【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第9話(2)先輩ヒーロー

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「……なんて言うてたっけ、司令官……」

「大仕事とか言っていたな」

「これが大仕事か⁉」

 怪人の着ぐるみを着ながら躍が声を上げる。

「アミューズメント施設で行われるヒーローショーに出演するなんて、そうそう出来ることじゃないだろう……」

 輝が淡々と答える。

「だからって着ぐるみって⁉」

「むしろ良い方だろう」

「何が⁉」

「卓越した運動神経を評価されたわけだからな」

「う、うむ……」

「こっちはこれだぞ?」

 輝が全身タイツ姿で首をすくめる。

「じゃあ変わるか?」

「いや、いい」

 躍の問いに輝が即答する。

「いいって! なんでやねん!」

「恥ずかしいからな」

「恥ずかしい言うな!」

「まあ、そうヤケを起こすなよ、躍くん……」

 用意されたお茶を飲みながら秀が呟く。

「せやかて秀さん……」

「最初はなんでもこんなもんさ」

「こんなもんって……」

「こういう下積みを重ねることが大事なんだ」

「下積みね……」

「先輩ヒーローの仕事ぶりを間近で見られるのもそうそうないことだよ?」

「先輩ヒーローね……知ってた?」

 躍が輝に問う。

「正直知らなかった……戦隊ヒーローにはあまり明るくないからな……」

「せやろ?」

「とはいえ、最近売り出し中みたいだぞ?」

「ふ~ん……」

「ボクらは今回休みだが、凛くんと心くんが頑張っている。袖で見学させてもらおう……」

 秀が声をかけ、秀とともに輝と躍が控室から袖に移動する。

「ふはははっ! この京都の地は我々のものだ!」

「凛くん、なかなか上手いじゃないか……」

「口調が戦闘員やなくて幹部のそれですけどね……」

 感心する秀の横で躍が苦笑する。

「誰も我々の邪魔は出来ないどすえ~」

「心ちゃん、京都弁が出てもうてるがな……」

 躍は心配そうに見つめる。

「待て!」

「!」

「そなたらの悪事もここまでだ!」

「なっ⁉」

「だ、誰どす⁉」

 凛と心が周囲を見回す。

「群雄割拠! センゴクレッド!」

 鎧武者のような恰好をした赤いスーツの者がステージに現れる。輝が呟く。

「センゴクレッド……」

「戦国時代ならではの血で血を洗う感じをイメージしているそうだよ」

「レッドってそういう意味⁉ 怖っ⁉」

 秀の説明に躍が体を震わせる。

「優美巧妙! ムロマチゴールド!」

 全身金色のスーツを着た者が現れる。

「金ぴかだな……」

「ははっ、まるで金閣寺みたいやな」

「そこからインスパイアを受けたようだよ」

「適当に言うたら当たった⁉」

 秀の反応に躍が驚く。

「絢爛豪華! モモヤマピンク!」

 派手なピンク色のスーツを着た者が現れる。

「ふむ、これまた派手だな……」

「桃山って、安土桃山時代の?」

「そう、桃山文化をイメージしているようだ」

 躍の問いに秀が頷く。

「血風乱舞! バクマツダンダラ!」

 浅葱色のダンダラ模様のスーツを着た者が現れる。

「新選組か……」

「ダンダラって……自由やな」

「どちらかと言えば取り締まる方だけどね……」

 秀が笑みを浮かべる。

「典麗風雅! ヘイアンジュウニヒトエ!」

 色とりどりのカラーリングの着物のような恰好をした者がステージに上がる。

「じゅ、十二単って⁉」

「動きづらそうな恰好だな……」

 驚く躍の横で、輝が素直な感想を口にする。

「約20キログラムの重さらしいよ」

「そ、そんなに重いんですか⁉ な、何故、そないなことを……」

 秀の補足に躍が戸惑う。

「平安文化を再現する為だってさ」

「こだわりが強いな……」

「輝、もしかして感心しとる?」

「ここまで徹底されればな……」

 躍からの問いに輝が頷く。ステージにヘイアンジュウニヒトエを中心に五人が並ぶ。

「千年王城を守り抜く! 歴女戦隊!」

「「「「「『ヒストリカルガールズ』!」」」」」

 五人の揃った掛け声の後に、爆発音のSEが鳴る。

「れ、歴女戦隊⁉」

「歴史好きが高じて、戦隊になったそうだよ」

「高じ方間違うてません⁉」

 秀の解説に躍が困惑する。

「全員女か……」

「ボクらと一緒だね」

 輝の言葉に秀が反応する。

「ふむ、司令官がこのヒーローショーにわたしたちを派遣したのは、大いに学ぶことがあるからということか……」

 輝が顎に手を当てて呟く。

「そういうことかもしれないね」

「そこまで考えてますかね、あの人……?」

 躍が首を捻る。

「考えてないな」

「まあ、ボクもそう思うよ」

「二人とも言うてること変わってるがな」

「まあ、とりあえず勉強させてもらおう、先輩ヒーローの様子を……」

 秀がステージを注視する。
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