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本編~4ヶ月目~
第84話~新店舗開店前日~
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~シュマル王国・エメディオ市~
~居酒屋「陽羽南」 リリン通り店~
その日を境に、僕の仕事は正直言って倍以上に増えた。
リリン通り店に勤務する人材の募集と並行して、そちらに融通する食材の卸業者との契約締結、酒屋との価格交渉。これをアース側とチェルパ側双方で、しかも歌舞伎町店での店長業務と並行してやる羽目になったのだ。
当然、社長の全面的なバックアップは受けているし、リリン通り店側の経理担当として転属が決まったミラセルマさんも非常に頑張ってくれた。歌舞伎町店の皆も、なんなら新宿西口店のスタッフも応援に来てくれて、すごく助かったのだが、それでも目の回るような日々だった。
エティやミラセルマさんを始めとした面々の送別会も済み、人員の選定や新規採用も完了し、いよいよ「陽羽南」リリン通り店のオープンを翌日に控えた、木曜日の夕方。
「……うん、よし」
僕は朝からリリン通り店の店内および店外の掃除と、テーブルや椅子の拭き掃除を終わらせて汗を拭っていた。
店長も、キッチン担当も、ホール担当も、全員決まっているし、必要な研修も受講してもらっている。食材や酒類は運搬済みで、冷蔵庫や冷凍庫の中は充分だ。製氷機の具合もフライヤーの温度も問題ない。
それでも、やっぱり僕のいた世界で、国で、オープンする僕達の店。どうしても細かいところが気になって仕方ない。
天井を見上げると、天窓から入る夕陽がキラキラと空気中のチリを輝かせている。気になるが、この辺がいいところかななどと考えていると、後方から声がかかった。
「いよいよですね、マウロさん」
「そうですね」
振り返った先にいた、作務衣に身を包んで頭に手ぬぐいを巻いた栗色の髪をまとめた人間の女性に、僕はそっと微笑みを返した。
シュマル王国最強のパーティー『八枚の翼』の召喚士、アランナ・レイヨン。リーダーのカルロッタを含む三人が冒険者として復帰することを決める中、彼女だけは冒険者を引退し、株式会社リンクスに属して飲食業に携わることに決めたのだ。
聞くに、元々酒場で働く両親を持ち、店舗経営の手腕には覚えがあったらしい。自分の店をいつか持ちたい、と思いつつリンクスで研修を受け、都内の店舗でも訓練を積み、この地位に抜擢されたのである。
と、キッチンでごそごそと動いていた黒い鱗の大柄な竜人が、のそっと起き上がってカウンター向こうからこちらを見てくる。
「おいマウロ、調理場の掃除と機材の最終チェック、問題なく終わったぞ」
「ありがとう、よかった」
そう話しながら姿を現したのは、アキレス・ジャラ。『黒刃のアキレス』の通り名を持つ、これまた国内でも指折りの冒険者である。それが、なんと調理スタッフとして就職だ。
予想だにしない就職希望に、僕は今ですら苦笑を禁じ得ない。その度にどつかれるから、始末に負えないというものだ。
「まったく、アキレスまでここで働きたいだなんて、どんな状況だよ」
「いいだろ、どうせ元々ギルドの酒場でバイトしてたのが、ここに職場が変わるだけだ。それにお前、俺の料理の腕は知ってんだろ」
ため息をつきながら声をかけると、先程までコンロ周りの掃除に使っていたクロスをふりふり、笑いながら返してきた。
確かに、アキレスの料理の腕前は僕もよく知っている。冒険者に喜ばれるような豪快で率直に旨い料理を作らせれば、僕も敵わなかったほどだ。おかげで担当する料理を分担できて助かっていたのも事実である。
