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Angel's Ring
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「グラントさん!!」
「やはり、あなたでしたか…」
お爺さんはお婆さんの身体をそっと抱き締めました。
二人はみつめあい、何も話しませんでした。
どうやらお二人はお互いのことをご存知のようです。
それから私達は食事をいただき、アーネストが眠ってから、お二人にお話を聞かせていただきました。
「なぁ、婆さん、一体、どういうことなんだ?
あの子に自分のことをおばあちゃんだって言ったのはなぜなんだ?」
「本当のことは言えんじゃろ…
こんな年老いた私が、『おまえのママだ』とは…」
「えっ?!」
「おそらく…」
驚く私達にお爺さんがゆっくりと話し始めました。
「おそらく…それも魔女の呪いの一つだと思いますが、あの場所にいた者は年を取らないのです。」
「そ、それじゃあ、あのアーネストは婆さんの息子のアーネストだっていうのか?
小さい頃に森の中に入ったからその時のままだっていうのか?」
お爺さんはゆっくりと頷かれました。
「あの子が年を取っていようがいまいが、生きていてくれただけで私は満足ですよ。
しかし、グラントさん、なんであなたが森に…?」
「実は…あなたの落ち込みようが酷かったので、私はなんとかアーネストを助け出せないかと森の中に入ったのです…
幸い、アーネストをみつけることは出来ましたが、あの場所から出る事は出来ませんでした。
実は、私は、木に印を付け、あの場所の周りをしばらくさ迷いました。
どこかに出口があるはずだと探したのですが、ある時はあやうく底無しの穴に吸いこまれそうになり、木に付けた印も見失いかけてもうだめかと思った時、やっとあの場所に戻れたのです。
それからはもうあの外へ出ようという気力さえ失いました。
これからは、せめてアーネストに寂しい思いをさせないように…それだけを考えて日々暮らしていました。」
「そうだったんですか…
あの時、私の支えになっていて下さっていたあなたが突然いなくなったので、不思議には思っていたのですがきっと故郷へ戻られたんだと思ってました。
アーネストを探していて下さったとは…本当にどうもありがとうございます…」
私達はお婆さんに聞いたお話を思い出していました。
森に入ったアーネストを追いかけようとしたお婆さんを引き止め、その後、お婆さんの世話をしてくれた男性がいたということを…
グラントさんと呼ばれるこのお爺さんは、その時の男性に違いありません。
当時より年を取られているのは、出口を探すためにしばらくあの拓けた場所から離れていたせいなのでしょう。
当時のグラントさんはこのお婆さんに好意を抱かれていたのかもしれません。
おそらく、その気持ちはお婆さんも同じだったのではないでしょうか?
「やはり、あなたでしたか…」
お爺さんはお婆さんの身体をそっと抱き締めました。
二人はみつめあい、何も話しませんでした。
どうやらお二人はお互いのことをご存知のようです。
それから私達は食事をいただき、アーネストが眠ってから、お二人にお話を聞かせていただきました。
「なぁ、婆さん、一体、どういうことなんだ?
あの子に自分のことをおばあちゃんだって言ったのはなぜなんだ?」
「本当のことは言えんじゃろ…
こんな年老いた私が、『おまえのママだ』とは…」
「えっ?!」
「おそらく…」
驚く私達にお爺さんがゆっくりと話し始めました。
「おそらく…それも魔女の呪いの一つだと思いますが、あの場所にいた者は年を取らないのです。」
「そ、それじゃあ、あのアーネストは婆さんの息子のアーネストだっていうのか?
小さい頃に森の中に入ったからその時のままだっていうのか?」
お爺さんはゆっくりと頷かれました。
「あの子が年を取っていようがいまいが、生きていてくれただけで私は満足ですよ。
しかし、グラントさん、なんであなたが森に…?」
「実は…あなたの落ち込みようが酷かったので、私はなんとかアーネストを助け出せないかと森の中に入ったのです…
幸い、アーネストをみつけることは出来ましたが、あの場所から出る事は出来ませんでした。
実は、私は、木に印を付け、あの場所の周りをしばらくさ迷いました。
どこかに出口があるはずだと探したのですが、ある時はあやうく底無しの穴に吸いこまれそうになり、木に付けた印も見失いかけてもうだめかと思った時、やっとあの場所に戻れたのです。
それからはもうあの外へ出ようという気力さえ失いました。
これからは、せめてアーネストに寂しい思いをさせないように…それだけを考えて日々暮らしていました。」
「そうだったんですか…
あの時、私の支えになっていて下さっていたあなたが突然いなくなったので、不思議には思っていたのですがきっと故郷へ戻られたんだと思ってました。
アーネストを探していて下さったとは…本当にどうもありがとうございます…」
私達はお婆さんに聞いたお話を思い出していました。
森に入ったアーネストを追いかけようとしたお婆さんを引き止め、その後、お婆さんの世話をしてくれた男性がいたということを…
グラントさんと呼ばれるこのお爺さんは、その時の男性に違いありません。
当時より年を取られているのは、出口を探すためにしばらくあの拓けた場所から離れていたせいなのでしょう。
当時のグラントさんはこのお婆さんに好意を抱かれていたのかもしれません。
おそらく、その気持ちはお婆さんも同じだったのではないでしょうか?
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