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いじめ(2)
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今回は私、雨宮 花がお伝えします。
私は最近零ちゃんと凄く仲良くなれたと思ってる。一緒に登校して、中休みはお話して、一緒にご飯食べて、一緒に下校して…。前までは私なんかでいいのかなって思ってたけど、零ちゃんが『花がいい』って言ってくれたから、安心できた。だから、私は忘れてた。うちの学校に零ちゃんのファンクラブがあるのを。
私は零ちゃんのファンクラブの人の気に触ってしまった。そりゃ、あれだけ零ちゃんと一緒にいればそうだよね…。
ある日、今日も零ちゃんとお昼を食べようと思っていたら、隣のクラスの人から呼ばれて音楽室に行った。(零ちゃんになにも言わないで来ちゃったな…。心配してるかな…。)そんなことを考えながら、どうして呼ばれたのか不思議に思っていた。
すると、音楽室のドアが開いて何人か人が入ってきた。そのうちの一人が
『はい、こんにちは。雨宮 花さん?』
と言ったが、私は恐怖しか感じなかった。なぜならそういって話し掛けてきた子は中学時代に私の事を散々イジメていた『相原 心』だったから。トラウマが蘇って、勝手に足が震える。そんな私を気にせず相原は続けた。
『ねぇ、雨宮さぁ。久しぶりだね?高校デビューってやつ?名前聞かなきゃわかんなかったよ。それになんでアンタみたいなヤツが「零様」の隣にいるわけ?』
『れ、零様?零ちゃんのこと?』
私には相原がどうして零ちゃんの事を「零様」と呼んでいるのかわからなかった。
『はぁ?「零ちゃん」?なんでそんな馴れ馴れしい呼び方アンタがしてんの?誰の許可得て言ってんの?』
『きょ、許可もなにも零ちゃんがいいよって言ったんだよ…。友達だから…。』
普通話したいのに相原の威圧的な態度にどうしても声が震えてしまう。
『はぁ!?アンタが零様の友達!?調子乗んないでよ!零様の友達に相応しいのは「零様ファンクラブ」会長の私でしょ!?』
薄々気が付いていたけど、やっぱりそうだった。かつて私をイジメてた相原は零ちゃんをもう崇拝してるといってもいいファンクラブの会長だった。
そこから先は何が起こるのか容易に予想がついた。
『アンタみたいなヤツが零様の隣にいると零様が迷惑なの。零様から離れてくれる?』
『!零ちゃんはそんなこと思ってない!私は零ちゃんとずっと友達でいる!』
私はハッとした。やってしまった。この場だけでも素直に「はい。」と言っていれば済んだのに。口ごたえしてしまった。
『…はぁ?何言ってんの?私の言う事が聞けないの?』
『……。』
体が固まって声が出なかった。
『なんとか言えよ!クソが!』
そう言いながら相原は私を思い切り蹴り飛ばした。あぁ、また中学時代と同じ目に遭うんだ。私なんかが零ちゃんの友達になったからかな…。痛みに耐えながら朦朧とした意識のなかそんな事を考えてた。
その後も相原以外のファンクラブの会員達に暴力振るわれた。相原は顔に傷をつけるとバレるからって体だけを狙うようにしていた。正直ありがたかった。零ちゃんに心配はかけたくなかったから。
予鈴が鳴って相原は
『今日はこれだけにしといてあげる。金輪際零様と関わらないようにして。』
そう言い捨てて、音楽室から出ていった。
『…残念だけどそれはできない約束かなぁ。』
私はそう呟いてから立ち上がり、教室に戻った。
教室に戻ると零ちゃんが駆け寄ってきた
『花!どこに行ってたんですか?凄く心配しました…。…花?どうかしたんですか?』
やっぱり心配かけちゃってたな。でも、零ちゃんと一緒いられるならこれぐらいどうってことない!
