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第四章 お猫様とご主人さま
お猫様は、魔王様の作業を見守る【ΦωΦ】
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ΦωΦ
あの後、アタシたちは広場にやって来た。この広場はとっても広いから、走り回るにはそこそこ楽しそうね。でもアタシは犬じゃないから、走り回るのはほどほどでいいかしら。
「あなたたちは離れていてくださいね。ダニー、マロンちゃんをしっかりと抱っこしておくように」
「へーい」
ジャルの指示を受けて、ダニーがやる気のなさそうな返事をした。
そう、今アタシはダニーに抱っこされている。ダニーはアタシを抱っこするのは初めてだからかちょっとぎこちない気もするけれど、なかなか悪くないわ。ジャルと同じくらい体温が高いから、それなりに心地いいの。
「しっかし、こいつは……ふわふわで柔らかいな。テティラビーとはまた違った触り心地だ。結構癖になる……」
ダニーはそんなことを言いながら、アタシの背中をさわさわと撫でた。うーん、手つきはあんまり好みじゃないわね。やっぱりご主人さまとジャルが飛び抜けて上手。
……早く、ご主人さまを助けに行かないと。そのための準備がこの広場で行われるのよね。
アタシたちから十分に離れた所に立ったジャルは、赤い光が詰まった瓶に手をかざす。それを見てアタシは驚いてしまった。ジャルの手から眩しいくらいの赤い光が放たれていたから。
もしかして、あれが魔力というものなのかしら? でも変ね、さっきまではあんな光見えなかったわよ。
アタシは思わず顔を、正確には目の周りを洗う。もしかしたら目の錯覚かもしれないもの。
そう考えていたけれど結果は変わらず、眩しい赤い光はやっぱり見える。ふとアタシを抱いているダニーを見ると、彼もどこか眩しそうに目を細めていた。
もしかして、あの光はダニーたちには普段から見えているのかしら。だとしたら不思議ね。どうしてアタシにも見えるようになったのかしら?
いろいろと疑問は尽きないけれど、今はウォルフの隠れ場所を見付ける……つまり、ご主人さまの居場所を探ることが先決だっていうことは分かってる。だからアタシは、ジャルがこれからやろうとしていることから目を逸らさないためにも顔を上げた。
ジャルの手から放たれている赤い光が容器を包み込む。そしてその容器が宙に浮いたと思った次の瞬間、何も見えなくなるくらいの光が辺りを包み込み、耳をつん裂くような音が轟いた。
こういうのを何かで見たことがある。アレは確か、テレビで見たのよ。映画とかいうやつだったわ。その映画で見た爆弾が爆発した時の演出っていうものが、今の光景によく似ている気がする。
だけど、おかしいわ。映画で見た爆発はものが吹き飛んだり、地面が抉れたり、衝撃で吹き飛ばされたりしてたもの。それなのに今の爆発みたいな現象では、そういったことが一切なかった。衝撃波っていうのかしら、ああいうのも全然ない。微風すら吹いていないもの。
「うえー、なんとなく分かってたけど、やっぱりとんでもない代物だったねぇ」
「だな。まあ、派手好きなウォルフらしいっちゃウォルフらしいけどよ」
サディとダニーがゲンナリした様子で口々にそう言った。
「私が対応することを分かっていて、一歩間違えたら村一つくらいは消し飛ばせる神力を残していくんですよ、あのふざけた男は」
ジャルが忌々しそうにそう吐き捨てつつアタシたちの元に歩いてくる。普段は優しいジャルにこんな口汚いことを言わせるなんて、やっぱりウォルフって奴はいけ好かないオスだわ。
ああいけない、ウォルフのことを思い出したらイライラしてきちゃった。気分を落ち着かせるために簡単に顔を洗ってから、アタシは改めてジャルに視線を移した。
さっきまでは気付かなかったけれど、ジャルの手の中に何かがある。それはアタシの可愛い足先よりも一回りくらい大きい、つるりとした白い球体だった。
見た目は綺麗な球体だけど、なんて言えばいいかしら、なんか嫌な感じがするわ。嫌いなニオイがしている気もするし。
