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13,出会い[アルフレッド]
しおりを挟む初めて彼女を見たのは、親に連れられ行った城でのお茶会だった。貴族令息令嬢共に集まるその場所に、次男などまぁいなかったのだけれど。
「アルが行くなら俺も行く」
頑固な二つ上の兄がそう粘ったので、仕方なくアルフレッドも連れて行かれたのだ。
正直、人見知りが激しかった自分には地獄でしかなかった。自分を無理やり連れて行った兄はさっさと他の人と仲良くなり、お前も友達を作れと言い残して何処かへ行った。
帰りたいと思ったがどうすることも出来ず、誰に声をかけることも出来なかった。
人の声が雑音のように聞こえて、耳がおかしくなりそうだった。
母を探したけれど、王妃様と呼ばれていた人と話している。二人が話している間、来てはいけないと言われていた。
仕方がないので、ひっそりとテーブルから離れたところで蹲っていた時だった。
「貴方、体調が悪いの?大丈夫?」
その声が聞こえた瞬間、もう他の雑音は何も聞こえなかった。顔を上げると、立っていたのは、天使そのものだったのだ。
ここに来てから着飾っている女はたくさん見かけたけれど、その子ほど綺麗な子はいなかった。
まるで鈴のなるような声で自分に声をかけてきたという事実に、アルフレッドは心臓が爆発してしまうかと思った。
「…もしかして話せない?」
心配そうに眉を寄せられ、自分より少しばかり大きい手を頭を置いてきた。
「は、な…せる…」
なんとかそれだけ返すと、彼女はにっこりと笑った。
「私はシャルロット・フレージア。よろしくね」
シャルロット。この美しくて可愛らしい少女は、シャルロットというのだ。
頭に刻みながら、アルフレッドはのろのろと立ち上がった。
「…僕、は、…アル、」
「シャルロット」
アルフレッドの言葉を遮るようにやってきたのは、他でもない兄だ。
「あれ、アル?なんだ、友達になったのか。シャルロット、コイツ俺の弟なんだ」
何でもないように兄は彼女の名前を呼んだ。そのことが何故か酷く気持ち悪くて、ついでに兄の後ろからついてきた数人の子供達に緊張して、アルフレッドは逃げた。
後ろから待ってという声が聞こえて、それが彼女のものであることに、なんとも言えない気持ちがこみ上げてきた。
あの美しい少女の名前は、シャルロット。この頭を撫でてくれた、天使のような女の子。
それは一目惚れで、当時五才のアルフレッドの初恋だった。
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