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第三章 魔王様の専属シェフとお猫様の日常
魔王様の専属シェフは、発作を起こした猫好きを見守る
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「ヒャア~! ネコチャン、ネコチャンカワイイネエ!」
「ニャアン!」
今目の前に広がっているこの光景はいったいなんなのだろうか。
やけに甲高い声を出しながらマロンをごねごねと撫でる白髪白髭の男性と、満更でもないと言わんばかりに嬉しそうな声を上げるマロン。
「なんだこれ」
そんな言葉を漏らしたのは、先ほどから口を半開きにして目をキョロキョロとさせているダニーさんだ。よく知っているはずの潮騒亭の店主さんが、わけの分からない口調で猫を構い倒しているのだからその反応も無理もないだろう。
「なんだこれ」
このように、ダニーさんは「なんだこれ」としか言えなくなっていた。もはや「なんだこれ」はダニーさんの鳴き声なのではと錯覚してしまうほどだ。
ちなみにジャル様はというと、同じ猫好きとしてか店主さんと意気投合していた。
「本当、マロンちゃんは可愛いですよねぇ」
「ネコチャン、ネコチャン……」
ニコニコ笑っているジャル様はいつも通りといえばいつも通りだから問題ないけれど、店主さんの方はもうこれは壊れたロボットと言っても過言ではないくらいに同じ言葉しか発していない。初対面であるはずの私でさえ心配になる始末だ。
ううん……これはもしかしなくとも、私がどうにかしないと収拾が付かないというやつなのでは? ダニーさんは呆然としてるし、店主さんはマロンにメロメロ、ジャル様も店主さんに便乗している。
つまりこの場で冷静なのは、たぶん私だけだ。
すう、と短く息を吸って、私は店主さんに声を掛けた。
「店主さん、お料理をする前なのに猫の毛塗れになってしまいますよ」
この言葉に店主さんは弾かれたように顔を上げると、名残惜しそうにマロンの頭を一撫でする。
「そうだな、お嬢ちゃんの言う通りだ。料理に毛が入ったらいけねえ」
「すみません、本当は猫をお店に入れるのもあんまり良くないとは思うんですけど……」
「あー、その辺はまあいいぜ。厨房にさえ入らなきゃな。それにお嬢ちゃんの言う通り毛塗れだ。ちょっくら着替えてくるぜ。んで、その後に料理を出してやろう」
店主さんはすまんすまんと言って、マロンを私に返してくれた。そしてそのままお店の奥に姿を消す。
私たちはそんな店主さんの後ろ姿を見送ると、この奇妙な空気をどうにかするためにか特に示し合わせたわけでもないのに、三人同時に咳払いをした。マロンはというと、可愛がってもらえたからか満足げに喉をゴロゴロと鳴らしていた。
マロンが喉を鳴らす音だけがお店の中に響き渡る。この音を聞いて、ダニーさんが必要以上に驚いて目を丸くした。
「お、おい、この音はなんだ?」
「これはマロンちゃんが喉を鳴らしている音ですよ。嬉しいとこんなふうにゴロゴロいうんです」
ダニーさんの質問にはジャル様が答えてくれる。彼は私の膝の上で丸くなっているマロンの頭を撫でて、ふふ、と微笑んだ。
ようやくさっきまでの空気感が霧散したように思う。ダニーさんは長めに息をつくと、片肘を突いてこちらをじっと見つめてきた。
「……店主があんなわけわかんねーことになってるの、初めて見たぜ」
猫好きはたびたびああいう発作を起こすんです。
なんて、もちろん口に出して言えるはずもなく。
私はへらりと笑って誤魔化すことしかできなかった。
……それよりも、とても大事なことがある。
あの店主さん、マロンのことをはっきりと『猫』と呼んでいた。この世界の人族の国にも猫という動物はいないはずだから、普通なら『猫』という単語を彼が知っているはずがない。
そう、普通なら。
私がそんなことを考えている隣で、ジャル様がふむ、と声を漏らした。
「彼はマロンちゃんのことをネコと言っていましたが、アイラさんは何か知っていますか?」
そういえば、私は人前でマロンのことを『猫』と呼んだことがなかったことに気が付いた。ジャル様やサディさんにもマロンが『猫』という動物であることを伝えていなかったように思う。心の中では散々お猫様だとか猫の奴隷だとか下僕だとか言ってたけど。
私はジャル様の質問に答えるように頷いて、少し小さめの声で『猫』がなんであるか説明する。
