2 / 6
その後の魔王様
しおりを挟む
「魔王様こちらですわ」
「ん…まって…うまくでき…ふぷっ」
魔王様は必死に動かしていた羽を止めてしまい床に落ちた。
「飛べなければ擬態しても動けませんわよ?」
「らってぇ…」
「わたくしのお手本を見ていたでしょう?魔王様は悪魔と同じ立派な羽と尾をお持ちなのですから練習すれば必ず飛べるようになりますわ」
「もうやらぁ…おやちゅ…おやちゅたべよぉよぉ…」
「そうですわね…おやつにしてしまいましょうか」
両手をあげて喜ぶ魔王様。可愛い。翼と尾を上手く隠すことの出来ない魔王様のために作られた専用の服。可愛らしく尖った黒い角。もはや吸血鬼よりも見た目は小悪魔に近い。
「んにゅ?しゃうらぼくのことかわいいっていった?」
「いいえ。ですが魔王様はたいへん可愛らしいですわ。それは常日頃思っていますもの。あら?魔王様は心を見る力もあるのかしら」
「ありあとー」
自重しなければ…今代の魔王様は世界を超える聴力をお持ちのようだ。
「ぼくね、ちをのむのがんばる」
「まぁ…無理なさらなくてもいいのですよ?」
「ううん。ぼくもしゃうらのことまもりたい!!かるみらも、しゃにゃも、はしゅばも…みんなも!!」
「まぁまぁまぁまぁ!!」
「どうしたのにゃ?シャウラ」
「魔王様がわたくし達を守るために血を飲む決断をなされたのですわ!!早く、新鮮なものを用意しなければ!!」
「初めてにゃらどの種族がいいのかにゃ…」
「同じ吸血鬼族…はダメですわね。今は権力争いで忙しいのでしたわ」
「シャウラさん?シャニャさん?どうしたんですか?」
そこへ人間側から魔王側へと寝返った聖女カルミラが現れた。
「…カルミラにゃら…ちょうどいいにゃ」
「そうですわね。ちょっとカルミラさんこちらに」
「えっ?え?」
そのままシャウラと共に近くの部屋へと入っていった。
「んにゅ?」
「魔王様、シャニャと一緒におやつ食べようにゃ」
「あい!!ぼくね、シャニャにおしゃかなくっきーあげるのー」
「ありがとうにゃ。にゃら、シャニャは魔王様にほわほわくっきーあげるにゃ」
「ほわほわくっきー!!」
ほわほわくっきーとは、魔王城の調理番が腕によりをかけて作った魔王城の庭にしかない木の実、別名魔王様の実を使ったクッキーである。
その実は不思議なことに魔王様が触れると増殖し、そして一瞬で完熟する。
物凄く甘い。そしてクリーミーであり、ほんの僅かな酸味も含む。
「お待たせ致しましたわ」
ことん、と机の上に子供用のコップが置かれた。(魔界特製、絶対に割れず、汚れず、こぼれない最高級のコップである。柄は可愛くデフォルメされたコウモリだ)
「新鮮な血ですわ」
「魔王様、がんばってにゃ」
「無理はいけませんよ」
「うにゅ」
そっと両手でコップを持ち、少しだけ口をつけた。
「ぅえ…」
「あぁ!!そんな…吐きそうなほど無理しなくとも…」
「やだっ!!ぼくも、ぼくもつよくなるの!!」
「「「(強くなるのは血を飲むからじゃない…)」」」
「んきゅ、ごきゅ…っぷ。のめた!!」
「おめでとうございます!!」
「よかったにゃ!!」
「これで毎晩熱を出すこともな…」
「ぷぇぇ…」
全部吐き出した。
「…ですよね」
「けほっけほっ」
「魔王様。お口ふきふきしましょうね~」
「うぅ…ぼくも…ぼくもつよくなるのぉ…」
カチャ、とドアが開き食堂に入ってきたのは…首元に包帯を巻いたカルミラ。
「…にゅ?かるみらけがしてるの?」
「なんでもありません。…え?」
カルミラは見てしまった。
白いテーブルクロスを汚す赤い液体。それは魔王様の口元にも。
自身の血を…魔王様が飲み込めていないことに気づいてしまった。
「う…うぅ…わたし…もっと体調管理がんばりますぅ…」
「…しばらくの間はお願いします」
「ううぅ…」
「はにゅ?」
首を傾げるのは魔王様ただ1人。
血を飲むことで健康体になれる吸血鬼。だが、魔王様は血を飲めない。その弊害として毎晩微熱程度の熱を出す。翌朝には下がるのだが…熱が出ている間魔王城はてんやわんや。仕事?そんなもんできるか!!の状態になる。
魔王様は…まだそれに気づかない。
「ん…まって…うまくでき…ふぷっ」
魔王様は必死に動かしていた羽を止めてしまい床に落ちた。
「飛べなければ擬態しても動けませんわよ?」
「らってぇ…」
「わたくしのお手本を見ていたでしょう?魔王様は悪魔と同じ立派な羽と尾をお持ちなのですから練習すれば必ず飛べるようになりますわ」
「もうやらぁ…おやちゅ…おやちゅたべよぉよぉ…」
「そうですわね…おやつにしてしまいましょうか」