『…!なんでもないよ!大丈夫!ごめんね、一緒に食べれなくて、中学時代の友達と話が盛り上がっちゃって…。』
少し辛い言い訳かなと思ったけど零ちゃんは
『…そうですか。いえ、大丈夫ですよ。花が大丈夫なら。明日は一緒に食べましょう?』
そう言ってくれた。嬉しかった。
『うん!一緒に…。』
そこでチャイムが鳴って私達は席戻っていった。
でも、零ちゃんとの約束は守れなかった。私は毎日毎日相原に音楽室で暴力を振るわれた。
『なんで!私の言うことが聞けないの!あれだけ零様と関わるなって言ったでしょ!』
そういいながら私を蹴ったり殴ったりしてきた。
数日後のお昼休みにまた相原に呼ばれて、(また殴られるのかな…。)と思っていた。音楽室について投げ飛ばされやっぱり暴力を振るわれた。さすがに連日の暴力は苦しくて、辛くて、涙が流れていた。
すると突然音楽室のドアが勢いよく開いた。そこには息を切らした零ちゃんがいた。
『零ちゃん!』
私は驚いた。音楽室は教室のある棟とは別棟だし、さらに完全防音で音なんて聞こえないはずなのに零ちゃんは来てくれた。
『花!』
零ちゃんは私のもとへ駆け寄ってくれた。零ちゃんは初めてみる顔をしてた。怒りと焦りと後悔が混ざった様な顔。零ちゃんは謝りながら私にハンカチを貸してくれて血が出てる部分に当ててるように言った。すると相原が
『れ、零様!初めまして!私零様のファンクラブの会長を務めさせて頂いてる、相原 心と申します!お会いできて光栄です!』
今迄していた事をまるでなかったかのように礼儀正しい挨拶を零ちゃんにしていた。それを聞いた零ちゃんは初めて聞くような低い怒りのこもった、けれど静かな声で
『花に何をしたんですか…。』
と相原に言った。相原はまるで悪気のないように
『はい!零様に迷惑をかける害虫を排除していました!』
と笑顔で答えた。
『…そうですか。花が私に迷惑をかけている害虫に見えましたか…。それはそれは、眼科に行ったほうがよろしいのでは?それとも脳外科ですかね?』
ゾッとするくらい怖い、けれど綺麗な声と、絵なんじゃないかと疑いたくなるような笑顔で零ちゃんはそう言った。相原は
『じ、事実でしょう?ソイツがいるせいで零様の優雅な昼食が、騒がしいただの女子高校生のお昼に変わってしまう!そんなの零様にとって迷惑極まりないじゃないですか!』
その言葉を聞いた零ちゃんは完全に堪忍袋の緒が切れた様だった。
『いい加減にして下さい!少し大人しく聞いていれば、花のことを「害虫」だの「ソイツ」だの…。花は貴女の様な人が傷付けて良いような人間じゃないんですよ!「零様ファンクラブ」?でしたっけ?それの会長が貴女ですか?不愉快極まりないですね。勝手に人をイメージで決めつけて。私の友達というだけで花を傷付けて。貴女たちは何がしたいんですか?私には到底理解が出来ません。する気もありませんが。こんなことして何になるんです?私を慕ってくれるのは嬉しいですよ?ですが、私の大事な人を傷付ける意味がわかりません。私を「慕っている人」の集まりなのではないのですか?その「零様ファンクラブ」とやらは。』
『し、慕っているからこそ!零様に相応しくない人間を零様のそばから排除しているのです!実際零様にはソイツは相応しくないですよ!地味だし、弱いし、可愛くもないし。ソイツなんかより私の方がよっぽど相応しいと思いませんか!?』
私は前に似たような事を言われたことを思い出した。私は確かに零ちゃんに相応しい友達じゃないと思う。相原の言ってる事は正しい。でも…。私は…。零ちゃんと友達でいたい…。何度「釣り合ってない」って言われても、いくら「相応しくない」って言われても私は零ちゃんのそばにいたい…。理由なんかわかんないけど…。それだけ零ちゃんが好きだから。大事だから。 私は頭の中でそんな風に考えていた。すると零ちゃんは
『どの口が「私の方が相応しい」なんて言っているんですか?寝言は寝てから言ってください。勝手に人の事を決めつけて、自分のくだらない理論で人の大事な人を傷付けるような人が、どうして「私の方が相応しい」なんて言えるんです?人を悲しませるような事しか出来ないような人なんてこちらから願い下げです。隣に立って笑い合うなんてもってのほか。知り合いにすらなりたくないですね。』
『なっ!』
零ちゃんの辛辣な言葉に相原は言葉を無くしていた。そんな様子を気にすることなく零ちゃんは続けて言った。