口角を持ち上げて、僕はアキレスに頷いた。
「知ってる。僕も助かってたからね」
「だろ。てめぇのトコで出す料理のやり方は……ま、多少は身に付いたはずだ。まかせとけ」
言葉を返しつつ、二の腕に力こぶを作ってみせるアキレス。自信満々だが、彼も彼で然るべき研修は受けているのだ。期待させてもらうばかり。
と、同じくキッチンで冷蔵庫の確認をしていたウサギの獣人が立ち上がる。誰あろう、エティ・ジスクールだ。
「うん。期待してるわよ、アキレス」
「任せろよ、シスター。お前さんにも安心して食わせられるくらいのモンを、しっかり作ってやるさ」
声をかけられ、腰辺りに手を置かれたアキレスが、エティの耳に手の甲で触れる。
先日に父親であるバルトロメオ司祭との感動の再会を経て、マーキュリオ大聖堂のシスターとして復帰した彼女は、これまでホール担当だったところを調理担当に配置変更。アランナと共に調理場を取り仕切る人員がなかなか決まらない中、我こそはと手を挙げてくれたのだ。
「本当に助かるよ、調理スタッフの選定にはすごく難儀していたから」
「いいのよ、私もホールよりこっちの方が有り難いわ。お父様も『多くの人の手が触れる場所よりも、そちらの方が好ましい』ですって」
僕が微笑みを向けると、エティは大きな耳を振りながら首をかしげて笑った。確かにシスターという職業柄、みだりに酔客と接するのはとても良くない。司祭の心配も当然だ。
バルトロメオ司祭の恐ろしさと、これまでの狼狽具合と憔悴ぶりは、アキレスは特に最近まで見てきたのだ。やっと帰って来た愛娘に下手なことをしたらどうなるか、想像するだに恐ろしいという様子。
「おー、怖ぇ怖ぇ。司祭様にどやされないためにも、きっちり仕事しねぇとな」
「ふふ、そうね」
わざとらしく恐れるアキレスを見て、エティがくすくすと笑った。彼女としては自分の父親が知らぬ場所でこんな風に言われているのだ。笑う他ない。
苦笑しながらふと外を見る。窓の外の通りは徐々に暗くなり始めていた。そろそろ準備を終えなくてはならない。ポンポンと両手を叩きながら、僕はその場にいる面々に声をかけた。
「じゃ、明日のメニューにあるもので、事前の下ごしらえが必要なやつを済ませておこう。ピクルスの漬け込みも今のうちに。それが終わったら、窯のチェックも兼ねて炊飯だ」
「了解です!」
「はーい」
「へーい」
僕が呼びかけるや、アランナ、エティ、アキレスがそれぞれ動き出した。
アランナは冷蔵庫から鶏のむね肉を取り出してブライン液につけ、ジャガイモの皮を剥いて沸騰した鍋に落とす。エティはセロリやニンジンをカットして塩や砂糖、胡椒を加えた酢に漬ける。アキレスは冷蔵庫から鯛を取り出して三枚おろしにし、塩と酒を振り臭み抜き。
三人ともいい手つきだ。今日この場にいない他のスタッフも、事前に腕前や動きはチェックしているが問題ない。これなら僕がいなくても大丈夫だろう。
30分もすればほぼすべての工程が完了し、既に三人ともが使った調理器具の後片付けに入っていた。ちなみにメイドインジャパンの食器洗浄乾燥機も取り付け済みだ。電圧諸々の調整も済んでいる、さすがとしか言えない。
「マウロさん、鶏肉の下ごしらえとじゃがいもの下茹で、完了です」
「こっちも仕入れた魚の三枚おろしと塩振り、オッケーだ」
「ピクルスも仕込み終わったわ。塩加減も大丈夫……だと思う」
包丁やまな板を洗った三人がこちらを向く。そんな僕はキッチンに設置された巨大な鉄製の羽釜を前に、蓋の動く様子を見ていた。
彼らが作業をする前から浸水させていた新潟産のコシヒカリ。羽釜で炊くのは何気に初めてだったが、使い方や炊き方は事前に「こでまり」神楽坂店の高清水さんからしっかり聞いていた。