両手をあげて喜ぶ魔王様。可愛い。翼と尾を上手く隠すことの出来ない魔王様のために作られた専用の服。可愛らしく尖った黒い角。もはや吸血鬼よりも見た目は小悪魔に近い。
「んにゅ?しゃうらぼくのことかわいいっていった?」
「いいえ。ですが魔王様はたいへん可愛らしいですわ。それは常日頃思っていますもの。あら?魔王様は心を見る力もあるのかしら」
「ありあとー」
自重しなければ…今代の魔王様は世界を超える聴力をお持ちのようだ。
「ぼくね、ちをのむのがんばる」
「まぁ…無理なさらなくてもいいのですよ?」
「ううん。ぼくもしゃうらのことまもりたい!!かるみらも、しゃにゃも、はしゅばも…みんなも!!」
「まぁまぁまぁまぁ!!」
「どうしたのにゃ?シャウラ」
「魔王様がわたくし達を守るために血を飲む決断をなされたのですわ!!早く、新鮮なものを用意しなければ!!」
「初めてにゃらどの種族がいいのかにゃ…」
「同じ吸血鬼族…はダメですわね。今は権力争いで忙しいのでしたわ」
「シャウラさん?シャニャさん?どうしたんですか?」
そこへ人間側から魔王側へと寝返った聖女カルミラが現れた。
「…カルミラにゃら…ちょうどいいにゃ」
「そうですわね。ちょっとカルミラさんこちらに」
「えっ?え?」
そのままシャウラと共に近くの部屋へと入っていった。
「んにゅ?」
「魔王様、シャニャと一緒におやつ食べようにゃ」
「あい!!ぼくね、シャニャにおしゃかなくっきーあげるのー」
「ありがとうにゃ。にゃら、シャニャは魔王様にほわほわくっきーあげるにゃ」
「ほわほわくっきー!!」
ほわほわくっきーとは、魔王城の調理番が腕によりをかけて作った魔王城の庭にしかない木の実、別名魔王様の実を使ったクッキーである。
その実は不思議なことに魔王様が触れると増殖し、そして一瞬で完熟する。
物凄く甘い。そしてクリーミーであり、ほんの僅かな酸味も含む。
「お待たせ致しましたわ」
ことん、と机の上に子供用のコップが置かれた。(魔界特製、絶対に割れず、汚れず、こぼれない最高級のコップである。柄は可愛くデフォルメされたコウモリだ)
「新鮮な血ですわ」
「魔王様、がんばってにゃ」
「無理はいけませんよ」
「うにゅ」
そっと両手でコップを持ち、少しだけ口をつけた。
「ぅえ…」
「あぁ!!そんな…吐きそうなほど無理しなくとも…」
「やだっ!!ぼくも、ぼくもつよくなるの!!」
「「「(強くなるのは血を飲むからじゃない…)」」」
「んきゅ、ごきゅ…っぷ。のめた!!」
「おめでとうございます!!」
「よかったにゃ!!」
「これで毎晩熱を出すこともな…」
「ぷぇぇ…」
全部吐き出した。
「…ですよね」
「けほっけほっ」
「魔王様。お口ふきふきしましょうね~」
「うぅ…ぼくも…ぼくもつよくなるのぉ…」
カチャ、とドアが開き食堂に入ってきたのは…首元に包帯を巻いたカルミラ。
「…にゅ?かるみらけがしてるの?」
「なんでもありません。…え?」
カルミラは見てしまった。
白いテーブルクロスを汚す赤い液体。それは魔王様の口元にも。
自身の血を…魔王様が飲み込めていないことに気づいてしまった。
「う…うぅ…わたし…もっと体調管理がんばりますぅ…」
「…しばらくの間はお願いします」
「ううぅ…」
「はにゅ?」
首を傾げるのは魔王様ただ1人。
血を飲むことで健康体になれる吸血鬼。だが、魔王様は血を飲めない。その弊害として毎晩微熱程度の熱を出す。翌朝には下がるのだが…熱が出ている間魔王城はてんやわんや。仕事?そんなもんできるか!!の状態になる。
魔王様は…まだそれに気づかない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】平民聖女の愛と夢
ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。
その国が滅びたのは
志位斗 茂家波
ファンタジー
3年前、ある事件が起こるその時まで、その国は栄えていた。
だがしかし、その事件以降あっという間に落ちぶれたが、一体どういうことなのだろうか?
それは、考え無しの婚約破棄によるものであったそうだ。
息抜き用婚約破棄物。全6話+オマケの予定。
作者の「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹が登場。というか、これをそっちの乗せたほうが良いんじゃないかと思い中。
誤字脱字があるかもしれません。ないように頑張ってますが、御指摘や改良点があれば受け付けます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる