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第百三十一話 祖国へ
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「アーニャ、ワシリー、エゴン、私は精霊樹に魔力を注ぐために一度クラレシアに戻りたいと思います。着いてきて貰えますか?」
「もちろんです、ベアトリーチェ様」
「我々はずっとベアトリーチェ様と共にどこまでも着いていきます」
「ベアトリーチェ様、私達はどこまでも一緒です」
アーニャ、ワシリー、エゴンの三人は忠誠を誓うように私の元で跪いたのだった。
翌日、クラレシアへ向かうために私は準備をしてアーニャ達をクランリー家のエントランスの外で待っていた。
もちろんグレンも。
今回はグレンの転移魔法でクラレシアの地へ向かうことにした。
何と、グレンは転移魔法が使えるらしい。流石神獣なだけある。
あれ? だったら私がこの地にカリンとしてベアトリーチェの体に転生したとき……実際には記憶喪失の臨死体験だが……何故転移魔法を使わなかったのだろうか? と不思議に思って聞いてみた。
転移魔法は膨大な魔力量を必要とし、魔法に長けた者達に察知されやすいのだとか。
魔法に長けた者とはクラレシア人に他ならない。
あの時、アーニャ達に私の居場所が知れてしまったら私の記憶が戻ってしまう。まだ、カリンとして覚醒したばかりの私はベアトリーチェの意識に飲み込まれて再び生きる気力を失う可能性があったのだとか。
そう考えると、アーニャ達が中々私を見つけられなかったのはグレンの仕業だろう。きっとグレンはベアトリーチェの記憶が直ぐに戻らないように裏で色々と画策していたのかも知れないと私は思った。
私はアーニャ達には申し訳ないけど、ベアトリーチェが死んでしまえばこの世界も終わってしまっただろうから仕方がないと思うのだが納得したわけではない。
結果的にこうして無事? カリンの記憶とベアトリーチェの記憶が融合して前向きに考える事が出来る様になったのでアーニャ達には甘受して貰うしかないだろう。
そうこうしているうちに、馬の蹄の音と共にアーニャ、エゴン、ワシリーの三人が現れた。艶の良い三頭の白馬に乗って騎士服に身を包んだ三人はこうしてみると神聖王国の崇高な騎士であると改めて実感した。
「「「カリン様、お待たせしました。神獣グレン様」」」
「おはよう、アーニャ、エゴン、ワシリー。今日でクラレシアの地を訪れるのは最後です。よろしくお願いしますね」
「「「はっ!」」」
私の言葉に三人は声を揃えて返事をした。
そう、クラレシアに行くのは今日で最後にしようと決心した。本来なら私が精霊樹に魔力を注ぎ、精霊達がクラレシアを癒したところでクラレシアの民を帰郷させ国を復興させるのが正しいのかも知れない。
だが、何れまたドメル帝国のような国が現れないとは言い切れない。
精霊が溢れ、資源に恵まれた豊かな地は人間達にとって魅力的だ。今はどんなに善良な人であっても自分が、自分の家族が窮地に立たされればどんな行動にでるか分からないものだ。
人に優しくできるのは大抵の場合、自分自身が恵まれているからだ。
人がそこに住む限り争いが起こる可能性がある。
ならば、そこに住まなければいい。
私はそう考えた。
聖地は聖地のままに。
人が踏み入れなければ永遠に美しいままなのだから。
グレンから優しい光が解き放たれた。
私と三人の騎士達を包んだ光は私達に吸い込まれた様に消えたかと思ったら、目の前に荒れ果てた風景が広がっていた。
白亜の城は灰色に変色し、周りの景色は水墨画のように色がない。
ベアトリーチェの記憶の中にあったあの美しい景色はどこにもなかった。
私の中のベアトリーチェの記憶に哀しみと罪悪感が広がる。
アーニャが心配そうな顔で私を見つめ励ますように私の肩に手を乗せた。
