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第67話:厄介な魔物
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◆◆◆
牧歌的な日常の、ある日の深夜。
ネオンがブリジットの抱き枕になりながらオモチたちに埋もれて眠る中、寝静まった領地から、ひっそりと離れていく人影があった。
カカフ連邦のスパイ、ベネロープだ。
誰も後を尾けていないことを確認し、早急に領地の端へ向かう。
彼女が遠く離れた本国の官邸と連絡を取る方法は、交信魔法だ。
近距離ならば自分だけの魔力で交信できるが、遠距離の場合は月と星の魔力を補助的に吸収する必要があった。
領地の端に到着したベネロープは地面に魔法陣を描き、交信の準備を進める。
(早くネオン君の活躍を大総統とアリエッタ様に伝えたい……)
毎日新たな発見があり、その凄さを一刻も早く知ってほしかった。
単なる定期報告以上のやりがいがある。
ベネロープが月と星の魔力を身体に集める最中、夜風に乗って上空から飛来する小さな魔物がいた。
直径1cmほどの種子である、極めて小型の魔物。
殺意など持たず、高精度の魔力探知にも引っかからないほどの弱い魔物が……。
"それ"はベネロープの肩に触れた瞬間、急速に芽吹き、彼女の全身に寄生した。
瞬く間に、彼女の身体には蔦のような根が張り巡らされる。
「がっ……!」
ベネロープは激しい痛みとともに、敵の攻撃を認識した。
すぐに迎撃魔法を発動させようとするが、敵に魔力回路を支配され魔法が発動できない。
(ま、まずい……まったく気配に気づかなかった! いったい何が起きている……!)
魔物の正体に勘づいたベネロープは、心臓が冷たく鼓動した。
(そ、そうか……これは人魔寄種!)
魔力に寄生する植物魔物、人魔寄種。
土壌にて生育した個体は超低級だが、人体や魔物に寄生した場合は危険度が跳ね上がる。
宿主の能力をそのまま行使し、よりよい魔力を求めて他者を襲い、新たな寄生先を探すのだ。
人魔寄種は引き剥がされそうになると、宿主の脳や心臓といった主要臓器を破壊する本能を持つ。
寄生された生物を隔離し、魔力を吸われ尽くすまで……すなわち死ぬまで待つしかない。
ベネロープは人魔寄種により領地の前に戻らされると、杖を頭上に掲げさせられた。
(クソッ……身体が勝手に……!)
本人の意思とは関係なく、火球や雷弾が放たれる。
不気味な振動とともに黒煙が上がり、飛び起きた領民やウニ猫妖精たちが慌てふためくのが見えた。
ベネロープは支配された身体で呆然と思う。
(ネオン君と一緒に、みんなで懸命に開拓してきた領地を攻撃してしまうなんて……)
大事な思い出の詰まった領地が、自分のせいでどんどん破壊されていく。
己を待つ避けられない運命より、領地が荒れていく光景に心が痛んだ。
(ボクは最悪の人間だ……。もう……死ぬしかない)
ベネロープが涙したとき…………領民の中からネオンが現れた。
牧歌的な日常の、ある日の深夜。
ネオンがブリジットの抱き枕になりながらオモチたちに埋もれて眠る中、寝静まった領地から、ひっそりと離れていく人影があった。
カカフ連邦のスパイ、ベネロープだ。
誰も後を尾けていないことを確認し、早急に領地の端へ向かう。
彼女が遠く離れた本国の官邸と連絡を取る方法は、交信魔法だ。
近距離ならば自分だけの魔力で交信できるが、遠距離の場合は月と星の魔力を補助的に吸収する必要があった。
領地の端に到着したベネロープは地面に魔法陣を描き、交信の準備を進める。
(早くネオン君の活躍を大総統とアリエッタ様に伝えたい……)
毎日新たな発見があり、その凄さを一刻も早く知ってほしかった。
単なる定期報告以上のやりがいがある。
ベネロープが月と星の魔力を身体に集める最中、夜風に乗って上空から飛来する小さな魔物がいた。
直径1cmほどの種子である、極めて小型の魔物。
殺意など持たず、高精度の魔力探知にも引っかからないほどの弱い魔物が……。
"それ"はベネロープの肩に触れた瞬間、急速に芽吹き、彼女の全身に寄生した。
瞬く間に、彼女の身体には蔦のような根が張り巡らされる。
「がっ……!」
ベネロープは激しい痛みとともに、敵の攻撃を認識した。
すぐに迎撃魔法を発動させようとするが、敵に魔力回路を支配され魔法が発動できない。
(ま、まずい……まったく気配に気づかなかった! いったい何が起きている……!)
魔物の正体に勘づいたベネロープは、心臓が冷たく鼓動した。
(そ、そうか……これは人魔寄種!)
魔力に寄生する植物魔物、人魔寄種。
土壌にて生育した個体は超低級だが、人体や魔物に寄生した場合は危険度が跳ね上がる。
宿主の能力をそのまま行使し、よりよい魔力を求めて他者を襲い、新たな寄生先を探すのだ。
人魔寄種は引き剥がされそうになると、宿主の脳や心臓といった主要臓器を破壊する本能を持つ。
寄生された生物を隔離し、魔力を吸われ尽くすまで……すなわち死ぬまで待つしかない。
ベネロープは人魔寄種により領地の前に戻らされると、杖を頭上に掲げさせられた。
(クソッ……身体が勝手に……!)
本人の意思とは関係なく、火球や雷弾が放たれる。
不気味な振動とともに黒煙が上がり、飛び起きた領民やウニ猫妖精たちが慌てふためくのが見えた。
ベネロープは支配された身体で呆然と思う。
(ネオン君と一緒に、みんなで懸命に開拓してきた領地を攻撃してしまうなんて……)
大事な思い出の詰まった領地が、自分のせいでどんどん破壊されていく。
己を待つ避けられない運命より、領地が荒れていく光景に心が痛んだ。
(ボクは最悪の人間だ……。もう……死ぬしかない)
ベネロープが涙したとき…………領民の中からネオンが現れた。
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