火を止め、蓋をそっと持ち上げる。甘いコメの香りが僕の鼻をくすぐった。
「うん、ありがとう。こっちも炊き上がった」
そう返して微笑みながら、釜の蓋を持ち上げると。ツヤツヤと輝かしい白ご飯が僕達の前に姿を現した。初めての釜での炊飯にしては上出来だ。見るからにおいしそうで、僕の後方から覗き込む三人も非常に嬉しそうだ。
「うわぁ……」
「いい香り……」
「すげぇな、コメって炊くとこんなツヤが出るのか」
三人が感嘆の声を漏らす中、さっさと十字にしゃもじを入れ、スムーズに天地返しをする僕だ。しゃもじを入れるたびにふわっと湯気が立ち、とても美味しそうでお腹が空いてくる。
ここまでやったら十分だろう。さすがに白飯だけで食べさせるわけにはいかない。しゃもじをエティに押し付けるようにして、僕は前掛けを締め直した。
「炊き上がりも問題なさそうだ。悪いけどお椀に四人分、よそっておいてくれるかな。僕はおかずを軽く仕込んでくる」
そのまま僕はさっさとカウンター前の作業台に立ち、手際よくキュウリとローズビート、木綿豆腐をカットし始めた。
キュウリとローズビートは乱切りにしたのを併せて酢と塩、ごま油で和えてナムルに。木綿豆腐は半分にカットして雪平鍋に入れて、めんつゆと天かすを加えて煮立てて温豆腐に。味噌汁は椀に味噌と豆腐を入れて、湯を注いでインスタント風に。
なんでもないようにパパっとおかずを仕込み始める僕を見て、ごはんをよそう三人は苦笑しきりだった。
「あーあ、結局マウロが率先してやっちゃってる」
「やっぱりお好きなんですね、この仕事が」
「ったく、明日からあいつ抜きで仕事しろってのか。不安だぜ」
そう話しながらも、三人はごはんをよそい、割り箸を出す手を止めることはない。
結局その後すぐに、何とも和風な夕食を食べながら、僕達は明日の新店舗オープンに思いをはせるのだった。
~第85話へ~
~居酒屋「陽羽南」 リリン通り店~
その日を境に、僕の仕事は正直言って倍以上に増えた。
リリン通り店に勤務する人材の募集と並行して、そちらに融通する食材の卸業者との契約締結、酒屋との価格交渉。これをアース側とチェルパ側双方で、しかも歌舞伎町店での店長業務と並行してやる羽目になったのだ。
当然、社長の全面的なバックアップは受けているし、リリン通り店側の経理担当として転属が決まったミラセルマさんも非常に頑張ってくれた。歌舞伎町店の皆も、なんなら新宿西口店のスタッフも応援に来てくれて、すごく助かったのだが、それでも目の回るような日々だった。
エティやミラセルマさんを始めとした面々の送別会も済み、人員の選定や新規採用も完了し、いよいよ「陽羽南」リリン通り店のオープンを翌日に控えた、木曜日の夕方。
「……うん、よし」
僕は朝からリリン通り店の店内および店外の掃除と、テーブルや椅子の拭き掃除を終わらせて汗を拭っていた。
店長も、キッチン担当も、ホール担当も、全員決まっているし、必要な研修も受講してもらっている。食材や酒類は運搬済みで、冷蔵庫や冷凍庫の中は充分だ。製氷機の具合もフライヤーの温度も問題ない。
それでも、やっぱり僕のいた世界で、国で、オープンする僕達の店。どうしても細かいところが気になって仕方ない。
天井を見上げると、天窓から入る夕陽がキラキラと空気中のチリを輝かせている。気になるが、この辺がいいところかななどと考えていると、後方から声がかかった。
「いよいよですね、マウロさん」
「そうですね」
振り返った先にいた、作務衣に身を包んで頭に手ぬぐいを巻いた栗色の髪をまとめた人間の女性に、僕はそっと微笑みを返した。