「猫というのは、テティラビーとかベルギアルなんかと同じ、その獣の種類を示す言葉です」
この説明だけでジャル様は何かを察したようだ。
「獣を示す言葉……ということは、それを知っているあの店主は……」
考えをまとめるようにジャル様は小さく言葉を発する。彼の赤い目がスッ、と細められたかと思うと、はぁー、と疲労を感じさせる溜め息をついた。
「……これは、おそらくウォルフの仕業でしょうね」
「あん? あの性悪ヤローがどうしたんだ?」
狭い店内、隣同士で座っているから仕方がないとはいえ、ジャル様の呟きはダニーさんの耳にしっかりと届いていた。
それにしても、ダニーさんからも散々な言われようなんだな、先々代の神王様……。
自分をこの世界に転生させる原因を作った存在なので擁護する気はもちろんゼロだけど、ここまで碌でもない神物だという共通認識があるなんて、本当に誰の目から見ても、素行がアレだったんだろうなぁ……。
この世界に生まれ変わる前に出会った先々代の神王様のことを思い出しながら、私もそんなことを考えてしまう。
自分でも遠い目をしているんだろうなぁという自覚があるけれど、チラリと盗み見たジャル様とダニーさんはそれ以上に疲れ切った表情をしていた。
「そういえばダニーには報告していませんでしたね。こちらのアイラさんですが、ウォルフのせいでこの世界に転生されているんです」
「それってアレか? 勇者召喚とは違うのか?」
「似たようなものでしょうが、厳密には違います」
ジャル様は、私がウォルフ様が原因で命を落としてこの世界に生まれ変わったということを、ダニーさんに対して詳しくは話さなかった。たぶんだけれど、私のことを気遣ってくれたのだろう。
私自身は転生に関してもう特に何も思っていないけれど、確かに死の瞬間を思い出すのは精神衛生上よろしくないということだけは分かる。
言葉を濁したジャル様を見て、ダニーさんも転生に関しては特に言及しなかった。
「そうかい。んで、このタイミングでその話を俺に聞かせたってことは……」
「ええ。おそらくですが、店主も召喚された者か、あるいは……アイラさん同様にウォルフの手で転生された者でしょう」
二人はそれほど多くない情報で、店主さんが何者かに思い至ったらしい。
何やら物々しい雰囲気が辺りに漂う中、タイミングがいいのか悪いのか、話題の中心に上っていた店主さんが戻ってきたのだった。
「ニャアン!」
今目の前に広がっているこの光景はいったいなんなのだろうか。
やけに甲高い声を出しながらマロンをごねごねと撫でる白髪白髭の男性と、満更でもないと言わんばかりに嬉しそうな声を上げるマロン。
「なんだこれ」
そんな言葉を漏らしたのは、先ほどから口を半開きにして目をキョロキョロとさせているダニーさんだ。よく知っているはずの潮騒亭の店主さんが、わけの分からない口調で猫を構い倒しているのだからその反応も無理もないだろう。
「なんだこれ」
このように、ダニーさんは「なんだこれ」としか言えなくなっていた。もはや「なんだこれ」はダニーさんの鳴き声なのではと錯覚してしまうほどだ。
ちなみにジャル様はというと、同じ猫好きとしてか店主さんと意気投合していた。
「本当、マロンちゃんは可愛いですよねぇ」
「ネコチャン、ネコチャン……」
ニコニコ笑っているジャル様はいつも通りといえばいつも通りだから問題ないけれど、店主さんの方はもうこれは壊れたロボットと言っても過言ではないくらいに同じ言葉しか発していない。初対面であるはずの私でさえ心配になる始末だ。
ううん……これはもしかしなくとも、私がどうにかしないと収拾が付かないというやつなのでは? ダニーさんは呆然としてるし、店主さんはマロンにメロメロ、ジャル様も店主さんに便乗している。
つまりこの場で冷静なのは、たぶん私だけだ。
すう、と短く息を吸って、私は店主さんに声を掛けた。
「店主さん、お料理をする前なのに猫の毛塗れになってしまいますよ」
この言葉に店主さんは弾かれたように顔を上げると、名残惜しそうにマロンの頭を一撫でする。
「そうだな、お嬢ちゃんの言う通りだ。料理に毛が入ったらいけねえ」
「すみません、本当は猫をお店に入れるのもあんまり良くないとは思うんですけど……」
「あー、その辺はまあいいぜ。厨房にさえ入らなきゃな。それにお嬢ちゃんの言う通り毛塗れだ。ちょっくら着替えてくるぜ。んで、その後に料理を出してやろう」
