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第22話:大賢者復活
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それから私とアーベル様、王様、王妃様はコルフォルスの病室に行った。
「コルフォルスさん……、大丈夫ですか?」
コルフォルスはベッドに力なく横たわっている。
声をかけてみても返事がなかった。
王様や王妃様の心配そうな顔から、この国や彼らにとって本当に大切な存在なのだな、と改めて強く感じる。
「コルフォルスよ。どうやら、ロミリア殿は回復魔法が使えるそうだ。そこでお前の病気を治すと言ってくれてな」
「ロミリアの回復魔法は凄いんだよ、コルフォルス。僕の傷も彼女に治してもらったんだ」
王様やアーベル様もコルフォルスに話しかけている。
アーベル様が褒めてくれるのはとても嬉しかったが、その分緊張してきてしまう。
「それではコルフォルスさん、じっとしててくださいね」
私は声をかけると、彼の胸に手をあてる。
そして私はスッと静かに目を閉じた。
「<グレートヒール>」
私が使える回復魔法の中で一番強力な魔法だ。
<ヒール>の時よりもずっと強い青色の光が、コルフォルスの胸を優しく包む。
「おお!」
「凄いわ、ロミリアちゃん!」
王様と王妃様の驚く声がかすかに聞こえてくる。
アーベル様の顔は見えなかったが、誇らしげな表情をしていそうだなと思った。
段々とコルフォルスの顔色が穏やかになってくる。
この魔法は強力だが、その分魔力の消費量が多くて辛い。
汗が額から滴り落ちてきた。
――あと少し! 最後まで頑張るのよ、ロミリア!
私は目を閉じたまま、必死に念じる。
――お願い、治って!
少しして、コルフォルスの声が聞こえた。
「ロミリア、もう大丈夫じゃよ」
目を開けると、コルフォルスが笑っていた。
顔つきにも力が戻ってきている。
「コルフォルスさん! 良かった!」
もう大丈夫だろう、と私は<グレートヒール>を止めた。
青い光が消えると、離れて見ていた王様たちがコルフォルスに近寄ってくる。
真っ先にアーベル様がコルフォルスへ抱き着いた。
ぽろぽろ涙を流して泣いている。
「コルフォルスぅぅぅ」
「コルフォルス、大丈夫か!?」
「さすが、ロミリアちゃんね!」
「ロミリア、それに王様方とアー坊も、心配かけてすまんかったですな」
王様も王妃様もコルフォルスの意識が戻って嬉しそうだ。
――役に立てて良かった。ずっと勉強や練習を続けていた甲斐があったわね。
コルフォルスが私の手をしっかりと握る。
「ありがとう、ロミリア。おかげで助かったわい。もう心臓も苦しくないぞよ」
「ロミリア、本当にありがとう!」
アーベル様が私にも抱きついてきた。
「く、苦しいですわ、アーベル様」
「良かったぁ~、ほんとに良かったぁ~」
アーベル様は嬉し泣きが止まらないようで、コルフォルスの病室は笑い声に包まれる。
念のため今日は大事を取って、守護結界への魔力注入は後日行うことになった。
その日の夜、私はコルフォルスの病室に呼ばれた。
――何だろう? もしかして、また具合が悪くなってしまったのかしら?
心配しながらコルフォルスの所へ行く。
「あの、ロミリアですが」
部屋をノックすると、すぐに返事が聞こえた。
「よく来てくれたな、お入り」
コルフォルスはゆったりとベッドに腰掛けている。
顔色もいいし、どうやら体調は良さそうだ。
「まぁ、そこの椅子にでも座っとくれ」
コルフォルスに言われ、私は彼の正面の椅子に座る。
「ロミリアよ、今日は本当に頑張ってくれたな。どうもありがとう」
「あ、いえ、私は私にできることをやっただけで……」
改めてお礼を言われると恥ずかしくなってしまう。
「お主に言っておかんといけないことがあってな。お主の母親のことなんだが……」
そういえば、コルフォルスが倒れる直前に、私の母親のことを話そうとしていた。
「は、はい。母がどうしたのでしょうか?」
「お主の母親のレベッカはな、実はわしの弟子だったんじゃよ」
――えっ? お母様がコルフォルスさんの弟子? 伝説の大賢者の?
