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第59話:闇魔法の氾濫

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「なるほど……これはかなり悪い状況のようだ」
「まさか、王宮がこんなことになるなんて……」

 目を開けたら、ヒュージニア帝国の王宮に着いていた。
 もう懐かしさを感じるくらいだ。
 でも、感傷に浸っている暇はなかった。
 王宮の全体が黒いもやに覆われている。
 幾度となく目にしてきた禍々しいオーラ。
 間違いなく闇魔法だった。
 王宮の前には見知った人たちが集まっている。
 力を合わせ必死に闇魔法を抑え込んでいた。
 王宮の解呪師たちだ。
 急いで声をかける。

「みなさん、大丈夫ですか!? 私はキュリティです!」
「「キュリティさん!? それにディアボロ様まで!」」
「王宮から使者の方が来て、闇魔法に襲われていると聞いて急いできました」
 
 リーダーの人が慌てて駆け寄ってきた。
 荷物検査の仕事をしているとき、大変お世話になった人だ。

「久しぶりね、キュリティさん! そ、そのお腹はどうしたの!?」
「詳しいことは後でお話します。闇魔法の状況はどうですか?」
「ええ、見ての通りよ。王宮全体が覆われてしまったわ。かなり強力みたいでね。全員がかりでやっと抑え込んでいる状況よ」

 闇魔法は黒いもやのようで、王宮が見えないくらい大きくなっている。
 解呪した傍から増殖しているのだ。
 このままでは国全体が覆われてしまう。

「闇魔法をかけられた荷物が入り込んだとも聞きましたが。荷物はどこにあるんですか?」
「ごめんなさい、闇魔法が強すぎて王宮の中まで入れないの。だから、どこにあるのかわからないわ」

 きっと、時間差で発動する仕掛けだったのだ。
 荷物が王宮に入るのを待つために。
 私たちの話を聞いていたディアボロ様が口を開く。

「キュリティ。その荷物を解呪すれば、闇魔法は全て消えるのか?」
「はい、そのはずです。闇魔法には必ず力の源があります。なので、それを断てば全部消えてしまうと思います」
「では、私がキュリティを守りながら王宮へ向かおう。中に入って直接探すしかなさそうだ」
「お願いします、ディアボロ様」

 私が答えると、ディアボロ様はすぐに呪文を唱えだした。
 どこかで聞いたことがある詠唱だ。
 そうだ、バーチュさんの魔法と同じなんだ。

「……<セインティア・バリア>!」

 白っぽい結界が私たちを覆う。
 バーチュさんのときと似たような温かさを感じる。
 この中にいれば絶対に大丈夫だ。

「行くぞ。キュリティ」
「はい!」
「お二人ともお気を付けて!」

 解呪師たちに見送られ、私たちは慎重に王宮へ入る。
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