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第百二十話 王女は眠る
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「とっ、とにかく、カリンちゃんを部屋に運びましょう」
一同が呆然とする中、最初に声を発したのはセレンだった。
「えっ? カリンの部屋?」
「そうよ、いつでもカリンちゃんが家に泊まれるように用意してたの。結局、今まで泊まることはなかったけど」
疑問に思い尋ねたショウにセレンが何とも無しに答えた。
「いつの間に……」
ショウはセレンの言葉に感心するものの、意識が無いカリンを見て気が気じゃなかった。
「こんな事で役に立つとは思わなかったけど、先ずはベッドに寝かせましょう」
セレンはカリンを横向きに抱き上げたダンテに近づき、心配そうにカリンの顔を見つめた。カリンの顔は青ざめている様に見えたが、微かに呼吸する音が確認できるとセレンもダンテも安堵した。
「大丈夫そうだ。ちゃんと呼吸しているし、眠っているように見えるから。ショウ、直ぐに医者を呼ぶんだ」
「ああ、直ぐに宅送鳥を飛ばす」
「ええ、お願いね」
ダンテの言葉に足早に応接室を出るショウにセレンが声をかけた。
「私はカリンを部屋に運ぼう。申し訳ないが、カリンはこの状況だ。意識が戻ったら改めて連絡するから貴殿達はこの場は一度お引き取り願っていいだろうか?」
「そんな……しかし……ベアトリーチェ様……」
「「ベアトリーチェ様……」」
ダンテの言葉にアーニャ、ワシリー、エゴンは狼狽えながら言葉を飲み込んだ。王女がこんな状態では自分達に出来ることはないと思ったが、それでも何とかしたい気持ちで一杯だった。
『クラレシアの騎士達よ、心配することはない。カリンは恐らく記憶の渦に飲み込まれたのであろう。直に目覚めるだろう。命に触りはないだろうから案ずるな』
頭に響く声にアーニャ、ワシリー、エゴンの三人はハッとしてその声の持ち主であろう白い猫の方に顔を向けた。淡く光る神獣は小さいながらも神々しく思え、畏敬の念を抱いた三人は目を見開き一瞬動きが止まった。
「貴方様がもしや神獣様であらせられるか?」
『いかにも其は女神ラシフィーヌ様の眷属、名はグレン。カリンの守護している』
「何と! 神獣殿がベアトリーチェ様の守護に付いていると言うのは真であったか!私はエゴンと申す。」
「アーニャと申します。ベアトリーチェ様を守護して頂きありがとうございます」
「私はワシリーと申します」
エゴンの問いに答えるグレン。それを聞いたエゴンはグレンの前に跪き、アーニャとワシリーも彼に続いた。
『跪く必要は無い。人間の礼儀など我らには無意味。其はラシフィーヌ様の命に従ったまで。其が守護するのはカリンだけである』
「それでも我らにとっては有りがたいのです。それでグレン殿、ベアトリーチェ様が記憶の渦に飲まれたと言うのはどういう事ですか? ベアトリーチェ様の心は大丈夫なのでしょうか?」
『問題ないだろう。今のベアトリーチェの身体の中にはカリンの記憶があるのだ』
「「「?」」」
クラレシアの三人の騎士達にはグレンの言っている意味が直ぐに理解できなかった。
だがもしかしてここでクランリー農場の人達やヨダの町の人達と関わった記憶が王女の心を救ってくれるのかも知れないと騎士達の頭に思い浮かんだ。
それは半分は当たっているのだが残りの半分は他に理由があることを彼らはまだ知らない。いや、彼らばかりではない、クランリー農場の面々もグレンの意図することに気付いていなかった。
「兎に角、カリンは部屋に寝かせてくる。目が覚めたら連絡する。再度カリンに会うのはカリンの様子が落ち着いてからにして貰いたい」
「了解しました。我々はひとまずこの場を後にするとしましょう。ベアトリーチェ様の意識が戻ったら連絡頂きますようよろしくお願いします」
アーニャが挨拶すると、三人の騎士達はクランリー農場を後にした。
「父さん、カリンの様子は?」
「ベッドに寝かせてきた。呼吸も落ち着いているしただ眠ったようにしか見えない。グレン殿も一緒にいるから大丈夫だろう」
「ショウ、カリンちゃんのお世話は私とお母さんとでするわ。カリンちゃんは女の子なんだから勝手に部屋に入ってはダメよ」
「ああ、分かってるよ」
