【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第9話(3)ドタバタヒーローショー

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「悪は滅びてもらいますえ!」

「なんのそうはいきませんえ!」

 ヘイアンジュウニヒトエが右手を掲げ、負けじと心が左手を掲げる。

「こ、心ちゃん、ヘイアンジュウニヒトエさんと若干キャラ被ってもうてる!」

 躍が慌てる。

「お前が怪人だな! 首‼ 置いてきな!」

「!」

 センゴクレッドが勢い良く怪人役に飛びかかる。

「センゴクレッドの決め台詞が早くも出たね」

「どこかで聞いたことあるような……」

 秀の解説に輝が首を傾げる。

「むうっ!」

「ここはアタシに任せて!」

 凛が怪人役とセンゴクレッドの間に割って入る。

「な、何をしているんだ、あいつは……」

 輝が戸惑う。

「ふふっ、心くんも凛くんも堂々たるステージングじゃないか……目立っているよ」

「目立ったらアカンのですよ! 戦闘員役なんやから!」

 腕に手を組んで頷く秀に、躍が突っ込みを入れる。

「レッド、加勢するわ!」

 モモヤマピンクがセンゴクレッドに並ぶ。

「なんのこっちも加勢しますえ!」

 心が凛に加勢する。

「心ちゃん、段取り無視したらアカンって!」

 躍が頭を抑える。

「怪人さん、ここはアタシたちに任せて早く逃げて!」

「⁉」

 凛の言葉に怪人役が露骨に困惑する。

「て、展開を変えるな!」

 輝が頭を抱える。

「た、頼む!」

 怪人役がアドリブでステージ中央から逃げる。

「逃げた! ゴールド!」

「あ、ああ! 『金閣寺フラッシュ』! 説明しよう! この金閣寺フラッシュは眩い光を放つことによって、暗闇に隠れた敵を見つけ出す効果もあるのだ!」

 ムロマチゴールドが戸惑いながら、技を出す。

「アドリブやから、技のナレーションも自分で言うてはる……!」

 躍が唖然とする。

「照明さんなどもちょっとステージを暗くするなど、なんとか対応してくれているな……」

「そうだね、ああいう柔軟性や臨機応変ぶりは学ぶべきだね」

「段取り命のヒーローショーで、臨機応変に対応せざるを得ない状況を招いてしもうてるのはアカンでしょ⁉」

 輝の呟きに頷く秀に、躍は再び突っ込みを入れる。

「み、見つけた、そこだ!」

 ゴールドが怪人役を指差す。

「仕留めさせてもらう。今宵のコテツは血に飢えている……」

 バクマツダンダラが剣を構える。秀が声を上げる。

「出た、ダンダラの決め台詞!」

「またもどこかで聞いたことがあるような……」

「ってか、物騒な決め台詞多いな!」

 首を捻る輝の横で躍が面食らう。

「そうはさせない!」

 凛がダンダラの前に立つ。

「凛! なにをやっているんだ⁉」

 輝が驚く。

「剣と素手……こっちが不利だけど、上手くカウンターを合わせられれば……」

「そこでガチらんでええから!」

 躍が思わず大声を上げてしまう。

「くっ……この戦闘員……出来る!」

「ほう、あのバクマツダンダラにあそこまで言わせるとは……」

 秀が感心する。

「感心しとる場合違いますよ!」

 躍は三度、秀に突っ込みを入れる。

「仕方ありまへん! 『キモノアタック』!」

「うおっ⁉」

「わっ⁉」

 ジュウニヒトエが繰り出した着物による攻撃を食らい、凛と心は半ば強引にステージ袖へと追いやられる。

「な、なんだ、今の攻撃は? まったく反応することが出来なかった……今度こそ!」

「ええ!」

「出るな! なんとか戻した段取りを滅茶苦茶にすな!」

 再びステージに戻ろうとする凛と心を、輝と躍が必死で止める。

「おい……」

「ほ、本当に申し訳ありませんでした!」

「どした……」

 輝に促され、凛と心が頭を下げる。

「え、なんのこと?」

 楽屋で黒髪ロングにまろ眉の女性がきょとんとする。躍が説明する。

「い、いえ、このアホ二人が、ショーの進行を滅茶苦茶にしたことです」

「ああ、一回目のステージね~」

 まろ眉の女性が思い出したかのように頷く。

「そうです……ほら!」

「す、すみませんでした!」

「どした!」

 躍から再度促され、凛と心が勢いよく頭を下げる。

「ははっ、別に良いって良いって~最近ちょっとマンネリを感じていたから、かえって新鮮で良かったよ~。皆も楽しんでいたし」

 まろ眉の女性が笑顔を浮かべる。

「ホ、ホンマですか……? おっと!」

「さすがは『ヒストリカルガールズ』のリーダー、ヘイアンジュウニヒトエこと、神藤原朧(かみふじわらおぼろ)さん……まさに神の如くです……」

 躍の前に割って入った秀がまろ眉の女性を褒め称える。

「そんなことは無いって……」

「いえ、その美しさはもはや神です! その神対応、なかなか出来るものではありません!」

「もう、大げさだって~。ん? 神対応? なにか忘れているような……」

「あっ⁉ ジュウニヒトエ! 何をスーツ脱いじゃっているのさ⁉」

「二回目の握手会がまだあるわよ!」

 様子を見に来たゴールドとピンクが声を上げる。

「あ~忘れてた、ごめん、ごめん。このスーツ着るの時間かかるのよね……」

「処断!」

「士道不覚悟……」

「士じゃないよ! レッドもダンダラも気合入り過ぎ……あ~君たちの名前なんだっけ?」

 朧がスーツを着ながら凛に尋ねる。

「『遊戯戦隊エレクトロニックフォース』です!」

「覚えておくよ……いつか共闘することがあったらよろしくね~」

 重いスーツを着たジュウニヒトエが凛たちに手を振りながら、優雅に楽屋を出る。凛はその背中を目に焼き付ける。
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