シュマル王国最強のパーティー『八枚の翼』の召喚士、アランナ・レイヨン。リーダーのカルロッタを含む三人が冒険者として復帰することを決める中、彼女だけは冒険者を引退し、株式会社リンクスに属して飲食業に携わることに決めたのだ。
聞くに、元々酒場で働く両親を持ち、店舗経営の手腕には覚えがあったらしい。自分の店をいつか持ちたい、と思いつつリンクスで研修を受け、都内の店舗でも訓練を積み、この地位に抜擢されたのである。
と、キッチンでごそごそと動いていた黒い鱗の大柄な竜人が、のそっと起き上がってカウンター向こうからこちらを見てくる。
「おいマウロ、調理場の掃除と機材の最終チェック、問題なく終わったぞ」
「ありがとう、よかった」
そう話しながら姿を現したのは、アキレス・ジャラ。『黒刃のアキレス』の通り名を持つ、これまた国内でも指折りの冒険者である。それが、なんと調理スタッフとして就職だ。
予想だにしない就職希望に、僕は今ですら苦笑を禁じ得ない。その度にどつかれるから、始末に負えないというものだ。
「まったく、アキレスまでここで働きたいだなんて、どんな状況だよ」
「いいだろ、どうせ元々ギルドの酒場でバイトしてたのが、ここに職場が変わるだけだ。それにお前、俺の料理の腕は知ってんだろ」
ため息をつきながら声をかけると、先程までコンロ周りの掃除に使っていたクロスをふりふり、笑いながら返してきた。
確かに、アキレスの料理の腕前は僕もよく知っている。冒険者に喜ばれるような豪快で率直に旨い料理を作らせれば、僕も敵わなかったほどだ。おかげで担当する料理を分担できて助かっていたのも事実である。
口角を持ち上げて、僕はアキレスに頷いた。
「知ってる。僕も助かってたからね」
「だろ。てめぇのトコで出す料理のやり方は……ま、多少は身に付いたはずだ。まかせとけ」
言葉を返しつつ、二の腕に力こぶを作ってみせるアキレス。自信満々だが、彼も彼で然るべき研修は受けているのだ。期待させてもらうばかり。
と、同じくキッチンで冷蔵庫の確認をしていたウサギの獣人が立ち上がる。誰あろう、エティ・ジスクールだ。
「うん。期待してるわよ、アキレス」
「任せろよ、シスター。お前さんにも安心して食わせられるくらいのモンを、しっかり作ってやるさ」
声をかけられ、腰辺りに手を置かれたアキレスが、エティの耳に手の甲で触れる。
先日に父親であるバルトロメオ司祭との感動の再会を経て、マーキュリオ大聖堂のシスターとして復帰した彼女は、これまでホール担当だったところを調理担当に配置変更。アランナと共に調理場を取り仕切る人員がなかなか決まらない中、我こそはと手を挙げてくれたのだ。
「本当に助かるよ、調理スタッフの選定にはすごく難儀していたから」
「いいのよ、私もホールよりこっちの方が有り難いわ。お父様も『多くの人の手が触れる場所よりも、そちらの方が好ましい』ですって」
僕が微笑みを向けると、エティは大きな耳を振りながら首をかしげて笑った。確かにシスターという職業柄、みだりに酔客と接するのはとても良くない。司祭の心配も当然だ。
バルトロメオ司祭の恐ろしさと、これまでの狼狽具合と憔悴ぶりは、アキレスは特に最近まで見てきたのだ。やっと帰って来た愛娘に下手なことをしたらどうなるか、想像するだに恐ろしいという様子。
「おー、怖ぇ怖ぇ。司祭様にどやされないためにも、きっちり仕事しねぇとな」
「ふふ、そうね」
わざとらしく恐れるアキレスを見て、エティがくすくすと笑った。彼女としては自分の父親が知らぬ場所でこんな風に言われているのだ。笑う他ない。
苦笑しながらふと外を見る。窓の外の通りは徐々に暗くなり始めていた。そろそろ準備を終えなくてはならない。ポンポンと両手を叩きながら、僕はその場にいる面々に声をかけた。
