びらん

ツヨシ

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姉が結婚して名字が変わったから、わからなかった。
これで謎が解けた。
どうしてあの女が岡田たまきの部屋に入居してきたのか。それはおそらく、姉の死因を探りに来たのだろう。
そのために死んだ姉の部屋に越してきたのだ。
桜井はそうとしか考えられなかった。
それほど姉思いの妹なら、本部の言うように仲間になってくれるだろう。
ただ一つ問題がある。
大場さやがこんな話を信じるかどうかだ。
ただ桜井は感じていた。
それは本部に対する信頼感だ。
桜井は本部を信じ、頼もしいと感じている。
それは大場さやも同じように感じてくれる可能性がある。
ここは本部を信じよう。
桜井がそんなことを考えているうちに、本部はもう部屋を出ていた。
桜井は慌てて後を追った。

大場が部屋にいるとチャイムが鳴った。
――誰だろう?
大場はそれなりに有名人だが、わざわざそのために訪ねて来る人はいない。
すると友達か? 
大場は覗き穴を見た。
するとそこには桜井健一が立っていた。
今やこのマンション一の有名人だ。
テレビにも何度か出ていて、この事件を調べていた大場はそれを全て見ていた。
――しかし、それにしても……。
相手の素性はわかるが、その相手がなぜ自分を訪ねてきたのかがわからない。
そこに不安が残るが、相手はこのマンションで妹を失っている。
そして自分はこのマンションで姉が死んだ。
となれば、この事件について何か話があるのかもしれない。
そう思い、大場はまだ一度も話したことがない男性を向かい入れるために、ドアを開けた。
「初めまして。桜井健一と言います。今日は大場さんに大事な話があってきました」
桜井は部屋に入るなりそう言った。
すると桜井の後ろからなんとあの女、マンションの入り口で、大場の部屋の近くで強い眼で大場を視ていた女が入ってきたのだ。
大場を視なくても十分不審者なのに、大場を軽くストーカーしている女なのだ。
大場は思わず一歩さがった。
それを見て桜井が優しく言い聞かせるように言った。
「大丈夫。怖がらなくてもいいよ。この人は僕たちの見方だ」
「味方?」
本部が言った。
「大場さん。あんた姉の岡田たまきの仇をうちたくはないか?」
「姉の……仇?」
それを見た本部は笑顔になった。
「いい。その目、その顔。実にいい顔だ」

本部の話がようやく終わった。
本部の話は桜井の時と基本的には同じだった。
大場の反応も桜井と同じような反応だったため、ほぼ同じ会話が繰り返されたのだ。
そいて大場はびらんを封印する仲間になることを決意していた。
桜井は思った。
これでここにいる三人がびらんを封印しようとしていることになる。
そんなことを考えていると、大場が本部に言った。
「私のことをじっと見ていましたけど、それはびらん封印の仲間にするためですか?」
本部が答える。
「それは違う」
「違う?」
「もともと親族というものは、霊的につながっているのだ。それが私には見える。おぬしたち二人のつながりは、普通の親族よりもずっと強かった。そして悲しいことに、悪霊とそれに殺された人との間にも霊的つながりができてしまうんだ。これはそれほど強くはないものだが。でもおまえたち二人を霊的に視ることで、細いが一本の線ができ、それが親族を通してびらんのもとにたどり着き、この事件がびらんのしわざであることがわかった。あんたを見ていたのは悪霊の正体を探るためだった。最初はな」
「最初は?」
桜井が聞いた。
本部が返す。
「さっきも言ったように、二人とその姉と妹には、普通の親族以上の強い霊的つながりを感じた。それに二人ともびらんに十分すぎるほど恨みがあるだろう。だからびらん封印の仲間にしようと思った。そう思ったのは、びらんの正体をつかんでからだな」
「そうですか」
今度は大場。本部が大場を見て言った。
「あと二人いる。全部で五人だ。五人でびらんを封印する」
「五人?」
「そう五人だ。昔びらんを封印した神主がいたと言っただろう。一人はその息子だ。父親ほどではないが、一般的な神主とは比べ物にならないほど霊力がある。だから十分に戦力になるだろう。もう一人はその息子。つまりびらんを封印した神主の孫にあたる男だ。これまた祖父どころか父親よりも霊力が弱いが、それこそ必死になってびらんの封印に協力してくれるだろう」
桜井が言った。
「実際にびらんを封印した人の息子と孫が参加してくれるんですね」
「そういうことだ。それとあんたたち二人とこの私。その五人でやる」
「いつやるんですか?」
と大場。
「正確には決まってないが、近いうちにやることになるだろう。二人とも、連絡先を教えてくれ」
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