それを聞いたときにわかには信じがたかった。
しかし、実際に回復魔法を教えてもらったことや、あの本を持っていたことなどからすぐに事実だとわかる。
「そ、そうだったのですか。でも、お母様はそんなこと一言もおっしゃっていなかったですわ」
「おそらく、レベッカはお主がもっと大きくなってから言うつもりだったのじゃろう。だが、不幸にもそれより早く死を迎えてしまったが……。ところで、ロミリアよ。そのペンダントの中身を見たことはあるかの?」
――ペンダントの中身?
私は首から下げている、母の形見のペンダントを見た。
もちろん、中身は見たことがなかった。
「いえ、まだ見たことありません」
「貸してみなさい」
私はペンダントをコルフォルスに渡す。
「<アンロック>」
コルフォルスが解錠の呪文を唱えると、ペンダントがパカッと開いた。
そして、中からきれいな赤い石が出てきた。
「このペンダントはな、わしかレベッカの魔力でしか開かんようになっておったのじゃ。これはな、魔石じゃよ」
魔石とは魔力を貯めておける、とても貴重な石だ。
「魔石なんて初めて見ましたわ。まさかそんな貴重な物が入っていたなんて」
目の前の魔石は燃えるように赤く光っていた。
今まで見たどんな宝石よりずっときれいだ。
「……とてもきれいですわ、コルフォルスさん」
「ロミリア、レベッカに会いたいかの?」
唐突にコルフォルスが言った。
「え? は、はい。いつもお母様のことを考えてます」
「この魔石にはレベッカの魔力が込められておる。この魔力を使えば、霊界にいるレベッカと少しだけだが会えるかもしれぬ。どうじゃ、やってみるかの?」
霊界にいるお母様と会う。
そんな夢みたいなことはあり得ないと思っていた。
「ぜひお願いします、コルフォルスさん。でも、まだお身体の方が……」
「いいや、もう大丈夫じゃよ。それにわしの魔力はほとんど使わないからの。それくらいレベッカの強い魔力がこもっておる」
お母様と会って、今の私のことを伝えたい。
「では、お願いします。コルフォルスさん」
「魔石を握って目を閉じるのじゃ」
コルフォルスに魔石を渡され、言われた通りに目を閉じる。
――お母様……。
「<トランス>」
霊界と交信する呪文が聞こえたとき、私の意識はなくなった。
「コルフォルスさん……、大丈夫ですか?」
コルフォルスはベッドに力なく横たわっている。
声をかけてみても返事がなかった。
王様や王妃様の心配そうな顔から、この国や彼らにとって本当に大切な存在なのだな、と改めて強く感じる。
「コルフォルスよ。どうやら、ロミリア殿は回復魔法が使えるそうだ。そこでお前の病気を治すと言ってくれてな」
「ロミリアの回復魔法は凄いんだよ、コルフォルス。僕の傷も彼女に治してもらったんだ」
王様やアーベル様もコルフォルスに話しかけている。
アーベル様が褒めてくれるのはとても嬉しかったが、その分緊張してきてしまう。
「それではコルフォルスさん、じっとしててくださいね」
私は声をかけると、彼の胸に手をあてる。
そして私はスッと静かに目を閉じた。
「<グレートヒール>」
私が使える回復魔法の中で一番強力な魔法だ。
<ヒール>の時よりもずっと強い青色の光が、コルフォルスの胸を優しく包む。
「おお!」
「凄いわ、ロミリアちゃん!」
王様と王妃様の驚く声がかすかに聞こえてくる。
アーベル様の顔は見えなかったが、誇らしげな表情をしていそうだなと思った。
段々とコルフォルスの顔色が穏やかになってくる。
この魔法は強力だが、その分魔力の消費量が多くて辛い。
汗が額から滴り落ちてきた。
――あと少し! 最後まで頑張るのよ、ロミリア!
私は目を閉じたまま、必死に念じる。
――お願い、治って!