「うへぇ、すっごいわざとらしい力の残し方。だけどこれならハッキリと奴の居場所が分かるっていうものだね」
「まあ、俺らじゃ居場所が分かっても次元を超えられない訳だが」
「そのために私がいるんでしょう」
ジャルは言いながら白い球体を指先でトントンと叩いた。すると、その球体から一筋の光が凄まじい速さで空に登っていく。その光はある地点まで進むと、虚空に吸い込まれるようにして消えた。
今のはなんだったのかしら? アタシには光の動きが不思議なものでしかなくて、自然と首を傾げてしまう。そうしていると頭上からジャルの笑い声が聞こえてきた。
ご主人さまがいなくなってから、ジャルのこんな声は聞いていなかったわ。アタシが反射的に顔を上げると、ジャルはクシャリと表情を歪ませながら小さく笑っていた。
「ふふっ……マロンちゃん、この光がなんなのか気になるんですね。この光は、この玉に込められている神力の向かう先を示してくれているのですよ。今回のように途中で途切れているのは、次元の壁を超えている証拠なんです」
ジャルはいつもよりも不器用に笑いながら、アタシの頭を優しく撫でてくれる。うん、やっぱりジャルは撫でるのが上手いわ。
「玉の状態でもこの神力の持ち主や移動先などの情報は大まかに分かります。しかし正確に読み取ろうとなると、先ほどのように光を射出する必要があるのです。こうすることで術式や次元を超えた先の座標などを特定するのですよ」
アタシにはちょっと難しい話ね。いまいち理解できないけれど、ひとまずこの球体があればご主人さまの居場所が分かるってことかしら。きっとそうね。
ジャルはアタシの眉間をこしょこしょとくすぐる。ううん、これは本当に気持ちいいいから、うっかり目を細めてしまうわ。
もう少し堪能していたい気持ちはあるけれど、そんなことよりご主人さまの救出が優先よ。
「ニャン」
アタシは「ありがとう」という感謝の意味も込めて短く鳴く。ジャルはアタシのこの鳴き声が好きなのよ。
だから、そんな情けない顔しないでよ。今からご主人さまを助けに行くんだから。
アタシのこの想いが伝わったのかしら。
「……マロンちゃん、ありがとうございます」
ジャルの表情がいつもの穏やかでありながら威厳のあるものに戻ったわ。うんうん、それでいいのよ。今からあのウォルフをぶっ飛ばしに行くんだから。
あの後、アタシたちは広場にやって来た。この広場はとっても広いから、走り回るにはそこそこ楽しそうね。でもアタシは犬じゃないから、走り回るのはほどほどでいいかしら。
「あなたたちは離れていてくださいね。ダニー、マロンちゃんをしっかりと抱っこしておくように」
「へーい」
ジャルの指示を受けて、ダニーがやる気のなさそうな返事をした。
そう、今アタシはダニーに抱っこされている。ダニーはアタシを抱っこするのは初めてだからかちょっとぎこちない気もするけれど、なかなか悪くないわ。ジャルと同じくらい体温が高いから、それなりに心地いいの。
「しっかし、こいつは……ふわふわで柔らかいな。テティラビーとはまた違った触り心地だ。結構癖になる……」
ダニーはそんなことを言いながら、アタシの背中をさわさわと撫でた。うーん、手つきはあんまり好みじゃないわね。やっぱりご主人さまとジャルが飛び抜けて上手。
……早く、ご主人さまを助けに行かないと。そのための準備がこの広場で行われるのよね。
アタシたちから十分に離れた所に立ったジャルは、赤い光が詰まった瓶に手をかざす。それを見てアタシは驚いてしまった。ジャルの手から眩しいくらいの赤い光が放たれていたから。
もしかして、あれが魔力というものなのかしら? でも変ね、さっきまではあんな光見えなかったわよ。
アタシは思わず顔を、正確には目の周りを洗う。もしかしたら目の錯覚かもしれないもの。
そう考えていたけれど結果は変わらず、眩しい赤い光はやっぱり見える。ふとアタシを抱いているダニーを見ると、彼もどこか眩しそうに目を細めていた。
もしかして、あの光はダニーたちには普段から見えているのかしら。だとしたら不思議ね。どうしてアタシにも見えるようになったのかしら?
