婚約破棄の翌日、彼女は亡くなったようです。

えんどう

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 手伝いはするものの闇雲に動く気はないともっともなことを言ったルイスに、ちょうどいい時間だからと庭園でのティータイムに呼び出した。
「王太子殿下の無実が前提で動くとしても、あまりに情報が少なすぎます。大体いくら考えなしでも一国の王太子たる人間がよくわからない場所で誰が淹れたかも分からない酒を口にするなんて……にわかには信じられません」
 たしかに王太子をよく知らない人間であればそんな都合のいい話があるかと鼻で笑うだろうが、あの男ならそういう状況でもおかしくないから頭が痛いのだ。
「ルイス、私は無駄な時間を過ごす気はないわ。確信できるものがあるから探しているのよ。あの夜にマリアンヌが他の誰と会っていたのか──それさえ分かれば今の手探り状態より一歩近付くわ」
「憲兵も動いているのでしょう?俺が一人で探すよりもそちらに任せたほうが早い気もしますが……」
「憲兵より先でないといけないの」
 私の勘は悪いことにばかり当たる。蜘蛛の子を散らすように賭場を手放し逃げたということは違法なだけでなくなにか都合の悪い事情を知っているに違いない。
「……もしも王太子殿下が無実だとして、お嬢様は一体誰が殿下に罪をなすりつけたとお考えですか」
 その目星がついているのかと窺ってくる彼に視線を落とす。実のところ、まったく分からない。何故なら私は王太子の婚約者であってもその交友関係を表面上でしか把握していなかったし、マリアンヌに関しては、あの夜までそういえばこんな女もいたなという程度だった。
「分からないのですね。それこそ取らぬ狸の皮算用では?お嬢様は例の被害者の彼女をよく知らないようですし、闇雲に犯人を探すだけ時間の無駄に思えますが」
 彼が言っていることは正しいけれど今だけは苛立ちを覚えてしまう。
「協力してくれるの?してくれないの?」
「命令されたことはしますが気は進みません」
「それなら黙って言う通りに動いて。こんなことは言いたくないけれど違法賭場で常連のような振る舞いをしていたそうだもの、一体いつからそういうところに出入りしていたかは知らないけれどろくな理由じゃないでしょう。ありがたいことに彼女は男爵家の令嬢だったしある程度の行動範囲や交友関係も絞れるはずよ」
 問題は憲兵や他の誰かよりも先にそれを知ること。彼女が何故死んだのか、どうしてあの夜にあの場所にいて、王太子を置いて誰に会いに行ったのか。
「それが解決するまで──私は殿下の婚約者として、ずっとここにいるわ」
「……あなたはそんなにもあの男が」
 言いかけたルイスが言葉を切る。続きを促したけれど彼は緩く首を振った。
「何でもありません。それでは俺なりに尽力します」
「えぇ、お願いね。何かわかればその都度報告をちょうだい」
「分かりました」
 頭を下げて立ち去った彼の後ろ姿が、いつか見たものと重なったような気がした。
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