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出会いは最悪のシチュエーション

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でも…冷静に考えれば、悪い話じゃないよ。
あと数日で私は仕事がなくなるんだから、その間、ちょっとでも稼げたらありがたい。
 家事ならまぁまぁ出来るし、暇な時間に仕事を探すことだって出来る。
まさに、渡りに船って感じだ。



 「や、やります!」

 嬉しくてつい顔がにやけてしまう。
おばちゃんだと思われたことだって、別にもう気にしない。
だって、実際、助かるんだもん。
まぁ、それほどたいした給料ではないだろうけど、今からだったらバイトだって探すのは大変だもんね。



 「そうか…じゃあ、よろしく頼む。
 今から家に行こう。」

 「え?今からですか?」

 「何か用事でも?」

 「え、い、いえ…そういうわけでは。」

 「じゃあ、良いな。」



 私の返事も待たずに、男性は通りに向かって片手を上げる。
どうやらタクシーで行くみたい。
ってことは、けっこう近くなんだな。
 男性は、停まったタクシーに乗り込み、私もその後に続いた。



 乗り込んだ後になって…なんだか急にドキドキして来た。
だって、名前さえ知らなくて、ついさっき会ったばかりの人と一緒にタクシーに乗ってるんだもん。



 急に怖くなって来て、私は身震いした。
 最近はちょっとしたことで、理不尽な殺人事件に発展することが良くある。
この人が本当はすごく執念深い人で、私が怪獣を壊したことを恨んでたとしたら…
メイドのことは単なる口実で、家に連れ込むのは、実は……



まさか、私……殺されたりしないよね!?
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