店主さんはすまんすまんと言って、マロンを私に返してくれた。そしてそのままお店の奥に姿を消す。
私たちはそんな店主さんの後ろ姿を見送ると、この奇妙な空気をどうにかするためにか特に示し合わせたわけでもないのに、三人同時に咳払いをした。マロンはというと、可愛がってもらえたからか満足げに喉をゴロゴロと鳴らしていた。
マロンが喉を鳴らす音だけがお店の中に響き渡る。この音を聞いて、ダニーさんが必要以上に驚いて目を丸くした。
「お、おい、この音はなんだ?」
「これはマロンちゃんが喉を鳴らしている音ですよ。嬉しいとこんなふうにゴロゴロいうんです」
ダニーさんの質問にはジャル様が答えてくれる。彼は私の膝の上で丸くなっているマロンの頭を撫でて、ふふ、と微笑んだ。
ようやくさっきまでの空気感が霧散したように思う。ダニーさんは長めに息をつくと、片肘を突いてこちらをじっと見つめてきた。
「……店主があんなわけわかんねーことになってるの、初めて見たぜ」
猫好きはたびたびああいう発作を起こすんです。
なんて、もちろん口に出して言えるはずもなく。
私はへらりと笑って誤魔化すことしかできなかった。
……それよりも、とても大事なことがある。
あの店主さん、マロンのことをはっきりと『猫』と呼んでいた。この世界の人族の国にも猫という動物はいないはずだから、普通なら『猫』という単語を彼が知っているはずがない。
そう、普通なら。
私がそんなことを考えている隣で、ジャル様がふむ、と声を漏らした。
「彼はマロンちゃんのことをネコと言っていましたが、アイラさんは何か知っていますか?」
そういえば、私は人前でマロンのことを『猫』と呼んだことがなかったことに気が付いた。ジャル様やサディさんにもマロンが『猫』という動物であることを伝えていなかったように思う。心の中では散々お猫様だとか猫の奴隷だとか下僕だとか言ってたけど。
私はジャル様の質問に答えるように頷いて、少し小さめの声で『猫』がなんであるか説明する。
「猫というのは、テティラビーとかベルギアルなんかと同じ、その獣の種類を示す言葉です」
この説明だけでジャル様は何かを察したようだ。
「獣を示す言葉……ということは、それを知っているあの店主は……」
考えをまとめるようにジャル様は小さく言葉を発する。彼の赤い目がスッ、と細められたかと思うと、はぁー、と疲労を感じさせる溜め息をついた。
「……これは、おそらくウォルフの仕業でしょうね」
「あん? あの性悪ヤローがどうしたんだ?」
狭い店内、隣同士で座っているから仕方がないとはいえ、ジャル様の呟きはダニーさんの耳にしっかりと届いていた。
それにしても、ダニーさんからも散々な言われようなんだな、先々代の神王様……。
自分をこの世界に転生させる原因を作った存在なので擁護する気はもちろんゼロだけど、ここまで碌でもない神物だという共通認識があるなんて、本当に誰の目から見ても、素行がアレだったんだろうなぁ……。
この世界に生まれ変わる前に出会った先々代の神王様のことを思い出しながら、私もそんなことを考えてしまう。
自分でも遠い目をしているんだろうなぁという自覚があるけれど、チラリと盗み見たジャル様とダニーさんはそれ以上に疲れ切った表情をしていた。
「そういえばダニーには報告していませんでしたね。こちらのアイラさんですが、ウォルフのせいでこの世界に転生されているんです」
「それってアレか? 勇者召喚とは違うのか?」
「似たようなものでしょうが、厳密には違います」
ジャル様は、私がウォルフ様が原因で命を落としてこの世界に生まれ変わったということを、ダニーさんに対して詳しくは話さなかった。たぶんだけれど、私のことを気遣ってくれたのだろう。
私自身は転生に関してもう特に何も思っていないけれど、確かに死の瞬間を思い出すのは精神衛生上よろしくないということだけは分かる。
言葉を濁したジャル様を見て、ダニーさんも転生に関しては特に言及しなかった。
「そうかい。んで、このタイミングでその話を俺に聞かせたってことは……」
「ええ。おそらくですが、店主も召喚された者か、あるいは……アイラさん同様にウォルフの手で転生された者でしょう」
二人はそれほど多くない情報で、店主さんが何者かに思い至ったらしい。
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