鬼畜皇子と建国の魔女

Adria

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After Story

13.ルドヴィクの恋②

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「ずっと気になっていたのだが、ルキウスは皇帝の部屋を使わないのか?」


 私の疑問にルキウスが一呼吸置いたあと、目を通していた書類を机に投げ置いた。



「……使わないのではなく、この部屋は其方との思い出があったのでな……離れられなかっただけだ」


 ルキウスが寂しそうな顔をして、私の頬を撫でたから、私の心臓がドキリと跳ねてしまった。



 ルキウスはこの20年、この部屋で私との時間を思い起こしては……寂しい思いをしていたのだろうな……。



「それにこの部屋はルイーザの部屋とも繋がっているのでな」
「うむ。では、皇帝の部屋と繋ぎなおすか?」
「……そのような事が出来るのか?」
「当たり前だ! 私が繋いだのだから出来るに決まっているだろう」



 私がしたり顔で胸を張ると、ルキウスは何やら考え込み始めた。



 何だ? 何だ?
 私は変な事を言っただろうか?



「ルキウ……」
「では、繋げるならルイーザの部屋ではなく皇后の部屋と繋げろ」
「えっ!? そのような事をして良いのか?」



 正直なところ、全ての皇帝と皇后の夫婦仲が良い訳ではないだろうし、勝手に繋げたら後々、恨まれないだろうか……。



「繋げると其方の研究部屋が広くなるぞ」
「よし! やろう!」



 その後、ルキウスは眠る時は同じ部屋ではないと絶対に嫌だと駄々を捏ねるので、仕方がないからそうしてやろうと思う。
 私も今更、ルキウスが隣にいないとよく眠れぬからな……。



 なので、私はルキウスの望み通り、皇帝の部屋と皇后の部屋を繋げることにした。
 繋げたい部屋を念頭に置きながら、魔力を流すと、空間がぐにゃりと歪み、バタンという音と共に扉が出現した。



 ルキウスとルイーザの部屋は本棚の裏に隠し扉と通路を作り、ひっそりと繋げていたが、此処は堂々と繋げようと思う。



「ルドヴィカ、ドアもいらぬ」
「む? そうか?」



 私はルキウスのリクエスト通り、まるで続きの間のように開口部を大きく取り、繋げ直した。



「こんなものか?」
「上出来だ」


 すると、ルキウスは満足そうに笑い、私の腰を抱いた。


 だが、いずれルドヴィクに部屋を譲る時は戻さないと……叱られそうだ……。



「では、後は引っ越しだな。研究用の器具を移さねば……あ、ルイーザのバルコニーから薬草も……」



 実はバルコニーの薬草たちも、ルキウスが世話をしてくれていたので、荒れたりせず無事なのだ。感謝だな。



「待て。庭園に温室を作ってあるので、薬草はそこに移せ」
「温室!?」



 温室って温室か? えっ? 本当に?


 その後、私が温室温室と呟いていたら、ルキウスが温室へと案内してくれたので、私はスキップをしてついて行った。



「うわぁ、感動だ」


 そこには大陸中の薬草が集められていた。


 私が感嘆の声をあげながら、温室内を見て回ると、見たこともない薬草が沢山あって、私は舞い上がるほどに嬉しかった。見るだけでも、とても楽しいな。幸せだ。




「これが薬草のリストだ」
「ルキウス、ありがとう! 嗚呼、嬉しいぞ! 愛している!」


 私が喜びのあまり、ルキウスに飛びつくと、ルキウスは抱きついている私の腰にグッと力を入れ、耳元で感謝は体で示せと言ったので、私は途端に顔が熱くなり、後ろに飛びのいた。



「そ、其方……恥ずかしげもなく……」
「何故だ? 感謝しているのだろう? では、今から寝所へ行こうか?」
「っ!? 馬鹿者! 誰が行くか! 部屋の引っ越しが先だろう?」
「そんなものは後で良い」
「ちょっ、待て! 此処は温し……っ! 待っ、あっ!」


 ルキウスは私を温室の奥まで連れて行き、薬草の鉢や自生させている薬草で見えないのを良い事に私の手を壁につけさせ、立ったまま尻を突き出させ、擦り付けてきた。



「ルキ、ウスッ……ばっ、待て……あっ! 胸を、揉むなっ……っ! やっ、擦るなっ……ああっ、やめっ」
「擦られたくないなら挿れて下さいとねだれ」
「んんっ! あっ、やっ……っぅ!」



