私の首筋を噛んでいた。



「今から其方を抱いてやろうというのに、考え事をするとは、なめられたものだな」



 いや、別に抱いてくれなどと頼んだ覚えなどないが……。寧ろ、放っておいて欲しいくらいだ。



「いや、これは……ルキウスの話を聞いて、私だとて思うところくらいあるのだ……。どうにも、すっきりせぬ。モヤモヤがっ……っ! ちょっと、待て! あっ」



 人が話している途中なのに、ルキウスは先程噛み付いた首筋に舌を這わせ始めた。私がルキウスを押し返そうとしても、ビクともせぬ。



「抵抗など無駄な事だ。それに、其方は私に抱かれるのが好きだろう?」
「は?」
「クッ、初代皇帝の墓の前で、生娘とは思えぬ程に乱れていたからな」



 この淫乱と耳元で囁かれ、私は違うと叫び、睨んでもルキウスは、私を馬鹿にしたような笑みを崩さなかった。




「破瓜の痛みなど、其方に斬りつけられる痛みに比べれば大した事はない。あのような痛みは痛みのうちに入らぬ。それに初体験の未知故の怖さも、ルイーザの体にいる時に経験済みだ。今更、何とも思わなくとも不思議ではないだろう!」




 何故だ? 言い訳する度にドツボにハマっている気がするぞ。だが、本当の事だ。私は人よりも痛みに強い。破瓜の痛みなど認識する弱い痛覚など持ってはおらぬ。実際、痛くなどなかったしな! くそっ……。




「そ、それに……私が淫乱なのではない! ルキウスが巧み過ぎるのが悪いのだっ! だから、嫌なのに、どうしようもなく感じでしまうのだ!」
「ほう……」



 ハッ! 私、今何と言った? 今、とんでもなく恥ずかしい事を言ったような……。



 ルキウスは嘲笑を浮かべながら、私の顎を掴んだ。私は己の言ってしまった事に消えたくて仕方がないのに、ルキウスはわざわざ目を合わせてくる。逸らす事すら許してはくれぬ。



「も、もう良い。離せ。私は寝るぞ! ルキウスだって、寝たいと言っていたではないかっ! だから、寝るぞ!」
「気が変わった。今宵もどうしようもなく感じさせてやろう。好きなだけ乱れてみせろ」
「っ! なっ、なっ、い、いやだ! やめろっ、ルキウス!」



 私の抵抗などないもののように、ルキウスは私の寝衣を脱がし、裸にした。いつもいつも、私だけ、裸だ。ルキウスはシャツの前や寝衣をはだけさせても、脱ぐ事はない。
 それはいつ何があっても対応しやすいようにだろうか……。確かに裸よりは服を着ていたほうが動きを取りやすいが……。


 だが、気に入らぬ……。



「いつもいつも私だけ裸なのは嫌だ! ルキウス、其方も脱げ!」


 私がルキウスの衣を引っ張るとルキウスは私の両手を頭の上で拘束し、耳に舌を這わせながら、体を指でツーっとなぞった。



「あっ、っぅ! んんっ、やめっ」


 耳に響く水音と何とも言えない感覚に、私は体をしならせ、力が抜けて、容易く抵抗すら出来なくなってしまうのが何とも情けない事だ。




 ルイーザの体も、私の体も、いつでもルキウスに翻弄され、容易く体を開いてしまう。それが嫌で堪らないのに、ルキウスが上手すぎるせいか、私の抵抗などあってないようなものだ。




「ひっ、まっ……そ、それ…ぁひっ、やめ……んんっ……あっ……待て、ああっ!」



 ルキウスに乳首を舌で転がされ、時には焦らすように乳輪を、ねっとりと舐められ、私は体をビクビクと震わせてしまっていた。
 いつのまにか両手は自由になっていたが、私はルキウスを押し返さずに、しがみついてしまっていた。




 ルキウスの手が舌が、私をどうしようもなく翻弄するのだ。情けない……情けないが拒めない。




「ひゃ、ッ! んっ……ああっ、んんぅ……待てっ、ソコはっ……ああっ、んんあっ、っぅ」



 ルキウスが私の体を反転させ、背中を舐め、赤い痕を散らしながら、胸を弄られ、内股を撫でられると、私はシーツを掴みながら、ひっきりなしに、はしたない声をあげ、シーツに蜜を滴らせ濡らしてしまっていた。




「まだ、触っていないのにココは愛液を滴らせ、内股をつたい、シーツに染みを作るほどだ」
「いやっ、違っ……っ! あっ、あああ!!」


 淫乱と耳元で囁かれ、クリトリスをひと撫でされただけで、私は達してしまった。
 これでは、私が淫乱だという事を認めてしまったみたいで、屈辱なのに、私は力なくベッドに突っ伏し、腰だけを上げて、何とも恥辱にまみれた格好で、荒い息を繰り返していた。




「クッ、これは……。其方は優しく抱かれるのも好みだが、罵られるのも好みだったとはな」
「ハ……ッ、ハァ、ッ……ッ、ふ、っ……違う……罵られるのは嫌だ……でも、ルキウスが触るから……」



 私が息を整えながら抗議すると、ルキウスは嘲笑混じりに笑いながら、では次は優しく抱いてやろうと言った。




「待っ、待て! まだ早っ……っああ!」



 ルキウスは、優しくすると言いながら、正常位の体勢になり、私のナカへ慣らす事なく突き入れた。それなのに、私の体は容易くルキウスをのみ込んでしまった。




「これだけ濡らしていれば大丈夫だ」
「そっ、そんなっ……ひあっ、ああっ……ひぅ、やっ、それ……やめっ、ああっ、駄目だ、ひあっ、ああっ、嫌だっ……んんぅ」




 ルキウスが律動を開始し、私の弱いトコロを責め立てると、私は甘い声をあげ、ルキウスにしがみつきながら背中に爪を立て、何度も達してしまった。



 ようやく解放されたのは空が白んできた頃で、その頃には私は何度もイカされ、ずっと体がビクビクと跳ね、もう訳が分からず、気持ち良いのが止まらなくて、力なく政務へと向かうルキウスを見つめていた。






 暫くして怠い体を、ようやく起こし、疲労回復の試作品でも飲もうかと思い、フラフラと研究部屋に行くと、試作品が丸ごとなくなっていた。


「さては、ルキウスだな」



 くそっ、せめて1本くらい残していく優しさはないのか……。いや、ある訳がない。辛い過去に触れ、少しは歩み寄れたかと思うても、ルキウスにとったら大した事などないのだろうな……。まあ、あやつの性格が捻じ曲がっているのも問題なのだが……。



 その後もルキウスとの関係は一進一退のようなものだった。優しくしてくる時もあれば、この前のように剣を交えてのやり取りになり、私だけが大怪我を負わされる事もある。


 はぁ、どうすれば……もう少し歩み寄り、暴力や剣をふるわれる事がなくなるのだろうか……。どうすれば私の快適な城生活はやってくるのだろうか……。



 はぁ、ルキウスのクズ。馬鹿。暴君。破綻者。愚か者。
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