最強魔王様(笑)

かーにゅ

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魔王と勇者

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魔王と勇者。対となる者。しかし…片方がおかしいともう片方はどうなるだろう?

「おい魔王!!」

扉を勢いよく開ける勇者。

「ぴゅっ!!た、たしゅけてぇぇ!!」

豪華な大理石で出来た椅子に座っていた子供は涙を流しながら必死に椅子から降りようとする。

「ま…まおう?」

首を傾げる賢者。

「あら、魔王様。どうされましたの?お腹でも空きました?」

新たに現れる魔王軍幹部。

「…え…?ここ…魔王城の最高階ですよね…?」

辺りを見渡す聖女。




この世界の魔王は少し変わっている。魔王の見た目は人間でいう幼児程度。しかし中身は…0歳のまだ何も知らぬ赤子同然なのだ。先代魔王が倒された際、世界が歪み、勇者と魔王の発生する時間軸が変わってしまったのだ。

「ひっく…えぐっ…しゃうらぁ…」

「魔王様。平気ですわ。あれはただのゴミですの」

「…え…あの…魔王…なのか…?」

「にゃんてこと言うのにゃ!!正真正銘の魔王様にゃ!!」

「魔王様…可愛い…」

「そうでしょう!?人間にもわかる人がいたとは…」

「魔族…だよな…?あの…極悪非道の…」

変わっているのは魔王だけではない。魔王周辺の魔族全て。…まぁ魔界全てだ。

「…しゃ…シャウラさんでしたっけ…?私も魔王様を抱っこした…」

「人間ごときに抱っこは早いですわ!!なでなでで我慢なさい!!」

「そうだにゃ!!シャニャだってまだほっぺちゅうまでしか許可貰ってにゃいのにゃ!!」

そして魔王側に即落ちした聖女。

今代の魔王の特質は…『魅了』。

くりくりとした大きな瞳はキラキラと輝き、小さな鼻は思わずぷにっと押したくなってしまうほど可愛らしい。

他にもぷにぷにほっぺやぷるぷるの唇、天使の輪の出た髪、幼児特有のもみじのような手などなど。

あげだすと切りがない。

「ま、魔王様。私は聖女のカルミラです」

「かるみら…?」

「そ、そうです!!」

「かるみら。かわーいね」

「魔王様の方が可愛らしいです!!」

「そうですわ。魔王様、貴方様は世界一、可愛いんですのよ?」

「えへへ。ぼく、かわいい?」

「「「「はい!!」」」」

カオス。

「…俺…極悪非道の魔王を討伐しに来た…勇者だよな…?」

「…えぇ…国王陛下のご命令で…」

「…あれ…極悪非道に見えるか?」

「…見えません。虫も殺せないかと」

「だよな…」

戸惑う勇者パーティ。といっても聖女の抜けた、勇者、賢者、魔法士の3人だけだが。

魔法士はというと割と序盤から固まっている。

「魔王様。そろそろおやつの時間ですわ」

「さっさとゴミを片付けておやつにするのにゃ」

「シャウラさん、シャニャさん。ゴミではなく勇者パーティです。そして彼らにはもう戦意はありません。放っておいてもいいかと思います」

「それもそうですね。下手に血を流して魔王様のお目汚しをするよりも放っておいてこのまま通りがかる魔族の餌にしてしまいましょう」

「おやつ!!…んにゅ?おりれない…」

魔王様はというと、小さな悪魔のしっぽのついたおしりをふりふりしながら懸命に椅子から降りようと努力していた。

しかし椅子の高さは1.2m程。

降りれたとしても足がつかず、転んでしまうことは明確だ。

「魔王様、私が抱き上げてさしあげましょうか」

「うにゅ。はしゅば、だっこ」

「かしこまりました」

傍に控えていた魔族に抱かれた魔王は幸せそうな顔で魔族にすりすりとその柔らかなほっぺを擦り付けていた。

「…俺…この仕事おりて…村に帰ろうかな」

「私も…」

「……はっ。俺は夢を見ていたの……か……」

再び固まる魔法士。

何故ならば…聖女があちら側にいた事。

この聖女と魔法士、出来ているのだ。その関係はつい3ヶ月前から。

「魔王様、私にも抱っこさせてください」

「んにゅにゅ。…しゃうら、いーい?」

「ダメですわ。いくら魔王様の可愛さのわかる人族だとしても何をされるか分かったものじゃありません」

「そう…ですよね。私は聖女ですから…触れたものを浄化してしまいますから」

「あら、魔王様は全く穢れていませんわよ?」

「「「「え?」」」」

何故ならば、この魔王、まだ生まれたばかりだからだ。発生したのは勇者が来るほんの1週間前。今日までずっと甘やかし続けられて育った生後1週間の幼児である。

「だから人族の用意する聖剣とか意味無いのにゃ」

「ただの切れ味のいい剣ですからね。というより知らなかったんですか?」

「「「「…知りませんでした」」」」

「魔王様が生まれてから魔界は変わりましたのよ?」

「人族に手を出すこともにゃいし」

「人族と交流を持つものも増えています」

「それでも魔王様を討伐するというのなら相手しますわよ?」

この3人。各魔族の族長なだけ、今の魔王様よりかなり強いのである。

夢魔族、シャウラ。

猫人族 ケットシー、シャニャ。

悪魔族、ハシュバ。

そして魔王様は吸血鬼族である。…血の飲めない吸血鬼である。

「この世界は全て魔王様のもの。魔王様が戦わないというのなら魔族は全員それに従います」

「理性のにゃい魔獣とおにゃじにしにゃいでほしいにゃ」

「そうですわ。一体私たちが何をしたと?」

「「「「…何もしてません」」」」

それどころか最近は魔界からの輸出物で人族の国は発展してきているのだ。

この勇者達を送り出した国王の考えは…

魔界から輸出される優れた品物が欲しい→でも数が少ない→魔王を討伐すれば実力主義な魔族は自分に従うようになるのでは?

短絡的思考である。

そもそも魔族の実力主義な考え方は1部だけである。魔王はそれに当てはまらぬ存在。どんなものであろうと魔王は魔王なのである。

「…いらないですわね」

「おまえら帰れにゃ」

「私はここに残ります。国王陛下に伝えておいてください」

「「「え、あ…」」」

聖女を除いた勇者パーティは強制転移された。

「さて、おやつにしましょう。聖女さん、魔王様を可愛がるというのなら歓迎いたしますわ」

「ありがとうございます」











極悪非道な人族の王とただ愛らしいだけの魔王の話である。
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