私は大丈夫だと言うように無理矢理笑顔を作り、ベアトリーチェの記憶と異なる灰色の城の中に足を踏み入れたのだった。
「もちろんです、ベアトリーチェ様」
「我々はずっとベアトリーチェ様と共にどこまでも着いていきます」
「ベアトリーチェ様、私達はどこまでも一緒です」
アーニャ、ワシリー、エゴンの三人は忠誠を誓うように私の元で跪いたのだった。
翌日、クラレシアへ向かうために私は準備をしてアーニャ達をクランリー家のエントランスの外で待っていた。
もちろんグレンも。
今回はグレンの転移魔法でクラレシアの地へ向かうことにした。
何と、グレンは転移魔法が使えるらしい。流石神獣なだけある。
あれ? だったら私がこの地にカリンとしてベアトリーチェの体に転生したとき……実際には記憶喪失の臨死体験だが……何故転移魔法を使わなかったのだろうか? と不思議に思って聞いてみた。
転移魔法は膨大な魔力量を必要とし、魔法に長けた者達に察知されやすいのだとか。
魔法に長けた者とはクラレシア人に他ならない。
あの時、アーニャ達に私の居場所が知れてしまったら私の記憶が戻ってしまう。まだ、カリンとして覚醒したばかりの私はベアトリーチェの意識に飲み込まれて再び生きる気力を失う可能性があったのだとか。
そう考えると、アーニャ達が中々私を見つけられなかったのはグレンの仕業だろう。きっとグレンはベアトリーチェの記憶が直ぐに戻らないように裏で色々と画策していたのかも知れないと私は思った。
私はアーニャ達には申し訳ないけど、ベアトリーチェが死んでしまえばこの世界も終わってしまっただろうから仕方がないと思うのだが納得したわけではない。
結果的にこうして無事? カリンの記憶とベアトリーチェの記憶が融合して前向きに考える事が出来る様になったのでアーニャ達には甘受して貰うしかないだろう。
そうこうしているうちに、馬の蹄の音と共にアーニャ、エゴン、ワシリーの三人が現れた。艶の良い三頭の白馬に乗って騎士服に身を包んだ三人はこうしてみると神聖王国の崇高な騎士であると改めて実感した。
「「「カリン様、お待たせしました。神獣グレン様」」」
「おはよう、アーニャ、エゴン、ワシリー。今日でクラレシアの地を訪れるのは最後です。よろしくお願いしますね」
「「「はっ!」」」
私の言葉に三人は声を揃えて返事をした。
そう、クラレシアに行くのは今日で最後にしようと決心した。本来なら私が精霊樹に魔力を注ぎ、精霊達がクラレシアを癒したところでクラレシアの民を帰郷させ国を復興させるのが正しいのかも知れない。
だが、何れまたドメル帝国のような国が現れないとは言い切れない。
精霊が溢れ、資源に恵まれた豊かな地は人間達にとって魅力的だ。今はどんなに善良な人であっても自分が、自分の家族が窮地に立たされればどんな行動にでるか分からないものだ。
人に優しくできるのは大抵の場合、自分自身が恵まれているからだ。
人がそこに住む限り争いが起こる可能性がある。
ならば、そこに住まなければいい。
私はそう考えた。
聖地は聖地のままに。
人が踏み入れなければ永遠に美しいままなのだから。
グレンから優しい光が解き放たれた。
私と三人の騎士達を包んだ光は私達に吸い込まれた様に消えたかと思ったら、目の前に荒れ果てた風景が広がっていた。
白亜の城は灰色に変色し、周りの景色は水墨画のように色がない。
ベアトリーチェの記憶の中にあったあの美しい景色はどこにもなかった。
私の中のベアトリーチェの記憶に哀しみと罪悪感が広がる。
アーニャが心配そうな顔で私を見つめ励ますように私の肩に手を乗せた。
私は大丈夫だと言うように無理矢理笑顔を作り、ベアトリーチェの記憶と異なる灰色の城の中に足を踏み入れたのだった。
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