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第十四章
splash 149
しおりを挟む「ふふ、真っ赤っか」
「~っ、あっ…!あんたねぇっ……!」
羞恥のあまり、口が悪くなってしまう自分を抑えられずに声を上げる。近くに居た女性陣は「ご馳走様です!」なんて、小声で意味の分からない事をボヤいているが、敢えて聞こえないフリをする。
「ごめん、怒っちゃった?」
「怒っ、怒りたくもなるってば!こんな、公衆の面前で間接キスなんて…」
擦りながら言うと、はた…と動きを止める伊織さん。「何」とジトッとした視線を送ると、彼は先程みたいに、頬をほんのり赤く染めて「いや…」と零す。
「気にする所、そこなんだな……って」
「………、………あっ!」
最悪だ。自爆してしまった。みるみる頭に血が上っていくのを感じながら「もう、何も喋らないでクダサイ」と、片言になりながらパフェを頬張る事に専念する自分。彼は初め、ポカンとしていたものの、ふんわり柔らかい笑みを浮かべると、同じ様に自分のを食し始めた。
「あぁ、伊織さんのせいでメンタルズタボロだ…」
「さっきのはシユン君、自分で言って自爆していたよね」
自分の一声にしれっといった感じで、さりげなくツッコむ伊織さん。キッと睨むが「おっと」と視線を逸らし、手にしてある飲み物をジュッと啜る。……デート始まってから一時間程経つが、俺、伊織さんに振り回されてばかりじゃ無いか……?一応だが、自分はsplashのクール担当だ。これ以上、素の自分を曝け出し過ぎて仕舞えば、後々羞恥で耐えられなくなる。
(そうなる前にーー…)
「キャー!!」
「!」
不意に悲鳴が耳に入って来た。かと思えば直ぐに遠ざかって行く声を耳で追いながら、声の先を追ってみると、ジェットコースターに乗った客達が楽しそうに手を上げているのが確認出来た。ニッと口角を上げて、「ねぇ、伊織さん」と服の袖を引っ張る。
「伊織さんさえ良ければ、あれ、乗りたいんだけど」
『シートベルトの着用お願いしまーす』
目の前に来たスタッフの女性がそう言いながら色んな客に誘導している。カチッと音を立てながらシートベルトを付けると、隣に座っている伊織さんが小声で『シユン君、ジェットコースター初めてだよね、大丈夫なの?』と聞いてくる。内心笑みを浮かべるのを抑えながら真顔で「大丈夫、乗ってみたかったし」とグッドを指でつくる。
(伊織さんみたいに甘い攻撃は出来ない……ならば、こっちも精神的にダメージを与えるジェットコースターで攻撃する!)
幸い自分は初めてではあるものの、こういうのには強い自信がある。謎の自信を抱えたまま「ほら、出発するよ」と伊織さんの手をペチペチ叩くと、彼は視線の先のドームを何とも言えない表情で見始めた。
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