『それと、私は「自分に相応しい・相応しくない」で友達を選んでる訳じゃないですよ。そんなくだらないことしません。私が花と一緒にいるのは私が「そばにいて欲しい」から、「一緒に笑い合いたい」から、です。私は花が「友達を辞める」と言い出さない限り、花と友達でいますよ。私から花を遠ざけるなんてことは絶対にしません。そんな簡単に切れるような友情なんて私は欲してません。花ならずっと切れないような絆を私と結んでくれると思っています。』
『……。呆れた…。そっちの方がよっぽどくだらないじゃん。憧れた「零様」がこんな普通なヤツとか萎えたわ。もういい。アンタに興味なくなったし、ソイツは元からただのサンドバッグとしか思ってないし。もうアンタらには関わんないから。じゃ、帰る。』
『誰が帰っていいと言ったんですか?』
零ちゃんは冷たい声で言った。
『は?なんなの。もうアンタらに用ないし。』
『へぇ。自分がした事を悪いとも思ってないんですね。その曲がりきった精神逆に尊敬しますよ。…花に謝りなさい。今すぐに。』
『なんで?言う事聞かなかったソイツが悪いんでしょ。謝る意味がわかんないわ。』
『…ホント曲がりきってますね。いいから謝りなさい。謝らない限り花が許しても私が許しません。』
『ホント偽善者ってヤだわー。そんなやつ庇って何になるわけ?別放っておけば…。』
『御託はいいので、優しく言ってる内に謝りなさい?それとも、怒られ足りませんか?』
零ちゃんの声に私までゾクッとして恐怖を感じた。相原も同じだった様で少し間をおいてから
『…すみませんでした。…もうしません。』
『おや、やれば出来るじゃないですか。最初からそのぐらい素直だったら良かったんですけどねぇ?』
『…チッ。帰ろ。』
相原とその取り巻きたちはようやく素直に帰っていった。いまだに床に座り込んでいる私に零ちゃんは
『大丈夫でしたか!?他に何かされたことはありませんか!?酷く痛むところはありませんか!?』
珍しく慌ててる零ちゃんに少し戸惑いながらも
『大丈夫だよ!ごめんね…。こんなことになっちゃって…。』
『何を言ってるんですか!謝るのはこちらの方です!もっと早くに気付いてあげられていれば良かったのに…。遅くなって本当にごめんなさい。』
『大丈夫!大丈夫!…ありがとうね。助けに来てくれて…。本当に嬉しかった。』
『助けるに決まってるじゃないですか。花は私の一番「大事な人」なんですから。』
『…うん。そうだね。私も零ちゃんが私の一番「大事な人」だよ。』
二人でそう言い合いながら笑い合った。怪我をして辛かったはずなのに零ちゃんの言葉で辛さなんてどこかに飛んでいったみたいだった。
その後保健室で手当てをしてもらってから一応相原たちの事を先生に伝え、二人で「今までのように」話ながら帰っていった。ただの日常が凄く愛おしく感じた。私はこれからも零ちゃんの一番でいて、零ちゃんも私の一番で居続けるんだ。
私は最近零ちゃんと凄く仲良くなれたと思ってる。一緒に登校して、中休みはお話して、一緒にご飯食べて、一緒に下校して…。前までは私なんかでいいのかなって思ってたけど、零ちゃんが『花がいい』って言ってくれたから、安心できた。だから、私は忘れてた。うちの学校に零ちゃんのファンクラブがあるのを。
私は零ちゃんのファンクラブの人の気に触ってしまった。そりゃ、あれだけ零ちゃんと一緒にいればそうだよね…。
ある日、今日も零ちゃんとお昼を食べようと思っていたら、隣のクラスの人から呼ばれて音楽室に行った。(零ちゃんになにも言わないで来ちゃったな…。心配してるかな…。)そんなことを考えながら、どうして呼ばれたのか不思議に思っていた。
すると、音楽室のドアが開いて何人か人が入ってきた。そのうちの一人が
『はい、こんにちは。雨宮 花さん?』
と言ったが、私は恐怖しか感じなかった。なぜならそういって話し掛けてきた子は中学時代に私の事を散々イジメていた『相原 心』だったから。トラウマが蘇って、勝手に足が震える。そんな私を気にせず相原は続けた。
『ねぇ、雨宮さぁ。久しぶりだね?高校デビューってやつ?名前聞かなきゃわかんなかったよ。それになんでアンタみたいなヤツが「零様」の隣にいるわけ?』
『れ、零様?零ちゃんのこと?』
私には相原がどうして零ちゃんの事を「零様」と呼んでいるのかわからなかった。
『はぁ?「零ちゃん」?なんでそんな馴れ馴れしい呼び方アンタがしてんの?誰の許可得て言ってんの?』
『きょ、許可もなにも零ちゃんがいいよって言ったんだよ…。友達だから…。』
普通話したいのに相原の威圧的な態度にどうしても声が震えてしまう。
『はぁ!?アンタが零様の友達!?調子乗んないでよ!零様の友達に相応しいのは「零様ファンクラブ」会長の私でしょ!?』
