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第40話:大切な樹
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「え!? ユグドラシルが植わっているんですか? ……すごいですねぇ。さすがはディアボロ様のお庭……」
言わずと知れた古代樹だ。
昔はたくさん植わっていたようだけど、今ではすっかり数を減らしてしまったらしい。
葉っぱ一枚で金の延べ棒と交換できるほど価値があると聞いたことがある。
亜種とはいえ、大変貴重だろう。
「ご先代の思い出が残る数少ない物でございます。ディアボロ様は、家族のような存在だと仰っていました」
『ディアボロは子どものとき、辛いことがあるとよく樹の下に行っていたぞ』
「自分が生まれたときに植えられたなんて、それこそ本当の兄弟みたいですね」
素敵なお話だなと思った。
ご両親がディアボロ様を想う気持ち、ディアボロ様がご両親を想う気持ち……その両方が伝わってくるようだった。
「せっかくですのでご覧になりますか?」
「ええ、ぜひ見せていただきたいです」
『かなり大きいからな。ビックリすると思うぞ』
ワクワクしながら歩を進める。
ディアボロ様の大切な物は私にとっても大切な物だ。
ここに来てから、自然とそのような考え方になっていた。
やがて、歩いているとなんとなく空気がピリピリしてきた。
心なしか不安になってくる。
「あの、バーチュさん。なんかおかしくありませんか?」
「ええ、奥様、私の傍から離れませんようにお願いいたします」
『どうやら、ちょっと厄介なことになりそうだな』
バーチュさんは厳しい顔で慎重に進む。
フローズさんも毛を逆立てて警戒していた。
やがて、木々が少なくなり開けた場所に出てきた。
その中央には、背が高くて幹の太い樹が立っている。
違うときに見ていれば、その威厳に圧倒されていただろう。
だけど、今は違う意味で気圧されていた。
「バ、バーチュさん!」
「これは予想だにしていない事態です! 奥様、私の後ろに!」
『こいつはヤバイな』
ディアボロ様の大切な古代樹は、ご両親との思い出が詰まった大事な樹は…………禍々しくて黒いオーラを放っていた。
私が解呪してきた闇アイテムと同じだ。
「いったいどうして……」
「……おそらく、闇魔法に侵されてしまったようです。私めもたった今まで気づきませんでした」
『かなり侵食されている。闇魔法の中でも質の悪い魔法にかかっているようだ』
古代樹は苦しそうに唸っている。
あまりの悲惨さに言葉も出ない。
「これは私の推測ですが、おそらく闇魔法を浴びた種子が魔族領から飛来したのでしょう。それが古代樹に付着して浸食を始めてしまったと考えられます」
『古代樹は魔族が生まれる前の存在だからな、闇魔法に耐性がないのかもしれない』
「ここまで浸食されてしまったら、もう切り倒すしかありませんね」
「そ、そんな……」
バーチュさんもフローズさんも悲しげに俯いている。
ディアボロ様の大切な樹なのに……。
「私に……解呪させてもらえませんか?」
気がついたら言葉が出ていた。
どうにか残してあげたい。
だって、ディアボロ様の大事な思い出が詰まっているのだから。
心の底から強く思っていた。
言わずと知れた古代樹だ。
昔はたくさん植わっていたようだけど、今ではすっかり数を減らしてしまったらしい。
葉っぱ一枚で金の延べ棒と交換できるほど価値があると聞いたことがある。
亜種とはいえ、大変貴重だろう。
「ご先代の思い出が残る数少ない物でございます。ディアボロ様は、家族のような存在だと仰っていました」
『ディアボロは子どものとき、辛いことがあるとよく樹の下に行っていたぞ』
「自分が生まれたときに植えられたなんて、それこそ本当の兄弟みたいですね」
素敵なお話だなと思った。
ご両親がディアボロ様を想う気持ち、ディアボロ様がご両親を想う気持ち……その両方が伝わってくるようだった。
「せっかくですのでご覧になりますか?」
「ええ、ぜひ見せていただきたいです」
『かなり大きいからな。ビックリすると思うぞ』
ワクワクしながら歩を進める。
ディアボロ様の大切な物は私にとっても大切な物だ。
ここに来てから、自然とそのような考え方になっていた。
やがて、歩いているとなんとなく空気がピリピリしてきた。
心なしか不安になってくる。
「あの、バーチュさん。なんかおかしくありませんか?」
「ええ、奥様、私の傍から離れませんようにお願いいたします」
『どうやら、ちょっと厄介なことになりそうだな』
バーチュさんは厳しい顔で慎重に進む。
フローズさんも毛を逆立てて警戒していた。
やがて、木々が少なくなり開けた場所に出てきた。
その中央には、背が高くて幹の太い樹が立っている。
違うときに見ていれば、その威厳に圧倒されていただろう。
だけど、今は違う意味で気圧されていた。
「バ、バーチュさん!」
「これは予想だにしていない事態です! 奥様、私の後ろに!」
『こいつはヤバイな』
ディアボロ様の大切な古代樹は、ご両親との思い出が詰まった大事な樹は…………禍々しくて黒いオーラを放っていた。
私が解呪してきた闇アイテムと同じだ。
「いったいどうして……」
「……おそらく、闇魔法に侵されてしまったようです。私めもたった今まで気づきませんでした」
『かなり侵食されている。闇魔法の中でも質の悪い魔法にかかっているようだ』
古代樹は苦しそうに唸っている。
あまりの悲惨さに言葉も出ない。
「これは私の推測ですが、おそらく闇魔法を浴びた種子が魔族領から飛来したのでしょう。それが古代樹に付着して浸食を始めてしまったと考えられます」
『古代樹は魔族が生まれる前の存在だからな、闇魔法に耐性がないのかもしれない』
「ここまで浸食されてしまったら、もう切り倒すしかありませんね」
「そ、そんな……」
バーチュさんもフローズさんも悲しげに俯いている。
ディアボロ様の大切な樹なのに……。
「私に……解呪させてもらえませんか?」
気がついたら言葉が出ていた。
どうにか残してあげたい。
だって、ディアボロ様の大事な思い出が詰まっているのだから。
心の底から強く思っていた。
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