「じゃ、明日のメニューにあるもので、事前の下ごしらえが必要なやつを済ませておこう。ピクルスの漬け込みも今のうちに。それが終わったら、窯のチェックも兼ねて炊飯だ」
「了解です!」
「はーい」
「へーい」
僕が呼びかけるや、アランナ、エティ、アキレスがそれぞれ動き出した。
アランナは冷蔵庫から鶏のむね肉を取り出してブライン液につけ、ジャガイモの皮を剥いて沸騰した鍋に落とす。エティはセロリやニンジンをカットして塩や砂糖、胡椒を加えた酢に漬ける。アキレスは冷蔵庫から鯛を取り出して三枚おろしにし、塩と酒を振り臭み抜き。
三人ともいい手つきだ。今日この場にいない他のスタッフも、事前に腕前や動きはチェックしているが問題ない。これなら僕がいなくても大丈夫だろう。
30分もすればほぼすべての工程が完了し、既に三人ともが使った調理器具の後片付けに入っていた。ちなみにメイドインジャパンの食器洗浄乾燥機も取り付け済みだ。電圧諸々の調整も済んでいる、さすがとしか言えない。
「マウロさん、鶏肉の下ごしらえとじゃがいもの下茹で、完了です」
「こっちも仕入れた魚の三枚おろしと塩振り、オッケーだ」
「ピクルスも仕込み終わったわ。塩加減も大丈夫……だと思う」
包丁やまな板を洗った三人がこちらを向く。そんな僕はキッチンに設置された巨大な鉄製の羽釜を前に、蓋の動く様子を見ていた。
彼らが作業をする前から浸水させていた新潟産のコシヒカリ。羽釜で炊くのは何気に初めてだったが、使い方や炊き方は事前に「こでまり」神楽坂店の高清水さんからしっかり聞いていた。
火を止め、蓋をそっと持ち上げる。甘いコメの香りが僕の鼻をくすぐった。
「うん、ありがとう。こっちも炊き上がった」
そう返して微笑みながら、釜の蓋を持ち上げると。ツヤツヤと輝かしい白ご飯が僕達の前に姿を現した。初めての釜での炊飯にしては上出来だ。見るからにおいしそうで、僕の後方から覗き込む三人も非常に嬉しそうだ。
「うわぁ……」
「いい香り……」
「すげぇな、コメって炊くとこんなツヤが出るのか」
三人が感嘆の声を漏らす中、さっさと十字にしゃもじを入れ、スムーズに天地返しをする僕だ。しゃもじを入れるたびにふわっと湯気が立ち、とても美味しそうでお腹が空いてくる。
ここまでやったら十分だろう。さすがに白飯だけで食べさせるわけにはいかない。しゃもじをエティに押し付けるようにして、僕は前掛けを締め直した。
「炊き上がりも問題なさそうだ。悪いけどお椀に四人分、よそっておいてくれるかな。僕はおかずを軽く仕込んでくる」
そのまま僕はさっさとカウンター前の作業台に立ち、手際よくキュウリとローズビート、木綿豆腐をカットし始めた。
キュウリとローズビートは乱切りにしたのを併せて酢と塩、ごま油で和えてナムルに。木綿豆腐は半分にカットして雪平鍋に入れて、めんつゆと天かすを加えて煮立てて温豆腐に。味噌汁は椀に味噌と豆腐を入れて、湯を注いでインスタント風に。
なんでもないようにパパっとおかずを仕込み始める僕を見て、ごはんをよそう三人は苦笑しきりだった。
「あーあ、結局マウロが率先してやっちゃってる」
「やっぱりお好きなんですね、この仕事が」
「ったく、明日からあいつ抜きで仕事しろってのか。不安だぜ」
そう話しながらも、三人はごはんをよそい、割り箸を出す手を止めることはない。
結局その後すぐに、何とも和風な夕食を食べながら、僕達は明日の新店舗オープンに思いをはせるのだった。
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