鬼畜柄の愛撫シリーズ 番外編

Adria

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51.晩餐会のドレス(ジュリア視点)

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「晩餐会!?」

 俺たちは、あの後他愛無い話をしたりしながら、結局皆が帰ってくるまで、一緒に眠ってしまっていた。寝るとかなり元気になった気はする。


 晩餐会ってあれだよな。夕食の時間に、正餐ディナーを一緒に食べるやつだよな。


「そうなの。その出席の為のドレスをあちら側で用意して下さるらしいので、もう起き上がれるなら衣装部屋にドレスを選びに行きましょう」
「何でも好きなドレスをプレゼントして下さるらしいですよ。先程、ロブが仰っていました」


 シルヴィアちゃん……。
 俺と一緒に昼寝をしていた筈なのに、いつのまにロベルトを出迎えに行ったんだろう……。

 相変わらず……忠犬みたいだよな、シルヴィアちゃんって。


「うーん。私は良いです。部屋で休んでます」
「あら、そう? 残念ね……。なら、ドレスだけでも選びに行かない? こちらの国ならではのドレスもあるのよ。着物をモチーフにしたドレスとか、とても素敵なのよ」
「わたくし、十二単というものが着てみたいのです!」


 十二単? 着物をモチーフにしたドレス?
 正直なところ、元男の俺からしたら興味はない。ドレスコードさえ間違えていないなら、別に何でも良いんじゃねぇ? って思う。

 まあ、今回あちら側が用意するなら間違いはないだろう。


「ヴィアは、もう少し己を知った方が良いよ。十二単は見た目は華やかに見えるけど、20kgの重さがあるらしいよ。そんな服を着たら、君は潰れてしまうよ」
「潰れません! ロブこそ、わたくしを馬鹿にしすぎです!」


 20kg? 何だそれ……。
 この国の女の人って、正装するのも一苦労だな。
 だから、着物をモチーフにしたドレスとか出来るのかな? ドレスのほうが軽いし、幾分かは着やすそうだもんな。


 シルヴィアちゃんは、頬を膨らませながらロベルトに怒っているけど、ロベルトはそんなシルヴィアちゃんを気にせず、「ドレスは選んであげるよ」と言っていた。



「チェシリー、俺のドレスもチェシリーかルカが選んでおいてくれ。流石にまだ……晩餐会は出れないだろうし。出ても迷惑かけるだけだと思うから……」


 かなりマシになってきたとはいえ、こんな体調じゃ気を遣わせるだけだ。


「そう? なら、ルカ様にそう伝えておくわね」
「……そういえば、ルカは? まだ兄上といるんですか? ロベルトは、シルヴィアちゃんの様子を見に来たのに……」
「ごめんなさい。まだまだ忙しいのよ。だから、代わりに私が来たのだけれど……」


 まだまだ忙しいなら、どうしてロベルトは、って思うけど、ロベルトだもんな。何を置いてもシルヴィアちゃん己の欲を優先しそうだ。





 
 その後、ドレスを選んだ2人が戻って来た。
 チェシリーは落ち着いたモダンなデザインのドレスだった。孔雀の羽と、この国の国花である桜と菊を個性的にあしらった美しいドレスだった。
 乱菊の地紋に銀通しを織り込んだ生地に、金彩で華やかに柄付けされた和装ドレスは見ているだけで感嘆の息が出た。


「生地や柄は着物をモチーフにされているけど、カタチはそんなに普通のドレスと変わらないんですね」
「そうね。あの袖は慣れないと少し動きづらいと思ったの。だけれど、肌をより美しく艶っぽく見せてくれる美しいデザインだし、何よりこのぴったりとしたトップと、腰から伸びる帯の結びに似せているリボンが、とてもメリハリのあるすっきりとしたデザインで、とても気に入ってるの」


 チェシリーは、まさしく王妃に相応しい佇まいだった。
 ……それに引き換え、シルヴィアちゃんは可愛らしかった。この国のお菓子の千歳飴を、ついあげたくなるような可愛さだった。