薄々気が付いていたけど、やっぱりそうだった。かつて私をイジメてた相原は零ちゃんをもう崇拝してるといってもいいファンクラブの会長だった。
そこから先は何が起こるのか容易に予想がついた。
『アンタみたいなヤツが零様の隣にいると零様が迷惑なの。零様から離れてくれる?』
『!零ちゃんはそんなこと思ってない!私は零ちゃんとずっと友達でいる!』
私はハッとした。やってしまった。この場だけでも素直に「はい。」と言っていれば済んだのに。口ごたえしてしまった。
『…はぁ?何言ってんの?私の言う事が聞けないの?』
『……。』
体が固まって声が出なかった。
『なんとか言えよ!クソが!』
そう言いながら相原は私を思い切り蹴り飛ばした。あぁ、また中学時代と同じ目に遭うんだ。私なんかが零ちゃんの友達になったからかな…。痛みに耐えながら朦朧とした意識のなかそんな事を考えてた。
その後も相原以外のファンクラブの会員達に暴力振るわれた。相原は顔に傷をつけるとバレるからって体だけを狙うようにしていた。正直ありがたかった。零ちゃんに心配はかけたくなかったから。
予鈴が鳴って相原は
『今日はこれだけにしといてあげる。金輪際零様と関わらないようにして。』
そう言い捨てて、音楽室から出ていった。
『…残念だけどそれはできない約束かなぁ。』
私はそう呟いてから立ち上がり、教室に戻った。
教室に戻ると零ちゃんが駆け寄ってきた
『花!どこに行ってたんですか?凄く心配しました…。…花?どうかしたんですか?』
やっぱり心配かけちゃってたな。でも、零ちゃんと一緒いられるならこれぐらいどうってことない!
『…!なんでもないよ!大丈夫!ごめんね、一緒に食べれなくて、中学時代の友達と話が盛り上がっちゃって…。』
少し辛い言い訳かなと思ったけど零ちゃんは
『…そうですか。いえ、大丈夫ですよ。花が大丈夫なら。明日は一緒に食べましょう?』
そう言ってくれた。嬉しかった。
『うん!一緒に…。』
そこでチャイムが鳴って私達は席戻っていった。
でも、零ちゃんとの約束は守れなかった。私は毎日毎日相原に音楽室で暴力を振るわれた。
『なんで!私の言うことが聞けないの!あれだけ零様と関わるなって言ったでしょ!』
そういいながら私を蹴ったり殴ったりしてきた。
数日後のお昼休みにまた相原に呼ばれて、(また殴られるのかな…。)と思っていた。音楽室について投げ飛ばされやっぱり暴力を振るわれた。さすがに連日の暴力は苦しくて、辛くて、涙が流れていた。
すると突然音楽室のドアが勢いよく開いた。そこには息を切らした零ちゃんがいた。
『零ちゃん!』
私は驚いた。音楽室は教室のある棟とは別棟だし、さらに完全防音で音なんて聞こえないはずなのに零ちゃんは来てくれた。
『花!』
零ちゃんは私のもとへ駆け寄ってくれた。零ちゃんは初めてみる顔をしてた。怒りと焦りと後悔が混ざった様な顔。零ちゃんは謝りながら私にハンカチを貸してくれて血が出てる部分に当ててるように言った。すると相原が
『れ、零様!初めまして!私零様のファンクラブの会長を務めさせて頂いてる、相原 心と申します!お会いできて光栄です!』
今迄していた事をまるでなかったかのように礼儀正しい挨拶を零ちゃんにしていた。それを聞いた零ちゃんは初めて聞くような低い怒りのこもった、けれど静かな声で
『花に何をしたんですか…。』
と相原に言った。相原はまるで悪気のないように
『はい!零様に迷惑をかける害虫を排除していました!』
と笑顔で答えた。
『…そうですか。花が私に迷惑をかけている害虫に見えましたか…。それはそれは、眼科に行ったほうがよろしいのでは?それとも脳外科ですかね?』
ゾッとするくらい怖い、けれど綺麗な声と、絵なんじゃないかと疑いたくなるような笑顔で零ちゃんはそう言った。相原は
『じ、事実でしょう?ソイツがいるせいで零様の優雅な昼食が、騒がしいただの女子高校生のお昼に変わってしまう!そんなの零様にとって迷惑極まりないじゃないですか!』
その言葉を聞いた零ちゃんは完全に堪忍袋の緒が切れた様だった。
『いい加減にして下さい!少し大人しく聞いていれば、花のことを「害虫」だの「ソイツ」だの…。花は貴女の様な人が傷付けて良いような人間じゃないんですよ!「零様ファンクラブ」?でしたっけ?それの会長が貴女ですか?不愉快極まりないですね。勝手に人をイメージで決めつけて。私の友達というだけで花を傷付けて。貴女たちは何がしたいんですか?私には到底理解が出来ません。する気もありませんが。こんなことして何になるんです?私を慕ってくれるのは嬉しいですよ?ですが、私の大事な人を傷付ける意味がわかりません。私を「慕っている人」の集まりなのではないのですか?その「零様ファンクラブ」とやらは。』
