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2007クリスマス企画
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「On the mooN」は、アンコールを行わない。
アンコールを最初から想定してライブをやるのはおかしい。
その代わり、最後の曲まで手を抜かないというのがポリシーだということらしい。
最前列からもみくちゃになって戻ってきた愛香が、涙でぐしゃぐしゃになった私を見て驚いて駆け寄って来た。
「雪美、その顔!!一体どうしたの?
誰かになにかされた?」
「ううん、違うんだ。
ちょっと感動しただけ…」
「ちょっとって…
雪美、鏡見てごらんよ。」
愛香に言われる通りにバッグから手鏡を取りだしのぞいてみると、そこにはおぞましい顔の自分が写っていた…
「なんじゃ、こりゃあ~~!!」
せっかく、プロのメイクさんにあんなに綺麗に描いてもらったのに、そのほとんどは流れてしまっている。
特に目はひどく腫れあがり、不用意にこすってしまったせいでマスカラやアイラインがにじみ真っ黒になっていた。
(これじゃあ赤鼻のトナカイじゃなくて、赤鼻のパンダだよ…)
私は、トイレに駆け込み、ザバザバと顔を洗った。
いつものすっぴんに戻った私は、とりあえず、愛香に借りたアイブロウで眉毛を描いた。
「あいちゃん、私、今日は帰るね…」
「え?でも、2ショットは?」
「プレゼントも買えなかったし…今日は出待ちも多そうだから、また今度にするよ。」
(……っていうか、こんな顔で撮れますか?!)
「そう…?じゃ、また連絡するね。気をつけてね。」
「うん、ありがとう!」
後ろ髪をひかれる想いでライブハウスを後にすると、近くのコンビニに飛びこみサングラスとマスクを買って早速かけた。
(…ちょっとあやしいけど…とりあえずこれなら大丈夫…)
腫れ上がったまぶたと赤い鼻が隠れたおかげで、私はやっとほっとする出来た。
温かい電車のシートに腰掛けながら、ぼんやりと考える。
トナカイにせっかくきっかけを与えてもらったけれど、結局、イヴまでにロマンチックな出来事なんて起こらなかった。
いや、自分の力不足で、起こせなかったんだ。
(でも、私は少し変われた…)
明日は昨年と同じく何の予定もないクリスマスイヴだけど、でも、ちっとも寂しくない。
私の心の中はこのシートよりもぬくぬくとしている。
アンコールを最初から想定してライブをやるのはおかしい。
その代わり、最後の曲まで手を抜かないというのがポリシーだということらしい。
最前列からもみくちゃになって戻ってきた愛香が、涙でぐしゃぐしゃになった私を見て驚いて駆け寄って来た。
「雪美、その顔!!一体どうしたの?
誰かになにかされた?」
「ううん、違うんだ。
ちょっと感動しただけ…」
「ちょっとって…
雪美、鏡見てごらんよ。」
愛香に言われる通りにバッグから手鏡を取りだしのぞいてみると、そこにはおぞましい顔の自分が写っていた…
「なんじゃ、こりゃあ~~!!」
せっかく、プロのメイクさんにあんなに綺麗に描いてもらったのに、そのほとんどは流れてしまっている。
特に目はひどく腫れあがり、不用意にこすってしまったせいでマスカラやアイラインがにじみ真っ黒になっていた。
(これじゃあ赤鼻のトナカイじゃなくて、赤鼻のパンダだよ…)
私は、トイレに駆け込み、ザバザバと顔を洗った。
いつものすっぴんに戻った私は、とりあえず、愛香に借りたアイブロウで眉毛を描いた。
「あいちゃん、私、今日は帰るね…」
「え?でも、2ショットは?」
「プレゼントも買えなかったし…今日は出待ちも多そうだから、また今度にするよ。」
(……っていうか、こんな顔で撮れますか?!)
「そう…?じゃ、また連絡するね。気をつけてね。」
「うん、ありがとう!」
後ろ髪をひかれる想いでライブハウスを後にすると、近くのコンビニに飛びこみサングラスとマスクを買って早速かけた。
(…ちょっとあやしいけど…とりあえずこれなら大丈夫…)
腫れ上がったまぶたと赤い鼻が隠れたおかげで、私はやっとほっとする出来た。
温かい電車のシートに腰掛けながら、ぼんやりと考える。
トナカイにせっかくきっかけを与えてもらったけれど、結局、イヴまでにロマンチックな出来事なんて起こらなかった。
いや、自分の力不足で、起こせなかったんだ。
(でも、私は少し変われた…)
明日は昨年と同じく何の予定もないクリスマスイヴだけど、でも、ちっとも寂しくない。
私の心の中はこのシートよりもぬくぬくとしている。
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