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しおりを挟む建国祭のパーティー、来賓も招いた会場での失態に加えて今回の事件。王太子もとい我が国の醜聞は瞬く間に国境を超えた向こうまでも流れた。
「お嬢様、大丈夫ですか?お疲れでしょう」
アンシアの心配そうな声音に緩く頷く。もちろん彼女を殺すように差し向けたのは私だなんて妄言を信じる者は誰もいないけれど、提言がある以上調べなければいけない人間がいる。
「そうね……」
「まだ聴取は続くのですか?お嬢様は何も関係がありませんのに」
「本当に。けれど仕方がないわ」
事件の当事者であるはずの王太子は泥酔していて憶えてないとのたまうし、当日の二人の動向を探ろうにも出入りして酒を飲んだと思われる賭場自体が違法なもので、責任者は事件が発覚してすぐに逃亡したようだ。いまだに消息は掴めていないと聞く。
「どうしてあんな男を王太子に選んだのか……」
そもそもあれは現国王の実の息子ではない。子どもができなかったら国王夫妻のもとに引き取られた、王弟の息子だ。つまり甥っ子に当たるが──それで言うのなら王弟には息子が三人いる。どうして養子にしたのがよりにもよってあの愚かな男だったのか。
「我が家は何代も王妃を輩出している名家ではあるけれど、お父様も今回のことで目が覚めたかしら」
「お嬢様……」
そもそも私の母は反対していた。父はそれを黙らせる形で婚約を結んだそうだけれど、果たしてその対価は娘をあの愚か者に嫁がせることと釣り合っていたのだろうか。
例の件で忙しいのかまともに顔を見れていない父を思い浮かべながらリシアは深いため息を吐く。
「あれでも男爵令嬢、王太子が貴族の娘を殺したのだからどうしようもないわね」
「……お嬢様は本当に王太子殿下が酔った勢いで例の男爵令嬢を殺したとお思いなのですか?」
アンシアの言葉にまさかと鼻で笑う。
「豊穣祭で鶏を締め殺すこともできなかった人よ?酔っていたって人を殺すだけの度胸などないわ」
ですよね、と深く頷く彼女は私と王太子が婚約した頃からずっとそばで見守ってきてくれた。彼の馬鹿な失態も間近で見ていたし、腰の剣がレプリカだと気付いたのは彼女の方だ。
「私も元婚約者が人殺しとあっては外聞が悪いもの、もう一度、証言した男を調べるように進言したわ」
早く事態が収束して騒ぎが落ち着けばこの国から離れよう。もうしばらくは社交界から離れてゆっくりしたい、そう願っていたリシアの願いはまたもや崩れることになる。
「証言者の男が殺されたようです。それから、王太子殿下が今になって婚約解消はしないと仰せになりました」
事態はますます悪くなるばかりであった。
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