いろいろと疑問は尽きないけれど、今はウォルフの隠れ場所を見付ける……つまり、ご主人さまの居場所を探ることが先決だっていうことは分かってる。だからアタシは、ジャルがこれからやろうとしていることから目を逸らさないためにも顔を上げた。
ジャルの手から放たれている赤い光が容器を包み込む。そしてその容器が宙に浮いたと思った次の瞬間、何も見えなくなるくらいの光が辺りを包み込み、耳をつん裂くような音が轟いた。
こういうのを何かで見たことがある。アレは確か、テレビで見たのよ。映画とかいうやつだったわ。その映画で見た爆弾が爆発した時の演出っていうものが、今の光景によく似ている気がする。
だけど、おかしいわ。映画で見た爆発はものが吹き飛んだり、地面が抉れたり、衝撃で吹き飛ばされたりしてたもの。それなのに今の爆発みたいな現象では、そういったことが一切なかった。衝撃波っていうのかしら、ああいうのも全然ない。微風すら吹いていないもの。
「うえー、なんとなく分かってたけど、やっぱりとんでもない代物だったねぇ」
「だな。まあ、派手好きなウォルフらしいっちゃウォルフらしいけどよ」
サディとダニーがゲンナリした様子で口々にそう言った。
「私が対応することを分かっていて、一歩間違えたら村一つくらいは消し飛ばせる神力を残していくんですよ、あのふざけた男は」
ジャルが忌々しそうにそう吐き捨てつつアタシたちの元に歩いてくる。普段は優しいジャルにこんな口汚いことを言わせるなんて、やっぱりウォルフって奴はいけ好かないオスだわ。
ああいけない、ウォルフのことを思い出したらイライラしてきちゃった。気分を落ち着かせるために簡単に顔を洗ってから、アタシは改めてジャルに視線を移した。
さっきまでは気付かなかったけれど、ジャルの手の中に何かがある。それはアタシの可愛い足先よりも一回りくらい大きい、つるりとした白い球体だった。
見た目は綺麗な球体だけど、なんて言えばいいかしら、なんか嫌な感じがするわ。嫌いなニオイがしている気もするし。
「うへぇ、すっごいわざとらしい力の残し方。だけどこれならハッキリと奴の居場所が分かるっていうものだね」
「まあ、俺らじゃ居場所が分かっても次元を超えられない訳だが」
「そのために私がいるんでしょう」
ジャルは言いながら白い球体を指先でトントンと叩いた。すると、その球体から一筋の光が凄まじい速さで空に登っていく。その光はある地点まで進むと、虚空に吸い込まれるようにして消えた。
今のはなんだったのかしら? アタシには光の動きが不思議なものでしかなくて、自然と首を傾げてしまう。そうしていると頭上からジャルの笑い声が聞こえてきた。
ご主人さまがいなくなってから、ジャルのこんな声は聞いていなかったわ。アタシが反射的に顔を上げると、ジャルはクシャリと表情を歪ませながら小さく笑っていた。
「ふふっ……マロンちゃん、この光がなんなのか気になるんですね。この光は、この玉に込められている神力の向かう先を示してくれているのですよ。今回のように途中で途切れているのは、次元の壁を超えている証拠なんです」
ジャルはいつもよりも不器用に笑いながら、アタシの頭を優しく撫でてくれる。うん、やっぱりジャルは撫でるのが上手いわ。
「玉の状態でもこの神力の持ち主や移動先などの情報は大まかに分かります。しかし正確に読み取ろうとなると、先ほどのように光を射出する必要があるのです。こうすることで術式や次元を超えた先の座標などを特定するのですよ」
アタシにはちょっと難しい話ね。いまいち理解できないけれど、ひとまずこの球体があればご主人さまの居場所が分かるってことかしら。きっとそうね。
ジャルはアタシの眉間をこしょこしょとくすぐる。ううん、これは本当に気持ちいいいから、うっかり目を細めてしまうわ。
もう少し堪能していたい気持ちはあるけれど、そんなことよりご主人さまの救出が優先よ。
「ニャン」
アタシは「ありがとう」という感謝の意味も込めて短く鳴く。ジャルはアタシのこの鳴き声が好きなのよ。
だから、そんな情けない顔しないでよ。今からご主人さまを助けに行くんだから。
アタシのこの想いが伝わったのかしら。
「……マロンちゃん、ありがとうございます」
ジャルの表情がいつもの穏やかでありながら威厳のあるものに戻ったわ。うんうん、それでいいのよ。今からあのウォルフをぶっ飛ばしに行くんだから。
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