Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
66 / 78
Angel's Ring

39

しおりを挟む
「グラントさん!!」

「やはり、あなたでしたか…」

お爺さんはお婆さんの身体をそっと抱き締めました。
二人はみつめあい、何も話しませんでした。
どうやらお二人はお互いのことをご存知のようです。

それから私達は食事をいただき、アーネストが眠ってから、お二人にお話を聞かせていただきました。



「なぁ、婆さん、一体、どういうことなんだ?
あの子に自分のことをおばあちゃんだって言ったのはなぜなんだ?」

「本当のことは言えんじゃろ…
こんな年老いた私が、『おまえのママだ』とは…」

「えっ?!」



「おそらく…」

驚く私達にお爺さんがゆっくりと話し始めました。



「おそらく…それも魔女の呪いの一つだと思いますが、あの場所にいた者は年を取らないのです。」

「そ、それじゃあ、あのアーネストは婆さんの息子のアーネストだっていうのか?
小さい頃に森の中に入ったからその時のままだっていうのか?」

お爺さんはゆっくりと頷かれました。



「あの子が年を取っていようがいまいが、生きていてくれただけで私は満足ですよ。
しかし、グラントさん、なんであなたが森に…?」

「実は…あなたの落ち込みようが酷かったので、私はなんとかアーネストを助け出せないかと森の中に入ったのです…
幸い、アーネストをみつけることは出来ましたが、あの場所から出る事は出来ませんでした。
実は、私は、木に印を付け、あの場所の周りをしばらくさ迷いました。
どこかに出口があるはずだと探したのですが、ある時はあやうく底無しの穴に吸いこまれそうになり、木に付けた印も見失いかけてもうだめかと思った時、やっとあの場所に戻れたのです。
それからはもうあの外へ出ようという気力さえ失いました。
これからは、せめてアーネストに寂しい思いをさせないように…それだけを考えて日々暮らしていました。」

「そうだったんですか…
あの時、私の支えになっていて下さっていたあなたが突然いなくなったので、不思議には思っていたのですがきっと故郷へ戻られたんだと思ってました。
アーネストを探していて下さったとは…本当にどうもありがとうございます…」

私達はお婆さんに聞いたお話を思い出していました。
森に入ったアーネストを追いかけようとしたお婆さんを引き止め、その後、お婆さんの世話をしてくれた男性がいたということを…
グラントさんと呼ばれるこのお爺さんは、その時の男性に違いありません。
当時より年を取られているのは、出口を探すためにしばらくあの拓けた場所から離れていたせいなのでしょう。
当時のグラントさんはこのお婆さんに好意を抱かれていたのかもしれません。
おそらく、その気持ちはお婆さんも同じだったのではないでしょうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...