「シルヴィアちゃんは、着物のような袖があるんですね」
「はい! この国の衣装は、この美しい袖も印象的ですもの!」


 シルヴィアちゃんの事だから、どこかに引っ掛けそうだけどな……。
 それに相変わらず、シルヴィアちゃんは青が好きだよな。兄上やロベルトの髪の色と同じ、鮮やかな青。

 シルヴィアちゃんが着ているドレスは、鮮やか青が目を惹くシフォンドレスだった。咲き乱れる牡丹の纏う花弁と澄み渡る透明感のある白地がより一層、青を引き立たせる。着物の袖のせいか、古典的な雰囲気とレトロな色彩がこの国の懐古の情を満たしているかのような美しく華やかなデザインだった。

 恐らくチェシリーが着たら、美しく華やかで繊細な輝きを放つドレスとなっただろう。


「可愛いな……」

 シルヴィアちゃんが着ると可愛いんだけど……何かが足りないのは色気と大人の女性の魅力だろうな。いまいち、お子様感が抜けないのが、やや残念ではあるな……。
 千歳飴……あげたくなるし……。あと、風呂入った時も思ったけど……貧弱だよな。良く言って華奢か?

 着物の合わせのデザインから見えるデコルテが何とも寂しい……。谷間どころじゃなく……デコルテすらも貧弱だ。シルヴィアちゃんって、本当に細いよな。細すぎるよな。美味しいもの好きなわりには、あまり食べないし……。もう少し太った方が、女性的な体つきになると思うのに……。

 ロベルトは……こんな華奢で可憐を絵に描いたような子を泣かせて……心、痛まないんだろうか……。……襲おうとした事のある俺が言うのもなんだけど……、ロベルトの為なら、っていう姿勢も一々健気だし……。あんな……過呼吸起こすような追い詰め方しないで、大切に守ってやれよ、と思うけどな。


「ジュリアちゃん。ジュリアちゃん。こちらがルカ様が選んだジュリアちゃん用のドレスなのです!」
「えっ? これが?」

 俺はシルヴィアちゃんの手から、ドレスを受け取った。心なしかチェシリーとシルヴィアちゃんがニヤニヤしている……気がする。

 ルカが選んだというドレスは、高級感のある艶消しサテンに被さるふんわりシフォンロングドレスだった。だけど……ウエストが黒でキュッと細く、そして着物の前を大胆に開いた胸元と背中のカッティングには豪華なビジューが施されていて……何とも魅惑的なドレスだ。
 俺の目のような空色の生地と、ピンクと白の華やかな牡丹が目を惹く美しいデザイン……シルヴィアちゃんと同じように印象的な着物の袖。

 ……スカートのスリットを着物の合わせに見立てて、そこから覗く脚は……さぞかし……妖艶な美しさを掻き立てるだろう、というような大胆なドレスだった。


「……え? 俺にこれを着ろと? 皆より……色々と見え過ぎていないか?」
「違うわ。ジュリアちゃんは、晩餐会に出ないじゃない? その上での、このドレスよ。『私以外の前では着ないように』とのご命令付きよ」
「…………つまり、何だ? やる用のドレスって事か?」
「……ジュリアちゃん、それはいくら何でも下品だわ」


 まあ、この程度の露出のあるドレスは……我が国の社交界でも珍しくはない。俺が遊んでいた貴婦人たちは、こういった露出の高いドレスを好んで着ていたな……。


「体調が良いなら、これを着てイチャイチャすれば宜しいのではないですか?」
「……シルヴィアちゃん。俺は……いえ、私は月のものが来ている時のシルヴィアちゃんに、容赦なく手を出すロベルトにドン引いてるから……その提案は却下だな」
「え? 何故引くのですか?」

 まあ、帰ってからだな。帰ってから、ルカの為に着てやろうっと。

 俺は首を傾げているシルヴィアちゃんをジト目で見ながら、「それが分からないから、ロベルトを調子に乗らせるんだよ」と心の中で呟いた。
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