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第65話:見破れないもの
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「…………え?」
あまりにも予想外な衝撃の事実を告げられ、頭が固まった。
ディ、ディアボロ様が……バーチュさん? ど、どういうこと?
私が石像みたいになっていると、ディアボロ様が慌てて説明を続けた。
「わ、私は変装が得意でな。もちろん女装もできる。バーチュに化けていたのは、君が心配で様子を伺いに来ていたのだ」
「そ、そうだったのですか。まさか、バーチュさんがディアボロ様だとは思いませんでした……ということは、私の今までの行いもディアボロ様は知っているということですか?」
「ああ、もちろん知っている。騙すような真似をして悪かった」
今になってわかった。
彼女がジッ……と見てきたのは、私の様子を見るためだったのか。
「しかし、どうしてそのようなことをされたのですか?」
「私がいては休めるものも休めなくなりそうだからな。ほら、この顔だ。君にも赤ん坊にもよからぬプレッシャーを与えるんじゃないかと思ってな」
ディアボロ様は自分を指しながら苦笑いしている。
傷ついたりして怖い顔が、私に圧力を与えると思っていたらしい。
そんなことないのに。
「私にとっては見ているだけで安心できる、とても素敵なお顔でございますわ」
「ほ、本当か?」
ディアボロ様はハッとしたように私を見る。
「初めてお会いしたときは怖く感じましたが、ディアボロ様の優しさを知ってからは怖い気持ちは無くなりました。ディアボロ様は誰よりもお優しい方です」
「キュリティ……」
「もし、今後も怖いと言う人がいたらディアボロ様は優しい方だと私が伝えます」
自信を持って胸を張って言える。
こんなに優しい人に出会えて、私は幸せ者だ。
突然、ディアボロ様は膝をついた。
「ディ、ディアボロ様!? どうされたのですか!?」
「私は……私は君に出会えて変われたんだ」
お部屋の空気が変わったような気がした。
ディアボロ様は静かに言葉を紡ぐ。
「私は若くして辺境伯になっただろう? 常に周囲からのプレッシャーに押しつぶされそうになっていたんだ。だから、自分にも他人にも過剰なほど厳しくあたってきた。気がついたら、“極悪非道の辺境伯”という二つ名がつくほどに……」
「……」
「そして、私はそれを変えようともしなかった。辺境伯としてのプライドや忙しさを言い訳にしてな」
恐怖の象徴とされてきたそのお顔には、諦めにも似た笑みが浮かんでいた。
ディアボロ様の心の内を初めて知った。
「だが、妊娠しているにも関わらず健気に頑張る君を見ていて、私もこうありたいと思うようになったんだ。君のおかげで大切な物を取り戻せたような気がする」
「ディアボロ様……私はなんと申し上げたらいいのか……」
大事な人の気持ちを思うと涙が零れそうだった。
「キュリティ、私からお願いがある。私と……正式な夫婦になってもらえないか? 子どもが生まれる前に、君には素直な気持ちを伝えておきたいんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私はハッキリと自分の気持ちを自覚した。
私の目は魔法を見破る。
でも、愛の魔法は見破れないのかもしれない。
ましてや自分にかかった魔法は……。
「はい……喜んで」
差し出されたその手をしっかりと握る。
がっしりして力強いディアボロの手は温かかった。
自然と、大きくなってきたお腹を一緒に優しく撫でる。
めでたく結ばれた私たちを祝うように、元気よく蹴り返された。
あまりにも予想外な衝撃の事実を告げられ、頭が固まった。
ディ、ディアボロ様が……バーチュさん? ど、どういうこと?
私が石像みたいになっていると、ディアボロ様が慌てて説明を続けた。
「わ、私は変装が得意でな。もちろん女装もできる。バーチュに化けていたのは、君が心配で様子を伺いに来ていたのだ」
「そ、そうだったのですか。まさか、バーチュさんがディアボロ様だとは思いませんでした……ということは、私の今までの行いもディアボロ様は知っているということですか?」
「ああ、もちろん知っている。騙すような真似をして悪かった」
今になってわかった。
彼女がジッ……と見てきたのは、私の様子を見るためだったのか。
「しかし、どうしてそのようなことをされたのですか?」
「私がいては休めるものも休めなくなりそうだからな。ほら、この顔だ。君にも赤ん坊にもよからぬプレッシャーを与えるんじゃないかと思ってな」
ディアボロ様は自分を指しながら苦笑いしている。
傷ついたりして怖い顔が、私に圧力を与えると思っていたらしい。
そんなことないのに。
「私にとっては見ているだけで安心できる、とても素敵なお顔でございますわ」
「ほ、本当か?」
ディアボロ様はハッとしたように私を見る。
「初めてお会いしたときは怖く感じましたが、ディアボロ様の優しさを知ってからは怖い気持ちは無くなりました。ディアボロ様は誰よりもお優しい方です」
「キュリティ……」
「もし、今後も怖いと言う人がいたらディアボロ様は優しい方だと私が伝えます」
自信を持って胸を張って言える。
こんなに優しい人に出会えて、私は幸せ者だ。
突然、ディアボロ様は膝をついた。
「ディ、ディアボロ様!? どうされたのですか!?」
「私は……私は君に出会えて変われたんだ」
お部屋の空気が変わったような気がした。
ディアボロ様は静かに言葉を紡ぐ。
「私は若くして辺境伯になっただろう? 常に周囲からのプレッシャーに押しつぶされそうになっていたんだ。だから、自分にも他人にも過剰なほど厳しくあたってきた。気がついたら、“極悪非道の辺境伯”という二つ名がつくほどに……」
「……」
「そして、私はそれを変えようともしなかった。辺境伯としてのプライドや忙しさを言い訳にしてな」
恐怖の象徴とされてきたそのお顔には、諦めにも似た笑みが浮かんでいた。
ディアボロ様の心の内を初めて知った。
「だが、妊娠しているにも関わらず健気に頑張る君を見ていて、私もこうありたいと思うようになったんだ。君のおかげで大切な物を取り戻せたような気がする」
「ディアボロ様……私はなんと申し上げたらいいのか……」
大事な人の気持ちを思うと涙が零れそうだった。
「キュリティ、私からお願いがある。私と……正式な夫婦になってもらえないか? 子どもが生まれる前に、君には素直な気持ちを伝えておきたいんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私はハッキリと自分の気持ちを自覚した。
私の目は魔法を見破る。
でも、愛の魔法は見破れないのかもしれない。
ましてや自分にかかった魔法は……。
「はい……喜んで」
差し出されたその手をしっかりと握る。
がっしりして力強いディアボロの手は温かかった。
自然と、大きくなってきたお腹を一緒に優しく撫でる。
めでたく結ばれた私たちを祝うように、元気よく蹴り返された。
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