最強魔王様(笑)

かーにゅ

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その後の魔王様

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「魔王様こちらですわ」

「ん…まって…うまくでき…ふぷっ」

魔王様は必死に動かしていた羽を止めてしまい床に落ちた。

「飛べなければ擬態しても動けませんわよ?」

「らってぇ…」

「わたくしのお手本を見ていたでしょう?魔王様は悪魔と同じ立派な羽と尾をお持ちなのですから練習すれば必ず飛べるようになりますわ」

「もうやらぁ…おやちゅ…おやちゅたべよぉよぉ…」

「そうですわね…おやつにしてしまいましょうか」

両手をあげて喜ぶ魔王様。可愛い。翼と尾を上手く隠すことの出来ない魔王様のために作られた専用の服。可愛らしく尖った黒い角。もはや吸血鬼よりも見た目は小悪魔に近い。

「んにゅ?しゃうらぼくのことかわいいっていった?」

「いいえ。ですが魔王様はたいへん可愛らしいですわ。それは常日頃思っていますもの。あら?魔王様は心を見る力もあるのかしら」

「ありあとー」

自重しなければ…今代の魔王様は世界を超える聴力をお持ちのようだ。

「ぼくね、ちをのむのがんばる」

「まぁ…無理なさらなくてもいいのですよ?」

「ううん。ぼくもしゃうらのことまもりたい!!かるみらも、しゃにゃも、はしゅばも…みんなも!!」

「まぁまぁまぁまぁ!!」

「どうしたのにゃ?シャウラ」

「魔王様がわたくし達を守るために血を飲む決断をなされたのですわ!!早く、新鮮なものを用意しなければ!!」

「初めてにゃらどの種族がいいのかにゃ…」

「同じ吸血鬼族…はダメですわね。今は権力争いで忙しいのでしたわ」

「シャウラさん?シャニャさん?どうしたんですか?」

そこへ人間側から魔王側へと寝返った聖女カルミラが現れた。

「…カルミラにゃら…ちょうどいいにゃ」

「そうですわね。ちょっとカルミラさんこちらに」

「えっ?え?」

そのままシャウラと共に近くの部屋へと入っていった。

「んにゅ?」

「魔王様、シャニャと一緒におやつ食べようにゃ」

「あい!!ぼくね、シャニャにおしゃかなくっきーあげるのー」

「ありがとうにゃ。にゃら、シャニャは魔王様にほわほわくっきーあげるにゃ」

「ほわほわくっきー!!」

ほわほわくっきーとは、魔王城の調理番が腕によりをかけて作った魔王城の庭にしかない木の実、別名魔王様の実を使ったクッキーである。

その実は不思議なことに魔王様が触れると増殖し、そして一瞬で完熟する。

物凄く甘い。そしてクリーミーであり、ほんの僅かな酸味も含む。










「お待たせ致しましたわ」

ことん、と机の上に子供用のコップが置かれた。(魔界特製、絶対に割れず、汚れず、こぼれない最高級のコップである。柄は可愛くデフォルメされたコウモリだ)

「新鮮な血ですわ」

「魔王様、がんばってにゃ」

「無理はいけませんよ」

「うにゅ」

そっと両手でコップを持ち、少しだけ口をつけた。

「ぅえ…」

「あぁ!!そんな…吐きそうなほど無理しなくとも…」

「やだっ!!ぼくも、ぼくもつよくなるの!!」

「「「(強くなるのは血を飲むからじゃない…)」」」

「んきゅ、ごきゅ…っぷ。のめた!!」

「おめでとうございます!!」

「よかったにゃ!!」

「これで毎晩熱を出すこともな…」

「ぷぇぇ…」

全部吐き出した。

「…ですよね」

「けほっけほっ」

「魔王様。お口ふきふきしましょうね~」

「うぅ…ぼくも…ぼくもつよくなるのぉ…」

カチャ、とドアが開き食堂に入ってきたのは…首元に包帯を巻いたカルミラ。

「…にゅ?かるみらけがしてるの?」

「なんでもありません。…え?」

カルミラは見てしまった。

白いテーブルクロスを汚す赤い液体。それは魔王様の口元にも。

自身の血を…魔王様が飲み込めていないことに気づいてしまった。

「う…うぅ…わたし…もっと体調管理がんばりますぅ…」

「…しばらくの間はお願いします」

「ううぅ…」

「はにゅ?」

首を傾げるのは魔王様ただ1人。

血を飲むことで健康体になれる吸血鬼。だが、魔王様は血を飲めない。その弊害として毎晩微熱程度の熱を出す。翌朝には下がるのだが…熱が出ている間魔王城はてんやわんや。仕事?そんなもんできるか!!の状態になる。

魔王様は…まだそれに気づかない。
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