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第百十四話 捨てられた皇子
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ーーーーーー語り手:クラレシア神聖王国騎士アーニャ・カミンスキーーーーーー
それでは私が聞いたベアトリーチェ様のお父様についてお話しましょう。
クラレシア神聖王国は神苑の森に守られるようにその中央に位置します。神苑の森に隣接するのは四つの国。ドメル帝国もその内の一つです。
神苑の森には凶暴な魔獣が生息し、普通の人間はそう簡単に立ち入ることは出来ません。しかし、古くから聖域を守るクラレ族だけは精霊に守られている為、魔獣に襲われないのです。それがクラレシア神聖王国の守りにもなっているのです。
クラレ族とは……そう、察するとおりクラレシア神聖王国の民のことです。元々は古くから聖域を守る役割を担っていたのがクラレ族なのです。
そもそもクラレシア神聖王国は、精霊王オルフェ様が見初めたクラレ族の娘レティアーナ様を守る為に建国したのです。
精霊王? ええ、精霊王オルフェ様です。とても驚いていらっしゃるようですね。そうですよね。他国の者にとっては精霊王なんて夢物語でしかないでしょう。でも、レティアーナ様はオルフェ様に選ばれた正真正銘の精霊王の妃だったのです。
レティアーナ様はオルフェ様と結ばれましたが、命の限りがないオルフェ様は人間の寿命があまりにも短いためにレティアーナ様の命が尽きるのを恐れました。その為、時間の概念がない精霊界に連れて行こうとしたのです。
家族を持つレティアーナ様は精霊界に行くのを拒みました。せめて自分の家族の命が尽きるまでは人の世界にいさせて欲しいとオルフェ様に懇願したのです。
レティアーナ様を溺愛していたオルフェ様はレティアーナ様の願いを聞き届けます。しかし、タダの人間であるレティアーナ様はどんどん年を取っていきます。オルフェ様はレティアーナ様に刻封じの魔法をかけました。そのお陰でレティアーナ様はある時から年を取らなくなり、他の人より寿命も延びました。
しかし、例え精霊王であるオルフェ様が魔法を施しても永遠の寿命を授けられる訳ではありません。人の世界の命の権限は神の領域なのです。
レティアーナ様を手放したくないオルフェ様はどうにかレティアーナ様を精霊界に連れて行くべく説得しました。
その時レティアーナ様はオルフェ様の子を身ごもっておりました。メディアーナ様です。レティアーナ様は子供が大人になるまでとの条件を提示しました。
メディアーナ様を身ごもって暫くしてからでしょうか。森の中で精霊が騒いでいるのを多くの者が聞きつけたのです。クラレシア人の多くは精霊の存在を認識することも交信することも出来るのです。
レティアーナ様は、森に確認に行くように王城騎士達に指示しました。
騎士達が精霊に導かれるままに森を抜けると、一本の大きな木の樹洞に生まれたばかりの赤子が泣いていたそうです。
金髪碧眼のその赤子はドメル人の特徴に似ておりました。見つけた場所もドメル帝国寄りだったこともあり、ドメル人の赤子に間違いないだろうということでした。
通常ですと魔獣が蔓延る森に無造作に置き去りにされた赤子など忽ち魔獣の餌になっても不思議ではありません。精霊が赤子を守っていたのです。
騎士達は赤子をレティアーナ様の元に連れて行きました。赤子を見たレティアーナ様は直ぐに抱き上げ愛おしそうに見つめました。
「この子は私が育てます。この子は守り手が必要なのです」
その言葉は周りの者達を驚かせました。
レティアーナ様は慈悲深い方でしたが、その時メディアーナ様を身ごもっていたので余計母性本能を発揮していたのかも知れません。
レティアーナ様を溺愛していた精霊王オルフェ様は最初は驚きましたが、結局いつもの通りレティアーナ様の決定を非難することはありませんでした。
オルフェ様や周囲の者が驚いたのは以前ドメル帝国との間でいざこざがあったためだったようです。どんないざこざがあったのか私は詳しくは知りません。
