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第5章 シンデレラをプロデュース

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「そうねぇ~今度の休みにでも、タクトに言って、車を出して
 もらおうかしら?」
 ユリカさんがそう言うと、今度は素直にエラは大きくうなづく。
みんなでドライブ…
なんて、素敵な響きだろう。
何だかワクワクして、待ち遠しい気持ちになる。
さすがに馬車はないだろうけれど、とても気持ちが湧きたつのを
感じた。
こんな風に、誰かに自分のことを、相談したことは、今までに1度も
なかったかもしれない。 
しかもとても落ち着きがあって、きれいなユリカさんが、
「きっと、大丈夫よ」と微笑んでくれると、
もちろん自分は、男性ではないけれど、とてもうれしくなって、
気持が舞い上がってしまう。

「どんな服が、似合うかしらねぇ」
 思い出したようにそう言うと、ユリカさんは自分の持ってきたカバンを
開いた。
その中から服を取り出すと、エラにあててみる。
まるで自分の服を選ぶように、または自分の妹に対するように、
ひどく楽しそうに、持ってきたシャツやワンピースを、エラの身体に
あてて、離れたり近づいたりして、真剣にチェックをする。
「ところであなた…お金なんて、持ってないんでしょ?」
思いだしたように、突然言い出すので、エラは驚いて目を見張った。
それでも答えずに、黙っていると…
「そうよね」とユリカさんはニッコリと微笑み
「それじゃあ、しっかりとタクトに請求してやりましょ!」
ウィンクしながらそう言うと、
次々に、服を手に取る。
エラはあわてて頭を振り、
「そんな!私には、もったいないです!」
あわてて手を押し出すと、尻込みをする。
 そんなエラを見ていると、ユリカさんはいたずらっぽい顔になり
「ねぇ、タクトを驚かせてみない?」
楽しそうに言う。
「えっ?」
尻込みするエラを引っ張ると、じぃっと彼女を見つめる。
「あなた、よく見ると、とっても可愛い顔をしているのね!」
ニコニコしながら、ユリカさんはエラの顏をのぞき込む。
「きっと、似合うわよ!」
自信満々にそう言うと
「ちょっと来て!」
エラを外に連れ出すと、戸惑うエラを尻目に、むりやり車に乗せた。


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