鬼畜柄の愛撫シリーズ 番外編

Adria

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62.久しぶりの王宮(シルヴィア視点)

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「うう……腰が痛いのです」
「大丈夫かい? 無理をさせたね。すまない……」
「…………」

 そんな……ニコニコとつやつやしたお顔で言われても、謝られている気がしないのですけれど……。
 ……でも、まあ……最中「愛している」と何度も仰って下さったので、許して差し上げます。


 わたくしは、ふぅと息を吐きました。
 昨夜は……と言っても、ほんの1時間前までのロブは何やら余裕がなさそうでした。いつもは余裕綽々に、わたくしを虐めてくるのに……。

 何度も「愛しているよ」と言いながら、余裕なさげにわたくしを抱くロブには、こう胸が掴まれるものがありました。ドキドキとして、胸がキュウとなって……何だかとても嬉しかったのです。なので、許して差し上げます。


「ロブ……」

 抱っこをせがむ子供のように手を伸ばすと、優しく微笑んで抱き上げて下さるロブに、わたくしはふふふと笑みがこぼれました。


「ロブ……愛しています」
「僕も愛しているよ」

 朝の挨拶のように、愛の言葉を交わし、口付けをして頂いた後、わたくし達は身支度を整え、皆のもとへと向かいました。


「あ、あら……」

 わたくしもロブに抱き上げられていますけれど……ジュリアちゃんも、なのです。ジュリアちゃんも、ルカ様に……抱き上げられて、「最悪だよ。恥ずかしい……」とブツブツ文句を言っては、チェチーリア様に「ジュリアちゃん、言葉遣いには気をつけましょうね」と、嗜められています。

 ……きっと、わたくしと同じ……なのかもしれません。


「あら、シルヴィア様。シルヴィア様もなのですか? 一体……2人とも、昨夜は何をしたのですか?」
「シシー、駄目だよ。そのような無粋な事を聞いちゃ……」
「でも、フィリップ。いくら何でも……立って歩けないなんてことありますか? しかも、此処は他国なのですよ。ハメを外し過ぎではないかしら……」


 …………。
 そうですよね。陛下は冷静で理知的で紳士な方です。このようにチェチーリア様を抱き潰す、なんて事はないのかもしれません。


「うるさいよ、チェシリー。なんなら、兄上に頼んでやろうか? チェシリーにも、経験させてやれって」
「ジュリアちゃん? 突然、どうしてそのような事を言うの?」

 わたくしはジュリアちゃんの精一杯の反抗を聞き流しながら、少し反省致しました。

 ハメを外し過ぎ……。それは、わたくしも思います。
 一応、お仕事も兼ねているのに……。最後の最後に、このように抱き上げられたままだなんて、こちらの国の方は何と思うのでしょうか……。


 チラッと、こちらの国の方々を見ると、「仲睦まじいのは良いことですよ」と、陛下と話しておられました。嫌な顔ひとつ見せないところは、流石です。本当は呆れられていても、おかしくはないのに……。


「ヴィア。そのような不満そうな顔をしてはいけないよ。どうしても己で立ちたいなら、僕だって無理強いはしないけど?」
「……いえ、このままで良いです」

 腰が痛くて、体が怠くて、背筋を正して立つ自信がありません。
 だって、ほんの2時間ちょっと前くらいまでロブはわたくしのナカにいましたし……。


 でも、それはきっとジュリアちゃんもなのです。
 わたくしはニヤニヤと、ジュリアちゃんを見つめました。


「うるさい」
「あら? わたくし、何も言っていませんよ」
「顔がうるさい……」

 ジュリアちゃんは拗ねた顔をしながら、よく分からない言い掛かりをつけてきました。

 顔がうるさいって、どういうことですか?


「殿下、貴方は相変わらず加減というものが出来ないのですか? 母に一度、報告しましょうか?」
「うるさいよ。乳母には何も言わなくて良い。それに、姉上を見る限り、君も僕と同じではないのかい? 僕の事だけを棚に上げるのは、やめてくれたまえ」

 ルカ様とロブが、突然睨み合って、何やら言い合いを始めたので、わたくしとジュリアちゃんは、その雰囲気に慌てましたけれど、口を挟む事が出来ませんでした。

 何やら、怖いので……。


「2人とも、仲が良いのは良いことだけれど、お互いの姫を困らせてはいけないよ。ちゃんと見てごらん。困った顔をしているじゃないか……」

 陛下が、2人を咎めて下さったので、わたくしとジュリアちゃんはホッと致しました。

 その後、来た時と同じように陛下とロブの魔法で、大きな転移の魔法陣を使って、一度に皆で移動し帰ることになりました。


「あ! わたくし! わたくしの本! あの薄い本をなくしたままです」
「……もう諦めたまえ」
「え? ですが……」

 折角、頂いたのに……。

 でも、わたくしの都合に皆を巻き込む事は出来ません。
 色々あって探すのを忘れていた、わたくしが悪いのですから……。


「その本でしたら処分致しました」
「えっ!?」

 わたくしがショボンとしていると、ルカ様が突然とても驚く事を仰いました。

 捨てた? 何故ですか? わたくしの本なのに……。


「ルカ、何故そのような事を勝手にするのだい? いくら、ルカでもヴィアの持ち物への決定権はないよ。勝手な事をするのは許さないよ」
「恐れながら、シルヴィア様が読んで良い内容ではないと判断しましたので。殿下は、私に怒るより感謝したほうが良いですよ。貴方の名誉を守って差し上げたのですから」
「は? 何を言っているんだい?」

 ロブが怪訝な顔をしていますけれど、わたくしはルカ様の言っている事の意味が分かりませんでした。

 ロブの名誉……というのが分かりません。
 でも、わたくしが読んではいけない内容だったから、ルカ様はわたくしの目に触れないように処分したのですよね……。


 あ……!
 そうですよね。そのような本を持っていたら、夫であるロブに迷惑をかけてしまうかもしれません。妻であるわたくしがいけない本を持っていたら、ご迷惑ですものね。

 ルカ様はそれを危惧して下さったのですね。

「ありがとうございます、ルカ様。危うく、いけない本を所持して、ロブの顔に泥を塗るところでした」
「うーん。いや……たとえ、シルヴィアちゃんが卑猥な本持ってても、俺は別に構わ……いえ、私は別にロベルトの顔に泥を塗る事にならないと思いますけど? 第一、どんな本であっても、本人に確認なく処分したルカが今回は悪いと思いますよ」


 ルカ様は何も仰って下さいませんでしたが、代わりにジュリアちゃんが庇って下さいました。
 ジュリアちゃん、とても優しいのです。


 こうして、わたくしたちが話しているうちに、陛下はテキパキとあちらの国の方々に別れを告げ、転移の魔法陣でわたくし達を移動させて下さいました。
 話に夢中で、気がついたら見慣れた王宮だったので、わたくしとジュリアちゃんは驚いてしまいました。
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