レティアーナ様は森で拾った赤子にフォルナックスと名付け、メディアーナ様と同じように慈しみ育てたのです。
オルフェ様はレティアーナ様との娘であるメディアーナ様をレティアーナ様と同じように溺愛していました。
二人は兄妹の様に育ちましたが、金髪碧眼のフォルナックス様とレティアーナ様の藍色の髪とオルフェ様の瑠璃色の瞳を受け継いだメディアーナ様とでは兄妹と呼ぶにはあまりにも違いすぎる容姿でした。二人が本当の兄妹でないことは直ぐに気付かれました。
成長するに従って次第に二人は男女として意識するようになり、周りの者達に祝福され婚姻を結ぶことになったのです。
クラレシア人の反対? いいえ、ございませんでした。クラレシア人は皆温厚で慈悲深いのです。小さい頃からクラレシアの地で育ったフォルナックス様は、例え容姿が違っても既にクラレシア人として認められていたのです。
その後、外界から戻って来たクラレシアの民によって、フォルナックス様とドメル帝国皇太子の姿が瓜二つだと言うことが発覚しました。
驚いた私達は、フォルナックス様の正確な出自を調査することにしました。すると、何とフォルナックス様はドメル帝国皇太子の双子の弟だと言うことが判明したのです。
何故フォルナックス様が捨てられたのか? と不思議に思われますよね? 私達もそう思いました。
この理由は、風の精霊達が見つけてくれた当初ドメル帝国皇帝に仕えていた医師により発覚したのです。
その医師の告白によると、ドメル帝国に古くから伝わる悪習のせいでフォルナックス様が捨てられたと言うことが判明しました。ドメル帝国では双子は忌み子とされており、双子の弟の方であるフォルナックス様は生まれて直ぐに捨てられたのでした。
もちろん残された双子の片割れであるドメル帝国の皇子が双子だった事は秘匿されたのです。
彼は秘密を知っているため消されそうになったようですが、身代わりを立て死んだふりをして他国でひっそりと暮らしていたそうです。
ここまでが、私が知っているベアトリーチェ様のお父様、フォルナックス様に関する全てです。
それでは私が聞いたベアトリーチェ様のお父様についてお話しましょう。
クラレシア神聖王国は神苑の森に守られるようにその中央に位置します。神苑の森に隣接するのは四つの国。ドメル帝国もその内の一つです。
神苑の森には凶暴な魔獣が生息し、普通の人間はそう簡単に立ち入ることは出来ません。しかし、古くから聖域を守るクラレ族だけは精霊に守られている為、魔獣に襲われないのです。それがクラレシア神聖王国の守りにもなっているのです。
クラレ族とは……そう、察するとおりクラレシア神聖王国の民のことです。元々は古くから聖域を守る役割を担っていたのがクラレ族なのです。
そもそもクラレシア神聖王国は、精霊王オルフェ様が見初めたクラレ族の娘レティアーナ様を守る為に建国したのです。
精霊王? ええ、精霊王オルフェ様です。とても驚いていらっしゃるようですね。そうですよね。他国の者にとっては精霊王なんて夢物語でしかないでしょう。でも、レティアーナ様はオルフェ様に選ばれた正真正銘の精霊王の妃だったのです。
レティアーナ様はオルフェ様と結ばれましたが、命の限りがないオルフェ様は人間の寿命があまりにも短いためにレティアーナ様の命が尽きるのを恐れました。その為、時間の概念がない精霊界に連れて行こうとしたのです。
家族を持つレティアーナ様は精霊界に行くのを拒みました。せめて自分の家族の命が尽きるまでは人の世界にいさせて欲しいとオルフェ様に懇願したのです。
レティアーナ様を溺愛していたオルフェ様はレティアーナ様の願いを聞き届けます。しかし、タダの人間であるレティアーナ様はどんどん年を取っていきます。オルフェ様はレティアーナ様に刻封じの魔法をかけました。そのお陰でレティアーナ様はある時から年を取らなくなり、他の人より寿命も延びました。
しかし、例え精霊王であるオルフェ様が魔法を施しても永遠の寿命を授けられる訳ではありません。人の世界の命の権限は神の領域なのです。