リビングでは、ラルク、マギー婆ちゃん、ロイ爺ちゃんが何事かとそわそわしていた。カリンが意識を失った事を聞くとみんな一様に心配しカリンの目覚めを待つのだった。
一同が呆然とする中、最初に声を発したのはセレンだった。
「えっ? カリンの部屋?」
「そうよ、いつでもカリンちゃんが家に泊まれるように用意してたの。結局、今まで泊まることはなかったけど」
疑問に思い尋ねたショウにセレンが何とも無しに答えた。
「いつの間に……」
ショウはセレンの言葉に感心するものの、意識が無いカリンを見て気が気じゃなかった。
「こんな事で役に立つとは思わなかったけど、先ずはベッドに寝かせましょう」
セレンはカリンを横向きに抱き上げたダンテに近づき、心配そうにカリンの顔を見つめた。カリンの顔は青ざめている様に見えたが、微かに呼吸する音が確認できるとセレンもダンテも安堵した。
「大丈夫そうだ。ちゃんと呼吸しているし、眠っているように見えるから。ショウ、直ぐに医者を呼ぶんだ」
「ああ、直ぐに宅送鳥を飛ばす」
「ええ、お願いね」
ダンテの言葉に足早に応接室を出るショウにセレンが声をかけた。
「私はカリンを部屋に運ぼう。申し訳ないが、カリンはこの状況だ。意識が戻ったら改めて連絡するから貴殿達はこの場は一度お引き取り願っていいだろうか?」
「そんな……しかし……ベアトリーチェ様……」
「「ベアトリーチェ様……」」
ダンテの言葉にアーニャ、ワシリー、エゴンは狼狽えながら言葉を飲み込んだ。王女がこんな状態では自分達に出来ることはないと思ったが、それでも何とかしたい気持ちで一杯だった。
『クラレシアの騎士達よ、心配することはない。カリンは恐らく記憶の渦に飲み込まれたのであろう。直に目覚めるだろう。命に触りはないだろうから案ずるな』
頭に響く声にアーニャ、ワシリー、エゴンの三人はハッとしてその声の持ち主であろう白い猫の方に顔を向けた。淡く光る神獣は小さいながらも神々しく思え、畏敬の念を抱いた三人は目を見開き一瞬動きが止まった。
「貴方様がもしや神獣様であらせられるか?」
『いかにも其は女神ラシフィーヌ様の眷属、名はグレン。カリンの守護している』
「何と! 神獣殿がベアトリーチェ様の守護に付いていると言うのは真であったか!私はエゴンと申す。」
「アーニャと申します。ベアトリーチェ様を守護して頂きありがとうございます」
「私はワシリーと申します」
エゴンの問いに答えるグレン。それを聞いたエゴンはグレンの前に跪き、アーニャとワシリーも彼に続いた。
『跪く必要は無い。人間の礼儀など我らには無意味。其はラシフィーヌ様の命に従ったまで。其が守護するのはカリンだけである』
「それでも我らにとっては有りがたいのです。それでグレン殿、ベアトリーチェ様が記憶の渦に飲まれたと言うのはどういう事ですか? ベアトリーチェ様の心は大丈夫なのでしょうか?」
『問題ないだろう。今のベアトリーチェの身体の中にはカリンの記憶があるのだ』
「「「?」」」
クラレシアの三人の騎士達にはグレンの言っている意味が直ぐに理解できなかった。
だがもしかしてここでクランリー農場の人達やヨダの町の人達と関わった記憶が王女の心を救ってくれるのかも知れないと騎士達の頭に思い浮かんだ。
それは半分は当たっているのだが残りの半分は他に理由があることを彼らはまだ知らない。いや、彼らばかりではない、クランリー農場の面々もグレンの意図することに気付いていなかった。
「兎に角、カリンは部屋に寝かせてくる。目が覚めたら連絡する。再度カリンに会うのはカリンの様子が落ち着いてからにして貰いたい」
「了解しました。我々はひとまずこの場を後にするとしましょう。ベアトリーチェ様の意識が戻ったら連絡頂きますようよろしくお願いします」
アーニャが挨拶すると、三人の騎士達はクランリー農場を後にした。
「父さん、カリンの様子は?」
「ベッドに寝かせてきた。呼吸も落ち着いているしただ眠ったようにしか見えない。グレン殿も一緒にいるから大丈夫だろう」
「ショウ、カリンちゃんのお世話は私とお母さんとでするわ。カリンちゃんは女の子なんだから勝手に部屋に入ってはダメよ」
「ああ、分かってるよ」
リビングでは、ラルク、マギー婆ちゃん、ロイ爺ちゃんが何事かとそわそわしていた。カリンが意識を失った事を聞くとみんな一様に心配しカリンの目覚めを待つのだった。
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