少しして、コルフォルスの声が聞こえた。
「ロミリア、もう大丈夫じゃよ」
目を開けると、コルフォルスが笑っていた。
顔つきにも力が戻ってきている。
「コルフォルスさん! 良かった!」
もう大丈夫だろう、と私は<グレートヒール>を止めた。
青い光が消えると、離れて見ていた王様たちがコルフォルスに近寄ってくる。
真っ先にアーベル様がコルフォルスへ抱き着いた。
ぽろぽろ涙を流して泣いている。
「コルフォルスぅぅぅ」
「コルフォルス、大丈夫か!?」
「さすが、ロミリアちゃんね!」
「ロミリア、それに王様方とアー坊も、心配かけてすまんかったですな」
王様も王妃様もコルフォルスの意識が戻って嬉しそうだ。
――役に立てて良かった。ずっと勉強や練習を続けていた甲斐があったわね。
コルフォルスが私の手をしっかりと握る。
「ありがとう、ロミリア。おかげで助かったわい。もう心臓も苦しくないぞよ」
「ロミリア、本当にありがとう!」
アーベル様が私にも抱きついてきた。
「く、苦しいですわ、アーベル様」
「良かったぁ~、ほんとに良かったぁ~」
アーベル様は嬉し泣きが止まらないようで、コルフォルスの病室は笑い声に包まれる。
念のため今日は大事を取って、守護結界への魔力注入は後日行うことになった。
その日の夜、私はコルフォルスの病室に呼ばれた。
――何だろう? もしかして、また具合が悪くなってしまったのかしら?
心配しながらコルフォルスの所へ行く。
「あの、ロミリアですが」
部屋をノックすると、すぐに返事が聞こえた。
「よく来てくれたな、お入り」
コルフォルスはゆったりとベッドに腰掛けている。
顔色もいいし、どうやら体調は良さそうだ。
「まぁ、そこの椅子にでも座っとくれ」
コルフォルスに言われ、私は彼の正面の椅子に座る。
「ロミリアよ、今日は本当に頑張ってくれたな。どうもありがとう」
「あ、いえ、私は私にできることをやっただけで……」
改めてお礼を言われると恥ずかしくなってしまう。
「お主に言っておかんといけないことがあってな。お主の母親のことなんだが……」
そういえば、コルフォルスが倒れる直前に、私の母親のことを話そうとしていた。
「は、はい。母がどうしたのでしょうか?」
「お主の母親のレベッカはな、実はわしの弟子だったんじゃよ」
――えっ? お母様がコルフォルスさんの弟子? 伝説の大賢者の?
それを聞いたときにわかには信じがたかった。
しかし、実際に回復魔法を教えてもらったことや、あの本を持っていたことなどからすぐに事実だとわかる。
「そ、そうだったのですか。でも、お母様はそんなこと一言もおっしゃっていなかったですわ」
「おそらく、レベッカはお主がもっと大きくなってから言うつもりだったのじゃろう。だが、不幸にもそれより早く死を迎えてしまったが……。ところで、ロミリアよ。そのペンダントの中身を見たことはあるかの?」
――ペンダントの中身?
私は首から下げている、母の形見のペンダントを見た。
もちろん、中身は見たことがなかった。
「いえ、まだ見たことありません」
「貸してみなさい」
私はペンダントをコルフォルスに渡す。
「<アンロック>」
コルフォルスが解錠の呪文を唱えると、ペンダントがパカッと開いた。
そして、中からきれいな赤い石が出てきた。
「このペンダントはな、わしかレベッカの魔力でしか開かんようになっておったのじゃ。これはな、魔石じゃよ」
魔石とは魔力を貯めておける、とても貴重な石だ。
「魔石なんて初めて見ましたわ。まさかそんな貴重な物が入っていたなんて」
目の前の魔石は燃えるように赤く光っていた。
今まで見たどんな宝石よりずっときれいだ。
「……とてもきれいですわ、コルフォルスさん」
「ロミリア、レベッカに会いたいかの?」
唐突にコルフォルスが言った。
「え? は、はい。いつもお母様のことを考えてます」
「この魔石にはレベッカの魔力が込められておる。この魔力を使えば、霊界にいるレベッカと少しだけだが会えるかもしれぬ。どうじゃ、やってみるかの?」
霊界にいるお母様と会う。
そんな夢みたいなことはあり得ないと思っていた。
「ぜひお願いします、コルフォルスさん。でも、まだお身体の方が……」
「いいや、もう大丈夫じゃよ。それにわしの魔力はほとんど使わないからの。それくらいレベッカの強い魔力がこもっておる」
お母様と会って、今の私のことを伝えたい。
「では、お願いします。コルフォルスさん」
「魔石を握って目を閉じるのじゃ」
コルフォルスに魔石を渡され、言われた通りに目を閉じる。
――お母様……。
「<トランス>」
霊界と交信する呪文が聞こえたとき、私の意識はなくなった。
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