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第一章 First love
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「やだ、なに人の顔をじーっと見て」
見つめすぎてしまったのか、母は胡散臭そうに顔をしかめた。
「なんかやっちゃった? 一緒にお父さんに謝ってあげようか」
「そんなんじゃないから」
いくつになっても子ども扱いする母を置いて、蜜は自宅へと足を向けた。玄関を開けようとしたら母の声が届いた。
「ねえ、誰かに送ってもらったの?」
見られていたのか。
いや、やましいことをしているわけじゃないから隠すことではない。でもなんとなく知られたくなかったなと思った。
「ん。先生に」
「え? 先生って学校の?」
「そう、ゆめのやのファンなんだって」
「じゃあ寄って行ってよ」
「今度そう言っておくね」
鍵を開けて玄関に入ったけど母はそれ以上は追及してこなかった。
あの人のいいところは素直で蜜の言うことをしっかりと信じてしまうことだ。
でもだからこそ母に嘘はつけないし、隠し事をしたくもなかった。蜜の嘘を知った時の傷ついた顔を見たくなかった。
自分の部屋へと戻ると、どっと疲れが出てきた。
いろんなことがあった一日だった。
教務室での出来事も遠いことのように思える。でもあれからずいぶん急に周防と近づいてしまった。
担任の先生というにはいろんなことを知ってしまった気がする。
人との距離を縮めるのが不得手な蜜には珍しいことだ。でもすごく楽しかった。
「あのひと、甘いものが好きなんだな」
どんぶりで大盛りの牛丼とか食べていそうなのに、まさか甘味好きとは。
ゆめのやに通っているということは、いつか出会っていたのかもしれない。全然気がつかなかったけど。
蜜は気分が高揚していて、ふわふわと夢の中にいるような心持になっていた。
担任が周防でよかったと思った。
もっとあの人を知ってみたい。
見つめすぎてしまったのか、母は胡散臭そうに顔をしかめた。
「なんかやっちゃった? 一緒にお父さんに謝ってあげようか」
「そんなんじゃないから」
いくつになっても子ども扱いする母を置いて、蜜は自宅へと足を向けた。玄関を開けようとしたら母の声が届いた。
「ねえ、誰かに送ってもらったの?」
見られていたのか。
いや、やましいことをしているわけじゃないから隠すことではない。でもなんとなく知られたくなかったなと思った。
「ん。先生に」
「え? 先生って学校の?」
「そう、ゆめのやのファンなんだって」
「じゃあ寄って行ってよ」
「今度そう言っておくね」
鍵を開けて玄関に入ったけど母はそれ以上は追及してこなかった。
あの人のいいところは素直で蜜の言うことをしっかりと信じてしまうことだ。
でもだからこそ母に嘘はつけないし、隠し事をしたくもなかった。蜜の嘘を知った時の傷ついた顔を見たくなかった。
自分の部屋へと戻ると、どっと疲れが出てきた。
いろんなことがあった一日だった。
教務室での出来事も遠いことのように思える。でもあれからずいぶん急に周防と近づいてしまった。
担任の先生というにはいろんなことを知ってしまった気がする。
人との距離を縮めるのが不得手な蜜には珍しいことだ。でもすごく楽しかった。
「あのひと、甘いものが好きなんだな」
どんぶりで大盛りの牛丼とか食べていそうなのに、まさか甘味好きとは。
ゆめのやに通っているということは、いつか出会っていたのかもしれない。全然気がつかなかったけど。
蜜は気分が高揚していて、ふわふわと夢の中にいるような心持になっていた。
担任が周防でよかったと思った。
もっとあの人を知ってみたい。
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