 ルキウスは私に擦り付けながら、胸を揉み、耳元でそう囁いた。
 そして、私はルキウスに散々、温室で犯されてしまった……。






「ふむ、此処にベッドを入れるか……」
「は? 何の為に……」
「其方を抱く為だ」


 馬鹿だろう。ヤル事しか考えていないのか……この馬鹿者は……。



 どうせなら、すぐ薬草を煎じたり出来る様に机や研究用の実験器具を入れてくれ……。









 その後、部屋の移動の指示を出しているルキウスを眺めながら、私は女官長と話をする事にした。


 ルキウスが、私の研究に必要な物に気遣ってくれるので、私は安心して任せられる。ふふん、ルキウスも落ち着いたものだ。あのクズさも、なりを潜めているし。




「ねぇ、女官長。この前のデートはどう思いました?」
「ルドヴィク様とのですか?」
「ええ」


 何故、私の事ではないのに、私はこんなにもドキドキしているのだろうか……解せぬ。



「ルドヴィク様は……優しい方ですね。でも、私などより他に相応しい方がいると思うので、早く現実を見て下さればと思います」
「気づいていたのですか?」
「ええ、勿論です」



 まあ、ルドヴィクは分かり易いからな。バレていても仕方がないのだろう。
 という事は、敢えて気づかぬフリをして、躱していたのか……。



「……陛下は、貴方をルドヴィクの側室にと考えているみたいですけれど……。ルドヴィクは、貴方を正妃に迎えたいそうです。それを聞いても駄目ですか?」
「皇命が下れば逆らう事は難しいのですけれど、もし私の意思を聞いてくださるのなら、私はこのまま女官長としてお仕えしていきたいです……ルイーザ様……私がお仕えしたい方はルドヴィク様ではなく、ルイーザ様なのです」
「女官長……」


 感動だ……ルドヴィクには悪いが素直に嬉しいな。



「では、きっぱりとルドヴィクに引導を渡してやって下さい」
「ですが……」
「そうでなければ、諦める事が出来ず、ずっと期待してしまいます」
「……分かりました。ルイーザ様が、そう仰るのでしたら……」



 ついでに、男としても皇太子としても頼りなさ過ぎるので、もっとしっかりしろと喝を入れてやってくれとも頼んでおいた。



 幼き頃より、恋慕の情を持っている相手から、喝を入れられれば、もう少し背筋が伸びるだろう。



 その後、女官長はルドヴィクにハッキリと、男としても主人としても見られないと伝えたようだ。



 主人としてもとは……仮にも未来の皇帝に、少々酷な気もするが……。



「セレーナ……ならば、努力をする! 男としても皇太子としても一人前になるので、その時はもう一度考えて欲しい」
「いいえ。私がお仕えしたい方はルイーザ様……皇后陛下のみです。ルドヴィク様は、ルドヴィク様だけの方を見つけて下さい」
「セレーナ……」



 ルドヴィクの縋るような目が……。
 うう……心が痛いな……。だが、ここはグッと堪え、ルドヴィクを見守らねば……。



「私、今のルドヴィク様のような頼りない方は嫌いですよ。どうか、未来の皇帝としてご立派に正道を行かれて下さい。そうすれば、女官長として貴方に仕えても良いかもしれません」
「…………そうか。今の僕は嫌い…………が……んば、るよ」




 女官長は終始ニコニコしていたが、ルドヴィクは顔面蒼白だった。最後の頑張るなんて、歯切れが悪くて聞こえづらかったしな……。その後、色々と女官長と話をして、何やら前を向く気になれたようで、私は安堵した。



 やはり、好きな者からの言葉は一番響くのだろうな。




「めでたし。めでたしだな」
「悪趣味な……また覗いていたのか? 次は何だ? 猫か? 蜘蛛か?」
「……女官長の髪飾りだ」



 すると、ルキウスは呆れて物が言えぬといった顔で私を見た。



 だって、女官長が見ていても良いと言うから……つい……甘えてしまったのだ。とても気になるし……。




「其方は何にでもなれるのか?」
「えっ!? あ……まあ、本来は生きている物にしか変化へんげせぬが……今回は特別だな」



 全く動かぬのは面倒なので、大抵は蜘蛛などの虫に変化へんげする事が多いかもな。


 すると、ルキウスが私の頭を小突いたので、私がルキウスをジトッと睨むと、突然手を引っ張られ、部屋の執務机に向かっていたルキウスの膝に乗せられてしまった。




「な、な、何を……?」
「品位に欠ける行動をしたのだ。仕置きをせねばな」
「えっ!? だ、だが、結果としては悪くなかっただろう? ルキウスだって、私のおかげで把握出来た訳……だし……」
「私は放っておけと言った筈だ。首を突っ込んだ挙句、覗き見とは……品位に欠けるとは思わぬか? 一度体に教えこまねば、其方には分からぬようだな」


 え? え? 何故だ?


「ちょっ、やめっ……ルッ、キウス……待っ」



 その後、ルキウスの上に乗せられたまま犯され、次は執務机の上にうつ伏せにされ、後背位でも犯された。



 何故だ? 気になるのだから少しくらい首を突っ込んでも良いだろう?
 私は見ていただけだ。別に邪魔をした訳ではないのだぞ。




 だが、私はこの時予測してなかった。
 ルドヴィクが、突然あんな事を言い出すなんて……。
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