『し、慕っているからこそ!零様に相応しくない人間を零様のそばから排除しているのです!実際零様にはソイツは相応しくないですよ!地味だし、弱いし、可愛くもないし。ソイツなんかより私の方がよっぽど相応しいと思いませんか!?』
私は前に似たような事を言われたことを思い出した。私は確かに零ちゃんに相応しい友達じゃないと思う。相原の言ってる事は正しい。でも…。私は…。零ちゃんと友達でいたい…。何度「釣り合ってない」って言われても、いくら「相応しくない」って言われても私は零ちゃんのそばにいたい…。理由なんかわかんないけど…。それだけ零ちゃんが好きだから。大事だから。 私は頭の中でそんな風に考えていた。すると零ちゃんは
『どの口が「私の方が相応しい」なんて言っているんですか?寝言は寝てから言ってください。勝手に人の事を決めつけて、自分のくだらない理論で人の大事な人を傷付けるような人が、どうして「私の方が相応しい」なんて言えるんです?人を悲しませるような事しか出来ないような人なんてこちらから願い下げです。隣に立って笑い合うなんてもってのほか。知り合いにすらなりたくないですね。』
『なっ!』
零ちゃんの辛辣な言葉に相原は言葉を無くしていた。そんな様子を気にすることなく零ちゃんは続けて言った。
『それと、私は「自分に相応しい・相応しくない」で友達を選んでる訳じゃないですよ。そんなくだらないことしません。私が花と一緒にいるのは私が「そばにいて欲しい」から、「一緒に笑い合いたい」から、です。私は花が「友達を辞める」と言い出さない限り、花と友達でいますよ。私から花を遠ざけるなんてことは絶対にしません。そんな簡単に切れるような友情なんて私は欲してません。花ならずっと切れないような絆を私と結んでくれると思っています。』
『……。呆れた…。そっちの方がよっぽどくだらないじゃん。憧れた「零様」がこんな普通なヤツとか萎えたわ。もういい。アンタに興味なくなったし、ソイツは元からただのサンドバッグとしか思ってないし。もうアンタらには関わんないから。じゃ、帰る。』
『誰が帰っていいと言ったんですか?』
零ちゃんは冷たい声で言った。
『は?なんなの。もうアンタらに用ないし。』
『へぇ。自分がした事を悪いとも思ってないんですね。その曲がりきった精神逆に尊敬しますよ。…花に謝りなさい。今すぐに。』
『なんで?言う事聞かなかったソイツが悪いんでしょ。謝る意味がわかんないわ。』
『…ホント曲がりきってますね。いいから謝りなさい。謝らない限り花が許しても私が許しません。』
『ホント偽善者ってヤだわー。そんなやつ庇って何になるわけ?別放っておけば…。』
『御託はいいので、優しく言ってる内に謝りなさい?それとも、怒られ足りませんか?』
零ちゃんの声に私までゾクッとして恐怖を感じた。相原も同じだった様で少し間をおいてから
『…すみませんでした。…もうしません。』
『おや、やれば出来るじゃないですか。最初からそのぐらい素直だったら良かったんですけどねぇ?』
『…チッ。帰ろ。』
相原とその取り巻きたちはようやく素直に帰っていった。いまだに床に座り込んでいる私に零ちゃんは
『大丈夫でしたか!?他に何かされたことはありませんか!?酷く痛むところはありませんか!?』
珍しく慌ててる零ちゃんに少し戸惑いながらも
『大丈夫だよ!ごめんね…。こんなことになっちゃって…。』
『何を言ってるんですか!謝るのはこちらの方です!もっと早くに気付いてあげられていれば良かったのに…。遅くなって本当にごめんなさい。』
『大丈夫!大丈夫!…ありがとうね。助けに来てくれて…。本当に嬉しかった。』
『助けるに決まってるじゃないですか。花は私の一番「大事な人」なんですから。』
『…うん。そうだね。私も零ちゃんが私の一番「大事な人」だよ。』
二人でそう言い合いながら笑い合った。怪我をして辛かったはずなのに零ちゃんの言葉で辛さなんてどこかに飛んでいったみたいだった。
その後保健室で手当てをしてもらってから一応相原たちの事を先生に伝え、二人で「今までのように」話ながら帰っていった。ただの日常が凄く愛おしく感じた。私はこれからも零ちゃんの一番でいて、零ちゃんも私の一番で居続けるんだ。
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