Angel's Ring

Angel's Ring

４９

「さて、最後はキャリーさんです。
はりきってどうぞ～～！！」

キャリーさん用に新しい缶が用意されました。
キャリーさんは平然と前に歩み出られました。
そして、すっと、ごく自然な動きで人指し指を空に向けられました。
その途端です！空が真っ黒になったのです。
ファビアンさんの時よりもずっとたくさんの雨雲が折り重なるようにしてあたりを真っ黒に染めたのです。
その時、キャリーさんの口の端がほんの少し上がったように見えました。
キャリーさんは、おもむろに人差し指を少しだけ動かされました。
それと同時に、激しい轟音と共に空から目も眩むような５本の稲妻が缶を目指して打ち落とされたのです。
あたりからは女性や子供達の甲高い悲鳴が上がりました。
その眩さに私も咄嗟に目を閉じてしまったのですが、私が再び目を開けると黒い空が割れ、その間からは先ほどの青い空が広がっていきました。
そして、観客は太陽の光に照らされたその場の光景に息を飲みました。
缶のあった場所には５つの穴が空いて黒く焼けこげ、そこから灰色の煙が立ち昇っていました。
大人達はまだ言葉を失ったままその場に立ち尽くし、一人の子供が火のついたように泣き出しました。
皆、驚いているのです。
しばらくして、町長さんが台に上られました。



「え～～…
本来ならば、この後にもいくつかの種目が用意されていたのですが～…
皆様もご覧の通り、今回はずば抜けた魔力の持ち主がいらっしゃるようですので、今年の魔法大会はキャリーさんの優勝を持ちましてこれにて終了とさせていただきます。
では、キャリーさん、こちらへ…！」

観客からは、まばらな拍手が起こりました。
あまりにすご過ぎる魔力を目の当たりにして、皆、キャリーさんに対しては少し怖れを抱いてしまったようです。



「では、優勝のメダルと賞金をどうぞ！」

キャリーさんの首にメダルがかけられ、大きな皮袋に入った優勝賞金を受け取られました。



「キャリーさん、おめでとう～！！」

私は、キャリーさんに向かって大きな声で叫びました。
それに対して、キャリーさんがほんの少しの微笑を返して下さいました。