レティアーナ様を手放したくないオルフェ様はどうにかレティアーナ様を精霊界に連れて行くべく説得しました。
その時レティアーナ様はオルフェ様の子を身ごもっておりました。メディアーナ様です。レティアーナ様は子供が大人になるまでとの条件を提示しました。
メディアーナ様を身ごもって暫くしてからでしょうか。森の中で精霊が騒いでいるのを多くの者が聞きつけたのです。クラレシア人の多くは精霊の存在を認識することも交信することも出来るのです。
レティアーナ様は、森に確認に行くように王城騎士達に指示しました。
騎士達が精霊に導かれるままに森を抜けると、一本の大きな木の樹洞に生まれたばかりの赤子が泣いていたそうです。
金髪碧眼のその赤子はドメル人の特徴に似ておりました。見つけた場所もドメル帝国寄りだったこともあり、ドメル人の赤子に間違いないだろうということでした。
通常ですと魔獣が蔓延る森に無造作に置き去りにされた赤子など忽ち魔獣の餌になっても不思議ではありません。精霊が赤子を守っていたのです。
騎士達は赤子をレティアーナ様の元に連れて行きました。赤子を見たレティアーナ様は直ぐに抱き上げ愛おしそうに見つめました。
「この子は私が育てます。この子は守り手が必要なのです」
その言葉は周りの者達を驚かせました。
レティアーナ様は慈悲深い方でしたが、その時メディアーナ様を身ごもっていたので余計母性本能を発揮していたのかも知れません。
レティアーナ様を溺愛していた精霊王オルフェ様は最初は驚きましたが、結局いつもの通りレティアーナ様の決定を非難することはありませんでした。
オルフェ様や周囲の者が驚いたのは以前ドメル帝国との間でいざこざがあったためだったようです。どんないざこざがあったのか私は詳しくは知りません。
レティアーナ様は森で拾った赤子にフォルナックスと名付け、メディアーナ様と同じように慈しみ育てたのです。
オルフェ様はレティアーナ様との娘であるメディアーナ様をレティアーナ様と同じように溺愛していました。
二人は兄妹の様に育ちましたが、金髪碧眼のフォルナックス様とレティアーナ様の藍色の髪とオルフェ様の瑠璃色の瞳を受け継いだメディアーナ様とでは兄妹と呼ぶにはあまりにも違いすぎる容姿でした。二人が本当の兄妹でないことは直ぐに気付かれました。
成長するに従って次第に二人は男女として意識するようになり、周りの者達に祝福され婚姻を結ぶことになったのです。
クラレシア人の反対? いいえ、ございませんでした。クラレシア人は皆温厚で慈悲深いのです。小さい頃からクラレシアの地で育ったフォルナックス様は、例え容姿が違っても既にクラレシア人として認められていたのです。
その後、外界から戻って来たクラレシアの民によって、フォルナックス様とドメル帝国皇太子の姿が瓜二つだと言うことが発覚しました。
驚いた私達は、フォルナックス様の正確な出自を調査することにしました。すると、何とフォルナックス様はドメル帝国皇太子の双子の弟だと言うことが判明したのです。
何故フォルナックス様が捨てられたのか? と不思議に思われますよね? 私達もそう思いました。
この理由は、風の精霊達が見つけてくれた当初ドメル帝国皇帝に仕えていた医師により発覚したのです。
その医師の告白によると、ドメル帝国に古くから伝わる悪習のせいでフォルナックス様が捨てられたと言うことが判明しました。ドメル帝国では双子は忌み子とされており、双子の弟の方であるフォルナックス様は生まれて直ぐに捨てられたのでした。
もちろん残された双子の片割れであるドメル帝国の皇子が双子だった事は秘匿されたのです。
彼は秘密を知っているため消されそうになったようですが、身代わりを立て死んだふりをして他国でひっそりと暮らしていたそうです。
ここまでが、私が知っているベアトリーチェ様のお父様、フォルナックス様に関する全てです。
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