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30,伝えたいこと

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「シャルロット!」
 レオン王子と気まずい空気が流れた時、声をかけてきたのはアルフレッドだった。
「アルフレッド様」
「良かった、人に聞いたらエルシア嬢に付いていると言うから…」
「…俺は父上の元へ報告がてら行く。シャルロット、今日のところは早く帰れ。また後日呼ばれるだろうが」
 ちらりとアルフレッドを一瞥したレオン王子に頷きシャルロットは婚約者へと向き直る。
「申し訳ありません」
「いや……君は大丈夫なのか?」
 ドレスの裾に付いた血が返り血であることはすぐに分かったのだろう。肩に手を置いたアルフレッドに頷く。
「私は大丈夫です。けれど、エルシアが…」
「…そうか…」
「国王陛下は?」
「王妃様も揃って御無事だと聞いたよ。君に怪我がなくて良かった。目の前であんなことがあって驚いただろう、やっぱり君の側に居たらよかった…」
 眉間に皺を寄せて俯くアルフレッドに慌てて首を振った。
「そんな、大丈夫ですわ。私は見ているだけで何も出来ませんでしたもの。…国王陛下が御無事なら、エルシアも、身体を張った甲斐があったというものでしょうから…」
 そう思わないとやってられなかった。目の前で大量の血を流し、治療後も幸せそうに良かったと笑うあの子に、否定的な言葉など言えるはずがない。
「…兄さんが今日は早く帰れと。シャルロットも、送るから今日は帰ろう」
「アルフレッド様。もう少しだけエルシアと話しがしたいので、お先にお帰りになって下さい」
「待つよ」
「でも」
「あんなことがあった後だ、大切な人を一人では帰せない」
 アルフレッドは優しい。優しくて、私を愛してくれていて、なのに私はそんなことを気付きもしなかった。
 貴方の優しさに甘えてばかりだった。
 一年前、私はどれほど嫌われても失望されても、いうべき言葉があったはずなのに。
「…ねぇ、アルフレッド様。もし出来るなら、今夜は私の家に来ては頂けませんか」
 そう言うとアルフレッドは大きく目を開いた。掠れた声で、うん、と頷く。
「私、貴方に話したいことが沢山あるんです。失望されるかもしれないけれど、聞いて頂けませんか?」
「──うん、聞くよ、君の話ならどんなことだって」
「…ありがとうございます」
 私は卑怯だったから言えないことが沢山あって、隠し事も沢山して、逃げてばかりで、見て見ぬ振りをして。
 貴方は本当にそんな私を受け入れてくれるだろうか。
 言わなくても良いことかもしれない。言わなければ愛したままでいてもらえるかもしれない。
 けれどそれでは何も変わらない。
 息を切らせて、私の心配をしてくれて、そんな貴方が私はとても大好きだって。
 今度こそ伝えられるかしら?
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