婚約破棄の翌日、彼女は亡くなったようです。

えんどう

文字の大きさ
16 / 17

16

しおりを挟む


 裁判の前日、リシアは再び王太子と面会した。
「犯人の目星はついたのか?」
 せっかちにそう尋ねてくる王太子はどこか焦っているようにも感じた。父の話では、国王陛下が一度はお会いになったようだけれど、この様子を見る限り良い話はしなかったのだろう。
「いいえ。残念ですが」
「……マリアンヌはもう埋葬されたのか?」
「えぇ。男爵にお会いして場所を聞きましたので、私も行きましたが──そういえば先客がいました。ご存知ですか?ジャン・ハドソンです。マリアンヌ嬢とは面識があったようなのですが」
「ジャン・ハドソン?ハドソン伯爵家の次男か」
 名前を言えばすぐに思い当たったらしいが、彼は緩く首を振った。
「彼女と知り合いだったとは知らなかった。俺もあの男とは話したことがないしな」
「そうですか」
 別にジャンを怪しんでいたわけではないけれどなんとなく気にかかっていた。知らないというのならこれ以上なにか聞くこともない。それよりも、とリシアは少しだけ聞くのが億劫なことをこれから口にしなくてはならない。
「ところで殿下、お尋ねしたいことがあり今日も来たのですが」
「なんだ?」
「失礼なことだとは重々承知ですので……その……」
 どう切り出せばいいのか困っている私に彼は怪訝そうな顔をする。マリアンヌのことを調べているうちに分かった、結婚詐欺まがいのこと。それらをこの男が知っていたのかどうか。
「なんだ、はっきり言え」
 そう言われたのでそれならと頷く。
「マリアンヌ嬢にお金を渡したことはありますか?」
「なに?ないが、何故だ?」
 ない。それはつまり金銭的なやり取りがなかったということだ。
「本当ですか?たったの一度も、貸したことも?」
「ないに決まっているだろう。大体俺の使える金は国民から預けられた金も同義だ、いくら恋人であってもそう簡単に渡せるはずがないだろう」
 至極もっともなことではあるけれどこの男が言うとおかしく感じるのはどうしてだろうか。
「そうですか」
「──もしやマリアンヌが今までの交際相手から金を借りていたとか、そういう話か?」
 突然話の核心をつかれたので狼狽えてしまう。知っていたのか、と驚きを隠せなかった。
「ご存知だったのですか?」
「まぁ、それはな。彼女も自分が人に恨まれることをした自覚はあったようだし反省していた」
「反省って……」
 それならばお金を返すのが筋というものだ。賭場に使っておいてなにを、と私の疑問を汲み取ったのか、彼は擁護するように口を開いた。
「俺と出会う前の話だ。彼女なりに思うところがあったんだ、……これを勝手に話すのは気が引けるが」
 仕方ないと言いたげに王太子が話し始めたのは、私にはとても理解できないことだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

褒美で授与された私は王太子殿下の元婚約者

アズやっこ
恋愛
私が暮らすエーネ国は長い間隣国と戦続きだった。 長い戦を勝利に導いたのは一人の騎士。近い将来次期王宮軍騎士隊長になるだろうと噂されていた侯爵家次男のリーストファー副隊長。 この度の戦で右足を負傷し杖無しでは歩く事も出来ないと聞いた。 今私の目の前には陛下の前でも膝を折る事が出来ず凛と立っているリーストファー副隊長。 「お主に褒美を授与する。何が良いか申してみよ」 「では王太子殿下の婚約者を私の妻に賜りたく」 え?私? 褒美ならもっと良い物を…、爵位とか領地とか色々あるわよ? 私に褒美の価値なんてないわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

完結 私は何を見せられているのでしょう?

音爽(ネソウ)
恋愛
「あり得ない」最初に出た言葉がそれだった

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

処理中です...