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あれから男のいいなりになって身体を使われている。
抵抗する気力は会うたびに小さくなっていった。言うとおりにしていれば、性行為以上のことは求められないし、この時間が終わることを期待してしまうと、辛さと自己嫌悪と徒労感の波が押し寄せてくる。
何度、むせかえるような男の体液を身体の中と外で受け止めたか分からない。以前とは別のクリニックに通い、定期的な診察を受けながら、低用量の避妊効果がある薬を服用している。錠剤を飲むことへの抵抗は最初の頃ほどはなく、水際で私の身体と心を守れている気がした。
今週は仕事が順調に進み、金曜日の午後であるこの時間に半日休暇を取得することができた。
男から呼び出されるのは土曜日が多かったため、自分の好きなことをする時間にしようと決めた。買ったけど読めていなかった本や気になっていた映画を観に行こうと考えると足取りは軽くなった。
そんな思案をしていたのに、手にもっていたスマートフォンにメッセージの通知が届く。確認すると、差出人はいつものあの男。メッセージの内容はいつもと異なり、私への細かい指示に少しだけ困惑した。
「きたね。ちゃんと言われたものは買ってきたかな?」
男に指示されたものを近くのドラッグストアで買った私は、ビニール袋を手に男の家に入っていた。
「はい。買ってきましたけど……」
戸惑いながら袋ごと男に渡す。
「うん。大丈夫そうだね」
感謝の様子もなく、受け取った男は私に指示していたアルコールの缶を取り出し、飲み始める。
ふぅ、とアルコールに満足している様子だ。こうして飲料を買うよう指示されたのは何回かある。はじめは自分のお財布から男を満たすためにお酒を買うことで心がざわついたが、今では少し慣れてしまった。
ある程度、お酒を飲んだ男は「そしたら次は」と言って、袋から取り出したものを渡してくる。
「服を脱いだら、今日はこれをつけて」
渡されたのはアイマスク。
あまり時間をかけず、ドラッグストアで私が選んだもの。黒色で目元を隠し、周囲の光を遮断できるものだ。どうにも意図していることが分からない。
(いつもと違うことでもしたいの?でも、アイマスクをつけてすることなんて……)
先が読めないままでいるが、言われたとおりに服を脱いでいく。こういうことに以前ほどの抵抗はなくなっていた。
衣服を脱ぐ時、自分で脱ぐのは下着姿まで。ブラとショーツは行為中、男に剥がされてしまうが、身に着けている下着を観察するのが好きなようだった。私にも女性らしさが強調される部位を自分から曝すことへの羞恥だけは残っているようだった。
初夏に相応しい薄手の生地がするすると音を立て、身体を隠さなくなっていく。
最後にアイマスクをつける。視界を奪われることで得体のしれない空間にいるような感覚だった。なにをされるのか、最初に身体のどこに触れてくるのか心の準備ができない。
(いったい、なにをしたいの……今さら、顔を隠したところで……)
「そしたら、こっちに座って」
手を引かれ、いつも男との行為で私が横たわる位置に座らされる。瞼を閉じても開いても変わらない黒い世界に、下着姿でいることが落ち着かない。
「そのまま少し待っていて」
短く言い放ち、同じ空間から出ていく男の様子に困惑するばかりだった。
抵抗する気力は会うたびに小さくなっていった。言うとおりにしていれば、性行為以上のことは求められないし、この時間が終わることを期待してしまうと、辛さと自己嫌悪と徒労感の波が押し寄せてくる。
何度、むせかえるような男の体液を身体の中と外で受け止めたか分からない。以前とは別のクリニックに通い、定期的な診察を受けながら、低用量の避妊効果がある薬を服用している。錠剤を飲むことへの抵抗は最初の頃ほどはなく、水際で私の身体と心を守れている気がした。
今週は仕事が順調に進み、金曜日の午後であるこの時間に半日休暇を取得することができた。
男から呼び出されるのは土曜日が多かったため、自分の好きなことをする時間にしようと決めた。買ったけど読めていなかった本や気になっていた映画を観に行こうと考えると足取りは軽くなった。
そんな思案をしていたのに、手にもっていたスマートフォンにメッセージの通知が届く。確認すると、差出人はいつものあの男。メッセージの内容はいつもと異なり、私への細かい指示に少しだけ困惑した。
「きたね。ちゃんと言われたものは買ってきたかな?」
男に指示されたものを近くのドラッグストアで買った私は、ビニール袋を手に男の家に入っていた。
「はい。買ってきましたけど……」
戸惑いながら袋ごと男に渡す。
「うん。大丈夫そうだね」
感謝の様子もなく、受け取った男は私に指示していたアルコールの缶を取り出し、飲み始める。
ふぅ、とアルコールに満足している様子だ。こうして飲料を買うよう指示されたのは何回かある。はじめは自分のお財布から男を満たすためにお酒を買うことで心がざわついたが、今では少し慣れてしまった。
ある程度、お酒を飲んだ男は「そしたら次は」と言って、袋から取り出したものを渡してくる。
「服を脱いだら、今日はこれをつけて」
渡されたのはアイマスク。
あまり時間をかけず、ドラッグストアで私が選んだもの。黒色で目元を隠し、周囲の光を遮断できるものだ。どうにも意図していることが分からない。
(いつもと違うことでもしたいの?でも、アイマスクをつけてすることなんて……)
先が読めないままでいるが、言われたとおりに服を脱いでいく。こういうことに以前ほどの抵抗はなくなっていた。
衣服を脱ぐ時、自分で脱ぐのは下着姿まで。ブラとショーツは行為中、男に剥がされてしまうが、身に着けている下着を観察するのが好きなようだった。私にも女性らしさが強調される部位を自分から曝すことへの羞恥だけは残っているようだった。
初夏に相応しい薄手の生地がするすると音を立て、身体を隠さなくなっていく。
最後にアイマスクをつける。視界を奪われることで得体のしれない空間にいるような感覚だった。なにをされるのか、最初に身体のどこに触れてくるのか心の準備ができない。
(いったい、なにをしたいの……今さら、顔を隠したところで……)
「そしたら、こっちに座って」
手を引かれ、いつも男との行為で私が横たわる位置に座らされる。瞼を閉じても開いても変わらない黒い世界に、下着姿でいることが落ち着かない。
「そのまま少し待っていて」
短く言い放ち、同じ空間から出ていく男の様子に困惑するばかりだった。
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